「欧米の学生の代わりに論文を書く」ことがケニアでは一大ビジネスになっている
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作文の宿題や提出期限が迫っている論文を前に「誰かが代わりにやってくれればいいのに……」と思ってしまった経験がある人も多いはず。そんな宿題を代行してくれる「学術論文代行業(アカデミック・ライター)」という職業が、東アフリカのケニア共和国に存在します。
Cheating, Inc.: How Writing Papers for American College Students Has Become a Lucrative Profession Overseas - The New York Times
https://www.nytimes.com/2019/09/07/us/college-cheating-papers.html
Kenya is a hotbed in the $1 billion global contract cheating industry
https://www.pri.org/stories/2020-01-24/doing-western-students-homework-big-business-kenya
ケニアの中心部にあるニエリの町に住む25歳の大学生メアリー・ムブグアさんが、「アカデミック・ライター」という仕事に出会ったのは、学費をまかなうための仕事探しをしている時のことでした。最初は保険の販売員の仕事に就いたムブグアさんですが、思うように保険を売ることはできませんでした。次に就いた仕事はホテルの受付で、仕事は順調でしたが授業料を支払うには給料が安すぎました。
そんなムブグアさんに友人がすすめたのが、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどの大学生の論文を代筆する「アカデミック・ライター」の仕事です。ムブグアさんは、1カ月間トレーニングしてからアカデミック・ライターの仕事を開始。安楽死の是非を問うエッセイから、宇宙の植民地化についてを説いた論文までさまざまな仕事を請け負って、多い時には1カ月に320ドル(約3万5000円)を稼ぎました。この金額は、ムブグアさんがこれまで手にしたどんな金額より多い額だったとのこと。
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ケニアの平均年収は約1700ドル(約18万6000円)ほどであるのに対し、腕のいい「アカデミック・ライター」は月に2000ドル(約22万円)も稼ぎ出します。そのため、ムブグアさんのような学生が副業でやることもあれば、専業のライターも存在しているとのこと。
小学校2年生のころに母親を亡くしたムブグアさんは、それ以来弟と妹を助けるために学業で成功を収めるべく、必死に勉強してきました。しかし、政府の奨学金や親戚の支援を受けても一家の家計と大学の授業料をまかなうことはできず、勉強を続けるには不正な仕事に手を染めるしかありませんでした。
ケニアでの「アカデミック・ライター」は10年以上前から存在する仕事ですが、インターネットの普及によりビジネスが洗練されてからは、需要が急増しているとのこと。ビジネスの形態としては、オークションサイトeBayのように論文が売り出されたり、ライドシェアサービスUberのようにライターと顧客がマッチングされたりするものが一般的です。
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カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究公正局でディレクターを務めるトリシア・ベルトラム・ギャラント氏は「これは大きな問題です。対策を講じなければ、すべての認可大学がただの卒業証書印刷所に成り下がるでしょう」と述べて、危機感を募らせています。アメリカでは17の州で論文代行が違法として取り締まられていますが、摘発されることはほとんどなく、もし摘発されても処罰は軽いのだとのこと。
学術論文に関する不正行為としては、過去の論文を盗用する剽窃がありますが、こうした行為は「剽窃チェッカー」などで簡単に見抜くことが可能です。しかし、「アカデミック・ライター」が作成した論文やエッセイは完全にオリジナルなので、見抜くことは非常に困難です。
研究公正の専門家で、盗用検出技術の開発者でもあるインペリアル・カレッジ・ロンドンのトーマス・ランカスター氏は「ケニアには信じられないほど優秀な人材がいます。彼らは驚くほど巧みに英語を操り、必要とあらばいつでも高水準な論文を書いてしまいます」と話しました。ランカスター氏によると、人気アカデミックライターの一覧の最上位は、いつもケニア人で占められているとのことです。
ムブグアさんは、ニューヨークタイムズ紙の取材に対し、「この仕事は不正行為の片棒を担ぐ行いです。でも、他に選択肢はありませんでした。私たちは生計を立てるために、お金を稼がなくてはいけないんです」と話しました。
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