消費者は慈善事業を行った企業の商品を「安全なもの」だと感じるようになる
多くの企業は単に営利活動を推進するだけでなく、慈善団体への寄付や環境を保護する取り組み、活動地域社会への貢献活動などを行って企業の社会的責任を果たしています。ミシガン州立大学の研究チームは、「消費者は慈善事業を行った企業の商品やサービスを『安全なもの』だと感じるようになる」ことを発見しました。
Beyond Warm Glow: The Risk-Mitigating Effect of Corporate Social Responsibility (CSR) | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s10551-020-04445-0
A company's good deeds can make consumers think its products are safer
https://theconversation.com/a-companys-good-deeds-can-make-consumers-think-its-products-are-safer-132234
消費者に商品やサービスを提供して利益を上げている企業は、社会的責任を果たすためにさまざまな慈善事業を行い、その成果を社会に向けて発信しています。多くの企業はこうした活動を通して、顧客が企業に対して持っている印象を向上させ、最終的にはより大きな利益が得られることを期待していると、ミシガン州立大学でマーケティングについて研究しているValerie Good氏は指摘。
Good氏らの研究チームは企業の慈善事業が消費者の行動や心理に与える影響を調査するため、集めた被験者に特定の企業に関するデータを読んでもらいました。企業のデータはいずれも公開情報に基づいたものであり、被験者が読んだデータには企業の慈善事業に関するものが含まれているものと、慈善事業に関する項目が含まれていないデータもあったとのこと。
次に、研究チームは被験者に対して、データに目を通した企業の製品やサービスを購入する際に考慮するリスクの認識について測定しました。その結果、企業が行った慈善事業に関しての知識を得た消費者は、その企業の商品やサービスが「より安全であり、高品質である」と考える可能性が高くなることが発見されたそうです。
「慈善事業を行う企業の製品はより安全だ」と消費者が考える理由についてGood氏は、企業が社会的責任を果たすために多額の資金を費やしている様子を見て、消費者が「この企業は消費者と長期的な関係を結ぶために投資している」と推測するのだろうと指摘。消費者に対して企業が誠実な姿勢を見せると、消費者は「この企業は消費者をだまし、低品質の商品やサービスを売りつけようとしないだろう」と考えるとのこと。
たとえば、ある航空会社が慈善事業を行ったと報じられた場合、消費者はその航空会社に対して好意を持つだけでなく、「その航空会社を利用して海外に行くことは安全だ」という意識を持つ可能性が高いとGood氏は主張しています。
なお、Good氏は製品やサービスと無関係の慈善事業を行うよりも、自身の製品やサービスの安全性向上や環境に優しい製品作りに投資した方が、企業にとっていい影響が出ることも指摘しています。「消費者は企業が社会に還元することを望んでいますが、それよりも重要なのは、企業が消費者や環境、社会にとって長期的な利益をもたらす、安全で高品質な製品やサービスを作ることです」と、Good氏は述べました。
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