2500年前の遺跡から「大麻を吸った証拠」が発見される

by TinaKru

大麻は古くから人間の生活に根付いてきた向精神薬であり、紀元前に活躍した歴史家のヘロドトスも、「歴史」の中でスキタイ人やトラキア人が大麻を吸っていたことを報告しています。そんな大麻を喫煙した証拠が、中国西部にある2500年前の遺跡から発見されました。

The origins of cannabis smoking: Chemical residue evidence from the first millennium BCE in the Pamirs | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/6/eaaw1391

Evidence of ancient marijuana use found in Chinese mountain tombs | Science News
https://www.sciencenews.org/article/evidence-marijuana-smoking-rituals-ancient-western-china

Earliest Evidence of People "Smoking" Weed Found in 2,500-Year-Old Chinese Pots
https://www.sciencealert.com/ancient-pots-from-china-reveal-humans-smoking-cannabis-2-500-years-ago

東アジアでは6000年前から人々が大麻を栽培していた証拠が見つかっていますが、当時栽培されていた大麻は主に油や繊維として利用されていたとのこと。発見されている品種も、向精神薬の作用を持つテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が低いものであり、現代のように薬物としての利用がされていた確証はありません。

一方でヘロドトスが歴史の中で記述したように、文献からは2500年ほど前には既に大麻を吸う人々が存在したこともわかっていますが、物質的な証拠は見つかっていませんでした。ところが中国科学院の考古学者らは、タジキスタン・アフガニスタン・中国などにまたがる中央アジアのパミール高原にあるジルザンカル墓地遺跡から、古代の人々が大麻を喫煙していた証拠を発見したと報告しました。

海抜3000m以上の高地に位置するジルザンカル墓地遺跡は2013年から発掘調査が行われており、木製の火鉢が10個発見されています。中には焼かれた形跡のある石が入っており、研究チームはこの火鉢が儀式的な目的で使用されたと考えて残留物を抽出し、化学組成などを分析したとのこと。

火鉢の残留物をガスクロマトグラフィー–質量分析法を利用して分析した結果、焦げた植物は大麻の科学的特徴を持っているだけでなく、非常に高レベルのTHCを示したそうです。研究チームの考古学者であるYimin Yang氏は、「これは最も古い大麻喫煙の科学的証拠です」と述べ、今回の発見が向精神薬としての大麻使用の歴史を解き明かす鍵になると主張しています。

記事作成時点では、ジルザンカル墓地遺跡で発見された大麻が近辺で意図的に栽培されていたのか、それとも野生の高THC品種を見つけ出したものかは不明だとのこと。しかし、研究チームは死者を弔う儀式の一環として、大麻を吸う行為が行われていたと考えています。

なお、ジルザンカル墓地遺跡で発見された遺骨や歯の分析結果から、テストされた34人の死者のうち10人が違う文化で育った人物であることも判明しており、幅広い土地の人々がパミール高原を訪れていたことがわかっています。ジルザンカル墓地遺跡のあるパミール高原は、中国からヨーロッパを結ぶ初期のシルクロードの一部であり、大麻がシルクロードに沿って中央アジアから他の地域へと伝わったことが示唆されていると、研究チームは述べました。