「ウイルス」とは何なのか?を生物医学の研究者が解説
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により「ウイルス」という単語を耳にする機会が多くなりました。そもそも「ウイルス」とは一体どんなもので、どのようにして生きているのかについてを、ボンド大学の生物医学准教授であるロッティ・タジョウリ氏が解説しています。
What is a virus? How do they spread? How do they make us sick?
https://theconversation.com/what-is-a-virus-how-do-they-spread-how-do-they-make-us-sick-133437
地球上には1000穣(10の31乗)個以上ものウイルスが存在すると推定されています。ウイルスは、エネルギーを生み出したり蓄えたりする能力を持っておらず、他の生物の細胞に寄生し、その細胞が生み出すエネルギーを利用して生きています。単独では生きられないという特徴から、ウイルスは非生物とみなされています。
細胞に寄生していないウイルスは、ビリオンと呼ばれる独立した粒子として存在しています。ビリオンは、細胞に寄生していなくても一定期間生き延びることができます。また、ビリオンが細胞を持つ生物と接触すると、生物はウイルスに感染します。
細胞に寄生したウイルスは、ビリオンを生産し増殖し始めます。中には細胞を乗っ取ったり、捕食したりするウイルスの存在も確認されています。増殖したウイルスは、さらに多くの細胞に寄生するため他の細胞へと移動します。
脂質でできた膜を持つウイルスも存在し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)もその1つです。脂質の膜は石けんで溶かすことができ、膜を溶かすことでウイルスそのものを破壊することができます。そのため、新型コロナウイルスを含むウイルス対策の効果的な手段として、石けんで手を洗うことが推奨されています。
なぜ新型コロナウイルス対策に「石けん」が最強なのか? - GIGAZINE
ウイルスは、せき・くしゃみ・はがれ落ちた皮膚・宿主が触れたものを介し、新しい宿主もしくは細胞ではない別のものへと移動します。こうしてウイルスは、さまざまなものを媒介として広がっていき、病気の流行をもたらします。
特定の生物を認識して寄生するウイルスも存在します。例えば猫は、猫免疫不全ウイルス(FIV)という猫のエイズを引き起こすウイルスに感染する可能性があります。また、コウモリは複数のコロナウイルスを保有しており、新型コロナウイルスもその1つです。
新型コロナウイルスはコロナウイルス科に属するウイルスの一種で、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたSARSコロナウイルス、2012年に中東呼吸器症候群を引き起こしたMERSコロナウイルスと同じ分類にあたります。
「コロナウイルス」という名前は、ウイルスを顕微鏡で観察したときに、ビリオン表面にある小さなタンパク質の突起が太陽コロナのように見えることに由来しています。
新型コロナウイルスを含むコロナウイルスは比較的頻繁に変異し、記事作成時点で7種類のコロナウイルスがヒトへ感染することが確認されています。中でも新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスよりも細胞への感染力が高いという特徴を持っており、この特徴については以下の記事を読めばその詳細がわかります。
新型コロナウイルスは2003年のSARSコロナウイルスよりも細胞への感染力が高いと判明 - GIGAZINE
by NIAID
タジョウリ氏は「多くの人はウイルスによってどんな病気が発症するかを気にしがちです。しかし、病気そのものだけでなく、ウイルスの特性、感染経路、増殖手段をもっと知るべきです」と語っており、ウイルスへの知識を深めることを推奨しています。
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in Posted by darkhorse_log
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