レビュー

巨大な世界樹が支える3層の世界を北欧の神々となって守る協力型ボードゲーム「ユグドラシル年代記」レビュー


北欧神話の神々となって、世界を支える巨大なユグドラシルの木を巨大な怪物から守るボードゲーム「ユグドラシル年代記」の完全日本語版が2019年12月に登場しました。ユグドラシルの木を再現した巨大立体ボードなど、北欧神話の世界観を再現した美しいコンポーネントが魅力で、プレイヤー同士で争う対戦型ボードゲームではなく、ゲームシステムとプレイヤーが戦う協力型ボードゲームになっているとのことで、実際に遊んでみました。

ユグドラシル年代記 | | ANALOG GAME INDEX
http://hobbyjapan.games/yggdrasil_chronicles/

◆内容物
光り輝く巨大な世界樹が描かれたユグドラシル年代記のパッケージはこんな感じ。女性の編集部員が抱えた以下の画像を見るとわかる通り、ボードゲームとしてはかなり大きめのサイズ。


プレイ時間は90分、プレイ人数は1人~5人。


さっそく開封。


中に入っているのはルールブックと、プレイングボードの部品となる厚紙が7枚。


厚紙には既にカットが入っているので、ハサミやカッターを使わなくても簡単に外すことができます。


そしてサガ・ブックと、追加キャンペーンで使用するキャラクターのパラメーターシート、そして神シートが7枚。神シートには北欧神話の神々の名前とイラストが描かれています。


木製のコマ5種とダイス(サイコロ)2種


炎の巨人コマ、名も無き者コマ、ヨトゥンコマ、英雄コマ、エルフコマはそれぞれこんな感じ。


ヴァン神族ダイスと神ダイスは、普通のダイスと違って数字の目ではなく、記号が描かれています。


神フィギュア7種と敵フィギュア11種


神器カード18枚、ヨトゥン・カード18枚、クリーチャー・カード18枚、敵カード42枚。


◆ユグドラシルの組み立て
まずは厚紙からパーツを外して、ゲームの舞台となる世界樹「ユグドラシル」を組み立てていきます。組み立て方はルールブックに書かれていますが、イラストのみの説明なので、どの厚紙からどのパーツを持ってくればいいのかは書かれておらず、苦戦を強いられました。


ユグドラシルの幹を構成する3枚


組み合わせるとこんな感じ。


組み立てた3層を幹に突き刺します。


上層を支える枝を差し込んで……


ユグドラシルの完成。


ユグドラシルは3層のレベルに分かれていて、1層がそれぞれ3つの世界に分かれています。上層はヴァナヘイム(ヴァン神族の世界)・アスガルド(神々の世界)・アルフヘイム(エルフの世界)の3つで、さらにアスガルドの裏には神々に背いた逆賊を閉じ込める(おり)が存在します。


中層はスヴァルトアルフヘイム(夜のクリーチャーの世界)・ミッドガルド(人間の世界)・ニザヴェッリル(ドワーフの世界)の3つ。


下層はニヴルヘイム(死者の世界)・ヨトゥンヘイム(ヨトゥンの世界)・ムスペルヘイム(炎の世界)の3つで構成されています。


続いて、神に逆らう敵を設置していきます。まずはヴァナヘイムにロキを配置。神々の敵であるヨトゥンの血を引くロキは神の眷族(けんぞく)でありながら、北欧神話終盤に起こるラグナロク(終末の日)ではアース神族を滅ぼそうとする敵の1人です。


ロキの子で巨大なオオカミのフェンリル。フェンリルは神話では「アース神族の監視下におかれ、拘束されていた」と語られているため、檻の中に閉じ込められます。


ロキの子で毒蛇の怪物であるヨルムンガンドはミッドガルドでとぐろを巻きます。


世界を焼き尽くす巨人スルトはムスペルヘイムに配置。


ニヴルヘイムに、ヨルムンガンドの妹で死の女神ヘル


サガ・ブックのアイコンの上にニーズヘッグを配置。ニーズヘッグは世界樹ユグドラシルの根をかじるドラゴンであり、ラグナロクを生き延びるといわれています。このニーズヘッグを一番右のアイコンまで動かすとプレイヤー側の勝利となります。


◆5人でプレイ
今回はトール、テュール、オーディン、フレイヤ、ヘイムダルの5人で、基本ゲーム(ハードモード)をプレイしました。


各プレイヤーに配られる神シート。生命点トークンを5個、そして自分の神が裏に書かれている敵カードを手元に置きます。


そして、神ダイスをプレイヤーに1つずつ配ります。


ゲームをスタートしたら、まず全員が一斉に敵カードを、中央にある敵ホイールの上に裏向きで置き、5人の順番を決めます。このプレイヤーのプレイ順はゲーム終了まで固定ではなく、ラウンドによっては状況に応じて変えてもOK。


まずはフレイヤがカードをめくってみたところ、スルトのカードでした。敵ホイールでスルトの名前が書かれたくぼみにカードを設置します。


カードをめくったら、「ユグドラシル上を移動」フェイズと「使命を果たす」フェイズを順番に行います。移動はユグドラシル上を垂直あるいは水平にしか移動できません。そのため、位置によっては1ターンで移動できない場所があるというのがこのゲームのポイント。また、移動はしなくてもかまいません。


「ユグドラシル上を移動」フェイズが終わったら、「使命を果たす」フェイズに移行します。このフェイズでは、滞在する世界の固有アクションを発動するか、同じ世界にいる敵と戦うかのどちらかをプレイ可能。例えば、ニザヴェッリルにいる主神オーディンは、ボードにつきささっている神器カードを引くことができます。


引いてきたカードは光の神バルドルが所有する船のフリングホルニ。「ユグドラシル上を移動」フェイズで移動ルールを無視して下層世界のどこにでも移動できるという効果があります。神器カードは永続的に効果をもつため、ゲーム終了まで何度でも使うことができる強力なカードです。


また、ヴァナヘイムでは、ヴァン神族ダイスをゲットすることができます。ヴァン神族ダイスは、戦闘時に神ダイスと一緒に振ることができ、有利な状況になる確率を上げることができるので非常に重要。


「カードをめくる→『ユグドラシル上を移動』フェイズ→『使命を果たす』フェイズ」というターンを5人全員行ったら、次のラウンドに移り、また全員がカードを出してプレイ順を決めて、ターンを進めていくという流れです。

次のラウンドで、フレイヤがカードをめくるとロキが出現。ロキは既に場に出ていたため、これが2枚目。場に同じ敵カードが2枚表示されると、その敵が起動して行動を始めます。なお、起動した時の敵の行動パターンは敵によって異なります。


ロキが起動すると、まず起動させた神、この場合はフレイヤの元にロキが移動します。


そして、中層のボードを時計回りに120度回転させます。これによって中層の世界が1つ分ずれてしまうので、「ユグドラシル上を移動」フェイズでのルートが変わってしまいます。


そして、下層のヨトゥンヘイムに置かれているヨトゥン・カードを1枚引きます。今回引いたヨトゥンは、女巨人のヒュロキン。ヒュロキンのカードの右下には、ヘルのマークが描かれています。


ヨトゥンヘイムの隅にあるヨトゥンを1つ取り……


ヘルのフィギュアに取り付けます。ヨトゥンは神々の動きを妨害する存在であり、この場合はヘルを倒す時にヨトゥンが身代わりとなるため、ヘルをすぐに倒すことができなくなってしまいます。


ヨトゥンが置かれている場所はメーターのようになっています。このメーターはロキの攻撃力を示すもの。つまり、ロキが起動する度に攻撃力が1つずつ上がっていく仕組みです。


次のラウンドで、フレイヤは「使命を果たすフェイズ」で同じ世界にいるロキと戦うことを選択しました。

神が圧倒的に強いので、神と敵の戦いは自動的に神が勝利しますが、神は戦闘でリスクを負うこととなります。例えば、ロキの場合は攻撃力がリスクの数となり、神はロキを倒す代わりにリスク2つを処理しなければなりません。リスクは生命点から支払うこともできますが、神ダイスとヴァン神族ダイスを振って、その目でリスクをキャンセルすることができます。


振ったところが以下の目。一番右のヴァン神族ダイスで、白黒の丸い記号が出ました。この丸い記号が出ると、リスクを1つキャンセルできます。今回は1つしか出ていないので、減らせるリスクは1つだけ。なお、ヴァン神族ダイスで×の模様が出てしまった場合はヴァナヘイムに戻さなくてはいけないので、ヴァン神族ダイスはゲームを進めるにつれて手元から消えていくこととなります。


ロキとの戦闘リスクは2だったので、ダイスによって1つキャンセルしたものの、結果的に1つのリスクを支払わなければなりません。そのため、フレイヤは生命点を1つ失います。誰か1人でも生命点をすべて失ってしまうと、プレイヤー側の敗北となります。


別のラウンドでは、ヘイムダルがヘルを起動させてしまいました。


ヘルは起動すると、1つ上の世界に移動します。1つ上の世界だったミッドガルドにヘルが移動すると、既にその世界にはヨルムンガンドも存在していました。1つの世界に2つの敵が同時に存在すると、その世界は崩壊してしまいます。世界が崩壊したら、檻の壁となっている崩壊した世界マーカー(画像左下)をその世界に配置します。崩壊した世界では、世界の固有アクションができなくなってしまいます。


崩壊した世界マーカーは、世界にいる敵を1体にまで減らした上で、生命点を2つ支払うか、アスガルドでリスク2のチャレンジを行うことで外すことができます。「同じ中層にいるから、移動してまずヘルをやっつける」と宣言したオーディンが、行動するためにカードをめくったところ、運悪くフェンリルが起動してしまいました。


フェンリルは少し特殊な敵で、起動すると檻からミッドガルドに飛び出します。そして、フェンリルを起動してしまった神はその場でターンが終了するので、オーディンは使命を果たすことができませんでした。フェンリルが起動すると、プレイヤーの作戦が大幅に狂うこととなります。


さらに、フェンリルカードは敵カードデッキの一番下ではなく、デッキに混ぜてよくシャッフルしなければなりません。神が勝利するためにはどういう順番に敵カードが出るかを把握し、作戦を立てることが非常に重要となりますが、フェンリルによるシャッフルが入ってしまうことで、予想がつかなくなってしまうのがこのゲームのポイント。


また、別のラウンドではトールがニーズヘッグを起動しました。


ニーズヘッグが起動すると、サガ・ブックの上にあるニーズヘッグが右に1つ移動します。つまり、ニーズヘッグが起動すればプレイヤー側の勝利が近づくというわけです。ただし、基本ゲーム(ハードモード)ではニーズヘッグが起動する度に他の敵も同時に起動するため、圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまいがち。


例えば、以下ではニーズヘッグの起動によって、スルトとヘルが最上層の世界に到達しました。


そして、敵ホイールを見ると、スルトもヘルも既に1枚カードが出ている状況。スルトとヘルはどちらも直上層に1つ移動するように動きますが、もし移動できなくなった場合、「敵の効果を適用できなくなる」こととなります。敵が起動した時点で、その効果を発動できなくなった場合、プレイヤー側の敗北となってしまうため、これはかなりピンチ。


なお、ニーズヘッグはあと1つ動かせば勝利という状況で、カードも場に1枚出ていました。つまり、カードの引きによって勝利か敗北かがすぐに決まってしまう状況です。


これまでのプレイの流れから「自分の出したカードはほぼ確実にフェンリルだと思う」「さっきフェンリルを発動したので、カードデッキがシャッフルされて何が出るのかわからない」など、自分の出したカードが何の敵なのかを議論します。議論の末、「ニーズヘッグである気はするけれど、ヘルかフェンリルであるかもしれない……」と不安そうにフレイヤがカードをめくってみたところ、見事にニーズヘッグが表示されました。


ニーズヘッグが右端に到達したので、神々の勝利となりました。プレイ時間はおよそ2時間ほど。


ユグドラシル年代記は、見た目こそ複雑ですが基本的なルールはそれほど複雑ではなく、ゲーム初心者でもわかりやすい内容になっています。巨大なユグドラシルをかたどったプレイングボードの上で北欧神話の神々が伝説の怪物を相手に戦うという世界観の作り込みは圧巻。

めちゃくちゃ不利な状況になっても、プレイヤー間で相談して役割を分担しながらプレイを進めることで、十分打破することも可能。一方で、油断をしているとあっという間に敗北まであと一歩というところまで追い詰められることもあり、ゲームが進むとシステムとプレイヤーのしのぎの削り合いがヒートアップします。ゲームの難度とバランスは絶妙だと感じました。


また、サガ・ブックには他にもさまざまなシナリオが用意されており、全てを遊び尽くすのには膨大な時間がかかります。1回だけプレイして終わりではなく、何度遊んでも新鮮な気持ちで遊ぶことができます。モードによってはキャラクターの経験値を計算して進めるものも用意されているため、テーブルトークRPGのように定例会を開いて遊ぶのにも向いています。

ただし、行動パターンやカードの効果が1つ1つ違い、すべてを覚えるのはまず不可能。ゲーム中で「この敵が起動したらどういう行動を取るんだっけ?」「このカードはどういう効果があったっけ?」となる度にルールブックを開いて確認する作業が非常に多く、2時間のプレイ時間の中でルールブックを開いて見ている時間が非常に多くありました。ルールブックは1冊しか収録されていないので、実際に遊ぶ際には「敵の行動パターンのページ」「カードの効果のページ」はコピーをするなどして、プレイヤー人数分を用意するのがお勧め。

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in レビュー,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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