メモ

ゲイツ財団に3兆円を託したウォーレン・バフェット宛てにゲイツ夫妻がこれまでの慈善活動を報告


投資会社バークシャー・ハサウェイの創業者のウォーレン・バフェット氏は世界有数の資産家で知られていますが、保有する資産のほとんどすべてを慈善事業に寄付する計画を打ち出して実行中です。中でもバフェット氏が公私にわたって親しいMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏が運営するビル・メリンダ・ゲイツ財団に対して300億ドル(約3兆3000億円)という大金を寄付することが決まっており、ゲイツ氏は財団の活動を年次報告としてバフェット氏に報告しています。ゲイツ氏がバフェット氏に宛てた「Dear Warren Our 2017 Annual Letter」という題名の年次報告では、ゲイツ財団のこれまでの取り組みと実現してきた成果がどのようなものなのかが詳細に説明されてます。

Warren Buffett’s Best Investment | Bill Gates
https://www.gatesnotes.com/2017-Annual-Letter

2006年にバフェット氏は保有資産の大半を占める300億ドル(約3兆3000億円)をゲイツ財団に託すことに決めました。ゲイツ氏の慈善活動に共感したバフェット氏は「大きな賭けをしよう」と言って大金をゲイツ財団に預けたとのこと。ゲイツ氏はバフェット氏から託された大金を、貧困をなくし世界をより良くするための数々の活動に投じていますが、その成果を「年次報告」という形でバフェット氏に報告しています。その年次報告を見たバフェット氏は、「この報告書は私一人が読むのは惜しい。ゲイツ財団での取り組みが世界に知られることが大切だ。この報告は世界に向けて公開すべき」という1通の手紙を送ったことがきっかけで、年次報告はゲイツ氏のブログ「Gates Note」で公開されることになりました。なお、年次報告はビル氏とメリンダ氏が交互にバフェット氏に語りかける対話形式になっています。


◆1億2200万人
2016年の活動を報告する年次報告は、ゲイツ夫妻が好きな「1億2200万人」という数字から始まります。国連は1990年以降、毎年9月に前年に死亡した5歳未満の子どもの数を発表していますが、この数字にゲイツ夫妻は常々心を痛めていたとのこと。多くの幼い子どもが死に直面しているという悲しい事実は、同時に多くの子どもたちが生きているということをも意味し「希望」となっているとメリンダ氏は話しています。

ゲイツ夫妻は20年以上前に野生動物を見るためにアフリカに行ったときに、アフリカでは何百万人もの子どもが下痢や肺炎やマラリアなどによって死んでいる事実を目の当たりにしたとのこと。世界の不公平さを痛感したゲイツ夫妻は、それ以来、子どもの死亡率に注目してきたそうで、「子どもの死亡率を下げる」という命題はゲイツ財団の目的の一つになっています。

前述の「1億2200万人」という数は、死亡率が1990年と同じ死亡率だった場合と現実世界を比べた時に救われた子どもの数を意味するとのこと。貧しい国や開発途上国の幼児死亡率は年々下がり、多くの命が助かっていることは、「子どもの命を救う」という目標を掲げるゲイツ財団に勇気を与えています。


ビル氏は子どもの命を救う活動の中で、「母親がどれくらいの数の子どもを持つかを決められれば、子どもはより健康的になり学校教育を受けられるチャンスが増え、その結果、家族をひいては国を貧しさから救い出せるということを知った」と述べています。

2001年にビル氏がバフェット氏に子どもが死ぬのを予防する活動について話したところ、バフェット氏は「ゲイツ財団の価値観と自分の価値観は一致している」と述べたとのこと。バフェット氏は「資源を賢く使い、浪費を避ける」という価値観を持っているそうですが、この浪費を避ける倹約の精神は、1億人以上の子どもを救うことにつながる慈善活動を可能にしたとビル氏は考えています。

ちなみに以下の写真は香港へ一緒に旅行に行ったビル氏とバフェット氏がマクドナルドで昼食をとったときのもの。「私がお金を支払おう」と提案したバフェット氏はポケットから割引クーポンを出したそうで、大金持ちにもかかわらず質素倹約に生きるバフェット氏の生き方を示すエピソードとして紹介されています。


◆ワクチン
「ウォーレン。あなたが大金を寄付したことで得られた最大の成果の一つは『ワクチン』です」とメリンダ氏は述べています。以下のグラフは小児用の基礎ワクチンの摂取率の推移で、青色が富裕な国、赤色が世界平均、緑色が貧しい国を示します。貧しい国に小児用ワクチンを提供するという慈善活動が確実に成果を上げることが、子どもの死亡率を下げる最大の要因だとのこと。


今では小児用のワクチンが安価に提供されていますが、貧しい国ではワクチンを買う経済力がなく、ワクチンが売れる見込みが立たず安価なワクチンを開発しようという考えが企業にはなかったそうです。しかし、Gaviアライアンスが設立され、アメリカ・イギリス・ノルウェー・ドイツ・フランス・カナダなどの裕福な国がワクチン接種プログラムを支援してワクチンの開発資金を提供することで、今では死を招き得る5つの感染症を1度の摂取で予防するワクチンが1ドル(約110円)以下で作ることができるようになり、貧しい国にも配布できるようになりました。

そして、1ドルのワクチンを使って子どもが死を免れることで得られる経済的な利益は44ドルになることが研究で明らかになっているそうで、貧しい国にワクチンを届けることが国を貧困から救う手助けになっているとゲイツ夫妻は指摘しています。


ただし、いまだに紛争地域や辺地に住む1900万人の子どもは予防接種を受けられないという現実があり、これらの子どもたちにもワクチンを届け、2030年までに死亡する子どもの数を300万人以下にするという目標をゲイツ夫妻は掲げています。

◆新生児死亡率
2016年には、100万人の新生児が生まれたその日に死亡し、250万人の子どもが生まれて1カ月以内に死亡しています。産後1カ月以内の新生児死亡の原因は、「未熟児」「感染症」「酸素欠乏症」という3つに分類できるとのこと。子どもの死亡原因に占める新生児死亡率は、1990年の40%から45%まで高まっているそうです。


数十年にわたって専門家は乳幼児の死亡を減らすことに苦労してきましたが、ゲイツ夫妻は一つのデータから解答を見いだしています。以下のグラフは縦軸が新生児1000人あたりの死亡数、横軸が国民1人当たりの収入を示したもの。ここからは「収入が高く豊かな国ほど新生児死亡率が低い」という関係がわかり、富が健康に関係するという単純な構図をビル氏は指摘しています。つまり、ビル氏は「貧困をなくすことが新生児死亡率を下げる方法のはずだ」とシンプルに考えているというわけです。


しかし、貧しい国にもできる方法があることをメリンダ氏は指摘しています。アフリカのルワンダは世界で最も貧しい国の一つですが、2008年から2015年にかけて新生児死亡率を30%も減らすことに成功したとのこと。ルワンダでは新生児1000人あたりの死亡数は19人で、この数字はGDPが同等のマリ共和国の38人の半分という優秀さです。つまり、お金がなくともできる方法はあるはずということです。

メリンダ氏によると、ルワンダ政府は生まれて1時間以内に母乳を与え、生後6カ月間は母乳を与えること、医療従事者にへその緒を衛生的に切る訓練を施すこと、赤ちゃんに母親のぬくもりを伝えられるような「カンガルーケア」を導入すること、などの取り組みによって、新生児死亡率の低下を実現したとのこと。


「訓練された医療従事者は多くの赤ちゃんの命を救えますが、熟練した人でも治療できないというケースがあります。それは、死亡した原因が何かわからないからです」とビル氏は述べ、死因を解明する必要性を説いています。ゲイツ財団では、死亡した乳幼児から細胞のサンプルを採取して、そのサンプルをアメリカ・アトランタの疾病対策センターに検体として送り、死因を特定してアフリカの医療現場にフィードバックするという試みを行っているとのこと。

以下のムービーでは、南アフリカで生まれて3日後に死んだ男の子の解剖に立ち会うビル氏の様子が確認できます。

CHAMPS - YouTube


新生児が死亡する原因を追及することは、子どもの死亡率を下げるのに不可欠であり、この研究にお金を投じることは最も興奮する重要な仕事の一つだとビル氏は述べています。


◆栄養失調の解消
子どもの死亡原因の45%を占めるのは「栄養失調」だとのこと。ここで注意すべきことは、栄養失調は飢えではないということ。たとえ十分なカロリーを得ていても、適切な栄養素を得られないことで、下痢や肺炎などを引き起こし死亡する確率が上がるとビル氏は指摘しています。

アフリカ・タンザニアの9歳の少年少女のグループの写真。同じ年齢の平均的な子どもよりも身長が低いことから、必要な栄養を取ることができていないことが伺えます。


「栄養失調は地球上で最も人間の潜在能力を破壊するものです。そして失われた潜在能力は世界にとって大きな損失です」とビル氏は述べています。栄養失調の子どもを減らすことは、人間の可能性を広げる「波」を起こすことにつながるはずだと考えているビル氏は、外国からの援助のわずか1%しか栄養補填プログラムに充てられていないと指摘しています。そのため、ゲイツ財団では非常に栄養価の高い作物の開発など、子どもが栄養失調にならない方法を開発する研究に資金を投じると共に、各国政府に同様の支援を呼びかけているそうです。

◆家族計画
2016年に初めて開発途上国で避妊をしている女性の数が3億人を突破しました。避妊する女性が2億人に達するまでに何十年もかかったのに対して、3億人の到達はそれから13年しかかからなかったとメリンダ氏は述べています。開発国で子を産む間隔を3年あけると、次に生まれてくる子が1歳まで生きられる確率は倍になるという統計があることから、適度に避妊薬を利用して計画的な出産につとめることは、乳幼児死亡率を大きく減らすことにつながるとのこと。

「過去50年間を振り返って、避妊薬の入手性をよくすることなく貧困から脱した国はありません」とメリンダ氏は述べており、避妊に対する教育を受けることの重要性を指摘しています。

また、ゲイツ財団が参加する「Family Planning 2020」では、2020年までに1億2000万人以上の女性に避妊薬へのアクセスを提供することが目標に定められています。避妊薬を手にする女性の数は確実に伸びているものの、野心的な目標の達成にはさらに避妊薬の普及ペースを上げる必要があるそうです。


最新の避妊薬の中には、1度注射するだけで3カ月間も避妊の効果が持続するものがあるそうですが、メリンダ氏が多くの子どもを抱える女性に注射のことを話すと、「注射を打つために、暑い中20キロメートルを歩かないといけないのですか?」と言われたとのこと。適切な避妊薬を簡単に利用できる方法を作り出すことが、大きな課題となっています。


◆性差別的な貧困
ゲイツ夫妻が貧困国を巡る中で感じたことは、「最も貧しい国における『男性優位』の構造は驚くべきものだ」ということ。貧しい国ほど女性は制約を受けており、何をするにも男性の許可を求められているそうで、男性以上に「情報を共有して社会に還元できる」という女性の持つパワーを活かすことができていないとゲイツ夫妻は感じたそうです。

メリンダ氏はインドで7500万人の女性だけで助け合うグループの活動に関わっているとのこと。男性から自立して生きようとする女性の多くが、セックスワーカーとして働いており、このような女性はインドでは社会的にさげすまれて生きることを余儀なくされているそうです。


女性たちが集まって互いを支え合うことで得られることは多くあるとビル氏は述べています。大きなメリットの一つとしてHIV予防に成功したことをビル氏は挙げています。インドのセックスワーカーが客に対してコンドームの使用を求める運動をすることで、HIV感染の広がりを食い止めたことは、社会に大きな利益をもたらしたとビル氏は評価しています。

◆楽観主義
ビル氏によると、あまり知られていないことですが極端な貧困の割合は過去25年間で半減しているとのこと。最近の調査では、極度の貧困が半減したことを知っていたのはわずか1%に過ぎず、99%の人が貧困への取り組みを過小評価していました。なお、この調査は貧困に対するテストだけでなく、楽観主義の度合いをチェックするものでもあるとビル氏は述べています。


「楽観主義は大きな財産です」とメリンダ氏は考えています。メリンダ氏によると、楽観主義とは「物事が自動的に良くなると信じ込むこと」ではなく「物事をより良くできると信じること」だとのこと。この考え方はバフェット氏の成功にも通じるところがあるそうで、「ウォーレンは成功することで楽観主義になることはありませんでした。けれどもあなたの楽観主義は成功につながりました」と述べています。失望に直面したときこそ楽観主義を持ち続けることが大切だとメリンダ氏は考えており、まだHIVワクチンが開発されないことや画期的な殺菌剤が現れていないことに深く失望しつつも、楽観主義であることの重要性を説いています。

ビル氏によると、世界中の人を健康にするという約束は「共感」によって押し進められるとのこと。バフェット氏が資産をゲイツ財団に投じることで財産を社会に還元する決断をしたことは共感に他ならないと指摘しています。そして、共感に楽観主義を加えて、技術をミックスし、戦略を当てはめ、多くの協力者と団結して、より多くの命を救おうと考えているとのこと。ゲイツ夫妻は誰よりも貧困の解消に対して楽観主義であるようです。


◆「0(ゼロ)」
みなが知っている魔法の数字が「0(ゼロ)」であり、このゼロという数字で年次報告の手紙を終わらせたいとビル氏は述べています。ゲイツ財団で取り組んでいるゼロは、マラリアゼロ、HIVゼロ、栄養失調ゼロ、予防できる死亡ゼロ、貧しい子どもと他の子どもたちの格差のゼロと多岐にわたるとのこと。メリンダ氏は、このゼロを目指して行くことが慈善事業とビジネスとの最も大きな違いだと述べています。民間企業の目的はそのビジネスを維持しとどまることですが、ゲイツ財団にとってあらゆる問題をゼロにして存在意義がなくなることは幸せなことだというわけです。

ゲイツ財団が目指す「ゼロ」の中で最も実現に近いのがポリオの根絶です。1988年にポリオ根絶をうたう世界的なキャンペーンが始まったときには年間で35万件の新たな患者が発生していましたが、2016年に報告された症例はわずかに37件だったとのこと。


メリンダ氏によると、報告された37件はナイジェリア北部、アフガニスタン、パキスタンの一部地域に限定されていたそうで、紛争地域にポリオワクチンを届ける難しさを感じさせますが、35万件から37件への激減は驚くべき進歩ではあるものの、あくまでゴールはゼロだとのこと。ポリオ根絶を実現することはゼロという魔法の数字を知らしめて、他の疾病や予防接種システムをよりよくすることにつながるため、大きな意味があるとゲイツ夫妻は考えています。

◆賭け
バフェット氏はゲイツ財団に多額の寄付をするときに「賭け」をしました。史上最も成功した投資家であるバフェット氏は史上最高のギャンブラーとでもいうべき人であり、資金を預けられたゲイツ夫妻にとってその責任は重大だとのこと。

ビル氏は、貧困層の生活に大きな影響を与える科学的なプログラムに多額の投資をしており、人間の健康に関する分野に優秀な科学者を世界中から集めて、次世代の専門家を育てているとのこと。ポリオを根絶した後は、マラリアを根絶し、さらに難しい栄養失調の問題や、究極的な難度である新生児の命を救う活動にチャレンジする予定です。一つの難題を解決することで、次のチャレンジへのはずみにするという良い流れを作ることで、バフェット氏から寄せられた信頼に応えるとビル氏は述べており、「私たちはあなたを決して失望させません」という言葉で、年次報告を締めくくっています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ビル・ゲイツが出資した肌のような快感を保つ次世代コンドームの新素材「超高強度ヒドロゲル」とは? - GIGAZINE

ビル・ゲイツが貧困撲滅のために「ニワトリ」を寄付する理由とは? - GIGAZINE

ビル・ゲイツ財団出資の企業が遠隔操作で16年使用可能な避妊チップを開発 - GIGAZINE

ビル・ゲイツが人間の便から作った水をごくごく飲み技術力の高さを実証する廃棄物処理&浄水&発電装置「Janicki Omniprocessor」 - GIGAZINE

ビル・ゲイツがマラリア撲滅のために有効な「遺伝子ドライブ」技術は5年以内に登場すると発言 - GIGAZINE

ビル・ゲイツが語る「オンライン授業が教育に革命的変化をもたらす可能性」とは? - GIGAZINE

ビル・ゲイツ氏が語る「モバイルバンキングが貧困層の生活を変える可能性」とは? - GIGAZINE

ビル・ゲイツ財団がこれまで資金提供してきた研究者の論文を誰でも即時アクセス可能に - GIGAZINE

8兆円以上の資産を持つ世界一の富豪ビル・ゲイツが何を考えどんな日常生活を送っているのかに密着 - GIGAZINE

人工知能は教育を修正できるのか?ビル・ゲイツに聞いてみた - GIGAZINE

「貧困国は2035年までに消滅する」というビル・ゲイツの見解に著名な経済学者が真っ向から反論 - GIGAZINE

投資の神様「ウォーレン・バフェット」はどのようにして世界有数の大富豪になったのか、そのプライベートにスポットを当てたドキュメンタリー - GIGAZINE

in メモ,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.