サイエンス

ビル・ゲイツがマラリア撲滅のために有効な「遺伝子ドライブ」技術は5年以内に登場すると発言


地球上で最も多くの人間を殺す生き物は「蚊」だと言われてます。マラリアを媒介する蚊によって、子どもを中心に年間で70万人以上が死亡しているという事実を重大事として捉え、寄付を続けているMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏が、「3年から5年のうちにマラリアを撲滅する有効な技術が出てくる可能性がある」とインタビューで発言しています。

Gates Says Altered Mosquito Is Next Weapon to Fight Malaria - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-16/gates-says-altered-mosquitoes-are-next-weapon-in-malaria-fight

Bill Gates endorses genetically modified mosquitoes to combat malaria | The Verge
http://www.theverge.com/2016/6/17/11965176/bill-gates-genetically-modified-mosquito-malaria-crispr

ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を通じて蚊が媒介する病気対策をする研究に2億ドル(約210億円)以上の資金提供を行っているゲイツ氏は、アメリカ・ボストンで行われたアメリカ微生物学会に出席する前にBloombergのインタビューに応じ、蚊がもたらしている脅威とその対応策、そして自身の見解について話しました。

マラリアやデング熱などのウィルスを媒介して病気を引き起こす蚊について、遺伝子を改変することで病原を絶つという研究が遺伝子科学者によって進められています。遺伝子を改変することで、生物界に予期せぬ影響が起こる可能性について理解しつつも、ゲイツ氏は「子どもがマラリアで死んでいるという事実は悪である、というのが私の基本的な信念です」と述べ、研究を個人的に支援する意向であることを示しました。


数ある遺伝子改変技術の中でも、ゲイツ氏が注目しているのは、遺伝子を自由に書き換えて、望む形質を得ることのできる「ゲノム編集」です。ゲノム編集がどのような技術なのかは、以下の記事を見ればよく分かります。

遺伝子を自在に設計して生物の特性を変えられる神の領域の技術「ゲノム編集」とは? - GIGAZINE


ゲノム編集によってマラリアを撲滅するアプローチは2種類あり、一つはマラリア原虫への耐性をもつ遺伝子操作を行うことで、もう一つは遺伝子操作によって蚊を不妊にさせるというもの。いずれの手法を採る場合でも、大きな障害になるのが、単に遺伝子操作によって蚊を作ったとしても、普通に自然界の蚊と交配させると2分の1の確率でしか遺伝的要素が受け継がれないため、効果が時間的にも確率的にも制限されるという点でした。しかし、新たに開発された「(PDFファイル)Gene drive(遺伝子ドライブ)」という技術によって、この難問はクリアされつつあります。

カリフォルニア大学アーバイン校のアンソニー・ジェームス博士らの研究チームは、抗マラリア耐性遺伝子を99%以上の高い確率で蚊に遺伝させる技術である遺伝子ドライブの開発に成功しました。また、不妊の遺伝的特徴を持つ蚊を研究室内で育てている蚊の中に放ったところ、非常に速い速度で蚊全体を死滅させることに成功しているとのこと。


ゲイツ氏によると、ゲノム編集を用いることで遺伝子改変をすることには危険性もあり、さらに深い議論が必要であることを認めつつも、マラリア撲滅のために今後3年から5年のうちに有効な遺伝子ドライブ技術が開発されるだろうと考えているとのこと。

さらにゲイツ氏は、マラリアだけでなくジカウィルス撲滅についても、2017年にコロンビアとブラジルで、ウィルスの伝達をブロックできる蚊を自然界に放つ大規模な実験が行われる可能性があると述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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