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「貧困国は2035年までに消滅する」というビル・ゲイツの見解に著名な経済学者が真っ向から反論

By Ángelo González

「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」という格言(マタイの法則)があります。この有名な格言に従うと、「すでに豊かさを享受している国はいつまでも豊かなままで、今、貧しい国はいつまでも貧しいまま」ということにもなりかねませんが、かつてオックスフォード大学のビジネススクールで教授をつとめフィナンシャルタイムズで毎週コラムを連載している著名な経済学者のジョン・ケイ博士によると、現在のグローバル化した世界経済ではマタイの法則が通用しているとのことです。

John Kay - The world’s rich stay rich while the poor struggle to prosper
http://www.johnkay.com/2014/01/29/9250

ケイ博士は、自身のブログ「JOHN KAY」で、Microsoftの創業者で世界有数の大金持ちであるビル・ゲイツへの書簡という体裁で、現代の世界経済がマタイの法則に従っているとの主張を行っています。ケイ博士がこの主張を「親愛なるビル・ゲイツへ」という手紙に見立てた理由は、ゲイツ氏が毎年公表するレポート「ゲイツ年次報告書」の2014年版で明らかにした「貧しい国は貧しいままであるという見解は誤りである」というゲイツ氏の主張に対する批判であるから。中でも、ゲイツ氏がケイ博士の著書「The Truth About Markets」を名指しこそ避けたものの、「前提条件に根本的な誤りがあるのでベストセラーになっていないことは幸いだ」と痛烈に皮肉ったことに対して反論したというわけです。

ジョン・ケイ博士


ゲイツ氏は年次報告書で、訪問したナイロビやニューデリーなどがめざましい都市化を果たしている現状を見て「これらの国の所得水準が向上している」と主張しているのに対して、ケイ博士は、「それはグローバル化がもたらした光景に過ぎません。世界中の首位都市には必ずと言っていいほどKPMGHSBCの支店があるものです」と、首位都市の発達ぶりからその国全体が豊かになってきていると断じるのは間違いだと指摘しています。

ケイ博士は、著書The Truth About Marketsで、「国民一人当たりの生産性」と「国内消費」を基準に「その国がどれだけ裕福か」について世界の国々を分析・分類したところ世界には裕福な国は20ほどで、わずかな中間層の国を除けば貧しい国が大多数を占めると評価しました。10年以上たって同書の改訂版を出すにあたって最新の経済データを反映させ内容を見直したところ、マタイの法則が支配していることをあらためて確信したとのこと。

ケイ博士によると、10年前に豊かな国の代表格であったノルウェーやスイスは、現在でもますます豊かになっており、経済成長率が鈍ったイタリアやイギリスでさえも世界の裕福国の地位を維持しており、中間レベルの国や貧しい国が追いつき裕福な国の仲間入りをするのは困難な状況であることはまったく変わっておらず、中国やインドといった経済発展著しい新興国であっても国全体が豊かになるのに長い年月を要すると断じています。

By A Kap

また、ゲイツ氏が貧しい国が豊かになってきているという自説を説明するのに、「ある国の平均所得の分配」と「世界全体の所得の分配」を混同しているが、これらの指標はまったく異なるものであると批判しています。

そして、ケイ博士は、著書The Truth About Marketsで主張してきたことは多くの貧しい国をより豊かにするための社会的・経済的な制度に関する議論だとした上で、このような制度の構築に失敗すれば本来、今ある知識と技術で達成できるはずの生産性・生活水準さえ得られないため、このような制度構築が必要だと述べています。

「世界中の貧しい国が豊かになりつつあり、2035年には世界に貧しい国はほとんど残っていない」とするゲイツ氏に対して、「貧しい国はこれまでにもまして豊かになりにくい」とするケイ博士ではまったく正反対の見解と言えますが、両者ともに貧困を撲滅したいという思いは同じ。いずれの見解が正しいのか?という議論はさておき、貧困のない世界の実現に向けてより議論を深めて欲しいものです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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