深海でワニの死体を貪る「新種のゾンビワーム」が発見される
ワニの死体を深さ2000mの海に沈めて、死体が海底の生物に分解される様子を観察する実験により、新たな種の生物が発見されました。まだ名前のない新種の生物は、海底に沈んだ生物の死骸に生息するホネクイハナムシの仲間だと推測されています。
Alligators in the abyss: The first experimental reptilian food fall in the deep ocean
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0225345
Dead Alligators Dropped to the Bottom of the Sea Make for a Rare and Delicious Meal
https://gizmodo.com/dead-alligators-dropped-to-the-bottom-of-the-sea-make-f-1840927625
New bone-eating worm species found deep under Gulf of Mexico - CNN
https://edition.cnn.com/2020/01/15/asia/bone-eating-worm-alligator-intl-hnk-scli-scn/index.html
光が届かない深海では、植物が光合成を行うことができないため、海底に沈んだ生物の死骸が非常に重要な栄養源となります。特に、巨大なクジラの死骸にはさまざまな生き物が群がって生態系を形成するため、こうした生き物は鯨骨生物群集と呼ばれています。
ルイジアナ大学ラファイエット校の生物学者リバー・ディクソン氏らによると、海の生き物だけでなくアメリカの川に住むワニも、嵐やハリケーンなどで海に運ばれて死亡し、海底に沈んでいくことがあるとのこと。しかし、ワニはクジラと違って全身が硬質な体表で覆われているため、いかにたくましい海底の生物群でも容易に食べることはできないと予想されていました。
そこでディクソン氏らの研究グループは、ルイジアナ州野生生物・水産省の協力を得て体重18.5~29.7kgのアメリカアリゲーター3体の死体を入手。ロープで縛ってメキシコ湾の3カ所に沈め、遠隔操作型無人潜水機でその様子を観察する実験を行いました。
3カ所のうち1つ目の投下地点では、ワニの死体を投下した翌日にはすでに9体のダイオウグソクムシが死体に群がっているのが確認されました。
飼育下では5年以上にわたり餌を口にしなかった記録があるなど、小食で知られるダイオウグソクムシですが、先を争うようにしてワニの体に頭を突っ込んで死骸をむさぼっています。
2つ目の投下地点は、投下から8日後に観察が行われましたが、なんと何も残されていませんでした。代わりに何かを引きずったような跡が残されていたほか、投下地点から約8.3メートル離れた場所に、ワニを縛っていたロープの破片や20.4kgの重りなどが散乱していたとのこと。ディクソン氏は「ロープを食いちぎることが可能な顎の大きさから察するに、死体を持ち去った犯人は巨大なニシオンデンザメかカグラザメではないかと考えられます」と指摘しました。
そして、最後の投下地点は、投下から53日後に調査を行いました。この時には既に、ワニの軟組織はほとんど食べ尽くされており、ほぼ骨だけの状態になっていました。
しかし、研究グループはワニの下顎の一部に、毛のようにみっしりと付着しているホネクイハナムシの一種を発見。ホネクイハナムシは、これまでクジラの骨から見つかっており、「ゾンビワーム」とも呼ばれています。研究グループがこの生物を採取してDNAを調べたところ、既知のどのホネクイハナムシともDNAが異なることから、新種だと判断されました。
ディクソン氏は今回発見された新種の生物について、「メキシコ湾でホネクイハナムシの仲間が見つかったのはこれが初めてのこと。また、深海でワニの骨をむさぼり食う生き物が記録されたのもこれが初なので、注目に値します」と話しました。研究グループは、以前にも牛の骨を海底に沈める実験を行ったことがありますが、新種のホネクイハナムシを発見するには至っていませんでした。
研究グループは今後さらなる研究を実施し、今回見つかったホネクイハナムシの仲間が「は虫類の骨だけ食べる種なのか、脊椎動物の骨ならなんでも食べるのか」などを確認する予定だとのことです。
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