サイエンス

カフェイン入り飲料をたくさん飲む人は睡眠時間が短い一方で眠りは深いとの研究結果


コーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは眠気を抑える目的で広く摂取されています。カフェインを日常的に多く摂取することが睡眠にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、チューリッヒ大学などの研究チームが大規模な健康データと睡眠データを分析しました。

Community-based causal evidence that high habitual caffeine consumption alters distinct polysomnography-derived sleep variables | Journal of Psychopharmacology
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/02698811251368364

Heavy caffeine drinkers sleep less but have deeper sleep, study finds
https://www.psypost.org/heavy-caffeine-drinkers-sleep-less-but-have-deeper-sleep-study-finds/


カフェインと睡眠の関係を調べた従来の実験では普段からカフェインを摂取する人にいったん摂取をやめてもらい、その後でカフェインを与える方法がよく用いられてきました。しかし、この方法では日常的な摂取を続けるうちに体がカフェインへ適応していくような長期的な影響を捉えにくく、普段通りの生活における睡眠への影響はよく分かっていませんでした。

そこで研究チームはイギリスの長期健康調査「UKバイオバンク」に参加した48万5511人の遺伝情報とカフェイン摂取量に加え、「HypnoLaus」で1702人から得られた遺伝情報・カフェイン摂取量・睡眠データを分析しました。HypnoLausはスイス・ローザンヌの住民が参加する長期健康調査「CoLaus/PsyCoLaus」の一環として、睡眠の特徴や睡眠障害を詳しく調べる研究の名称です。HypnoLausの参加者は自宅で一晩、脳波や呼吸、心拍などを記録する終夜睡眠ポリグラフ検査を受けています。

研究チームは自己申告された1日当たりのカフェイン入り飲料の杯数を「0杯」「1~3杯」「4~6杯」「6杯超」に分け、4杯以上を「多量摂取群」、3杯以下を「中程度摂取群」としました。以下のグラフは左がUKバイオバンク、右がHypnoLausにおける各区分の人数を示したもので、左の縦軸は10万人刻み、右の縦軸は1000人刻みです。どちらのデータでも1日1~3杯と答えた人が最も多く、UKバイオバンクでは53.7%、HypnoLausでは66.7%を占めました。


研究チームは分析にあたり、遺伝情報を手掛かりにカフェイン摂取と睡眠の因果関係を推定する「メンデルランダム化」を用いました。この分析ではUKバイオバンクのデータからカフェイン摂取量と結び付く遺伝的な違いを調べ、HypnoLausのデータからそれらと睡眠の関係を分析するとともに、推定方法の異なる「MR-Egger法」「逆分散加重法」「加重中央値法」の3手法で同じ傾向が得られるかを確かめました。

その結果、いずれの方法でも多量摂取群は中程度摂取群より1晩の睡眠時間が短いと推定され、差は125~229分でした。また、逆分散加重法と加重中央値法では、多量摂取群の方がノンレム睡眠中のデルタ波も多いと推定されました。ただし、カフェイン摂取量と遺伝情報の結び付きが弱く推定値の不確実性が大きかったことから、研究チームは2時間を超える睡眠時間の差を「現実離れした過大評価」と捉えています。

さらに、HypnoLausの参加者から年齢・性別・BMI・喫煙・飲酒習慣などが近い人同士を組み合わせて分析を行った結果、睡眠時間や寝付くまでの時間などを比較できた609組では、多量摂取群の睡眠時間が中程度摂取群より11分短くなりました。両群をそのまま比較した場合の差も12.9分だったため、研究チームは1日4杯以上のカフェイン入り飲料を飲む人では睡眠時間が1晩当たり11~13分ほど短くなると推定しています。


ノンレム睡眠中の脳波を比較できた588組では、多量摂取群は脳波に占めるデルタ波の割合が0.8ポイント高くなりました。差そのものは小さいものの、デルタ波は深いノンレム睡眠で増えるため、カフェイン入り飲料を多く飲む人は睡眠時間が短い一方で、眠りがわずかに深いことが示されています。

ただし、本人が評価した睡眠の質や朝型・夜型の傾向には両群で違いがなく、寝付くまでの時間やレム睡眠の割合などにも一貫した違いは確認されませんでした。そのため、デルタ波が多いという結果は睡眠の質全体がよかったことを意味するわけではありません。


研究チームは、カフェインの摂取によって短くなった睡眠を補うように体が眠りを深くしている可能性があると指摘しました。これは睡眠不足になるほど次の睡眠を深くする体の調節機能が保たれていることを示唆しており、「カフェインでは失った睡眠を埋め合わせられない」という考えとも一致するとのことです。

なお、カフェイン摂取量は飲料の杯数を自己申告してもらったものであり、飲料ごとに異なるカフェインの含有量や食べ物から摂取したカフェインは考慮されていません。また、参加者の多くがヨーロッパ系だったため、研究チームはより多様な集団で結果を確かめる必要があると述べています。

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in サイエンス,   食, Posted by log1b_ok

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