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アメリカ史上最悪の原子力潜水艦事故に対する内部資料の開示を裁判所が決定


死者129名を記録し、アメリカ史上最悪の原子力潜水艦事故として知られる「スレッシャー号沈没事故」に関する裁判で、「アメリカ海軍は機密扱いではない内部資料を開示するべきである」との判決が下りました。

Judge Orders Navy to Release USS Thresher Disaster Documents - USNI News
https://news.usni.org/2020/02/11/judge-orders-navy-to-release-uss-thresher-disaster-documents

スレッシャー号は、1963年4月10日朝に深海潜行試験のため出港し、試験深度に近づいた段階で「小さな問題が発生した」と通信しました。制御可能かどうかを尋ねる海中救助船の問い合わせに対して、スレッシャー号はわずかに聞き取れる程度の交信を発した後、「押しつぶしたような鈍いドスンという音」を残して沈黙。この音は「隔壁が圧壊した音」だと考えられており、スレッシャー号はその後海上に戻ることはありませんでした。この沈没事故によって、乗船していた士官16名、兵員96名、民間技術者17名の計129名の命が失われました。


海軍予審裁判所は、深海で撮影された写真や引き上げられた部品、そしてスレッシャー号の設計・運用歴などを評価した上で、「海水配管システムのろう付け箇所の破損」が事故の原因だと判断しました。

この判断に異議を唱えているのが、スレッシャー級の潜水艦で艦長を務めた経歴を持つジェームズ・ブライアント氏。ブライアント氏は「学ぶべき教訓が残されている」という信念の元、海軍を退役後にスレッシャー号沈没事故について独自の調査を開始し、その調査結果から事故原因について議論の余地がまだ残されていると主張しました。


そんなブライアント氏は、情報公開法で定められている50年の秘密保持期限を越えてもスレッシャー号に関する海軍の調査記録が非公開のままになっていることを指摘し、これらの内部資料を公開するように裁判所に訴えました。

アメリカ海軍は当初、スレッシャー号に関する調査記録を予定通り公開するとしており、「重要な軍事機密まで開示してしまう」という懸念を排除するため、海軍は公開前に全文書を精査していたとのこと。しかし、スレッシャー号に関連の文書は3600件以上にも上ったため、当初海軍が公開を予定していた2019年5月には精査が間に合わず、今回のブライアント氏の要求につながりました。

審理に際して海軍側は「複数の部署が文書を精査するため、時間を要する」と主張しましたが、現地時間2020年2月10日、コロンビア特別区連邦地方裁判所のトレバー・マクファデン判事はアメリカ海軍に対し、ブライアント氏が要求した資料を順次公開するように命じました。アメリカ海軍は要求された文書が全て公開されるまで、毎月15日に300件ほどの関連文書を公開し、60日ごとに文書の公開状況に関して報告書を提出する義務を負います。


全面的にその主張が受け入れられたブライアント氏は、「実際に公開された文書を読んで、文書が大幅に編集されていないことを確認してから喜びたいと思っています」とコメントしました。

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in 乗り物, Posted by darkhorse_log

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