レビュー

人類を脅かす強大な魔物に力を合わせて立ち向かう協力型デッキ構築カードゲーム「イーオンズ・エンド」レビュー


「破孔魔術師」となり、人類最後の拠点グレイヴホールドを守るために、敵である「ネメシス」と戦う協力型デッキ構築ゲーム「イーオンズ・エンド」の完全日本語版が、アークライトゲームズから2020年5月に登場しました。カードゲームとしては珍しく「作ったデッキをシャッフルしない」という特徴をもち、幅広い戦略で楽しめる高難度ゲームとのことで、どれだけ難しいのか実際にプレイして確かめてみました。

イーオンズ・エンド 完全日本語版 | ArclightGames Official
https://arclightgames.jp/product/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%89/

◆内容物と準備
イーオンズ・エンドのパッケージはこんな感じ。


対象年齢は14歳以上、プレイ人数は1~4人、プレイ時間は60分を想定。


ルール説明書と初ゲームの手引き、トークン類


トークン類はカッターやハサミがなくても厚紙から簡単に切り離すことができます。


プレイヤーのスキルやデータを記録・確認するためのプレイヤーマット


プレイヤーと戦うことになる敵モンスター「ネメシス」のステータスやルールが書かれたネメシスマット


プレイヤーが守る人類最後の拠点「グレイヴホールド」とネメシスの体力を表示する体力ダイヤル


破孔(ブリーチ)ダイルとカード区分け用のカード、各種カード。


区分け用のカードにはカードの種類が書かれていて……


こんな感じで仕切りとして使うことで、カードを種類別に収納することが可能です。


「ストップ!」と書かれた3つのカードデッキは初プレイ時に使うもので、そのまますぐにゲームをプレイできるように組まれています。初ゲームの手引きを見ながら指示通りに準備すればOK。


今回は4人でプレイ。プレイヤーマットに書かれている「開始時デッキ」と「開始時手札」を準備します。


さらに、プレイヤーカードの中から合計9種類のカードを選んで場に並べ、「サプライ」とします。


敵となるネメシスは4種類存在します。初ゲームでは、巨大な2つの角が特徴的な赤い魔物「レイジボーン」を倒すことがゲームの目的。


ネメシスカードはネメシスの行動を決定します。ネメシスカードは強さによって3段階に分かれていて、上から下にいくに従って強くなるようにデッキを構築します。


グレイヴホールドの体力ダイヤルを30に設定します。グレイヴホールドは人類最後の拠点なので、このグレイヴホールドの体力が0になったら人類が敗北してしまい、ゲームオーバー。


そしてネメシスの体力ダイヤルを、ネメシスマットに書いてある体力に合わせて調整します。レイジボーンの場合は70と、拠点の倍以上の体力を誇ります。


プレイヤーマットの上に破孔タイルを配置し、さらにプレイヤー番号と体力トークンを載せます。そして、あらかじめ用意したデッキと手札を配置したら準備完了。


◆4人でプレイしてみた
まずはターン順カードをシャッフルして1枚引き、引いてきたターン順カードに書かれた番号のプレイヤーが手番を進めます。


プレイヤーの手番は以下の3つのフェイズで進めます。
1:呪文フェイズ
2:メインフェイズ
3:手札補充フェイズ

呪文フェイズは、破孔タイルにセットした呪文を唱えて相手に攻撃するフェイズ。このゲームで呪文を唱えるためには、「自分の手番でのメインフェイズで破孔タイルの上に呪文カードを設置し、次に自分の手番での呪文フェイズで発動する」必要があります。つまり、呪文は唱えてすぐに使えるのではなく、発動まで1ターンかかってしまうわけです。


呪文をセットする破孔タイルは4つあり、セットできるのは基本的に開放されたもののみ。最初から開放されているのは破孔タイル4枚のうち1枚のみなので、一度に複数の呪文を唱えたい場合は、自分のメインフェイズ中に「エーテル」でコストを支払って強化や開放を行う必要があります。


エーテルは、手札の中から宝石カードを使うことでゲットできます。


エーテルはゲーム内で使うお金のような存在で、エーテルを支払うことでサプライからカードを購入し、自分のデッキに加えることができます。


ゲームが進むにつれて強い呪文カードを購入し、破孔タイルをどんどん開放して呪文カードをセットしていくことで、敵に与えられるダメージもどんどん増えていきます。


購入したカードは即プレイヤーマット右の捨て山に移動します。メインフェイズが終了したら、手札補充フェイズに移行し、使ったカードを捨て山に捨てます。この時に重要なのが「使ったカードを捨て山に捨てる場合は、自分の好きな順番に捨てる」ということ。そして、プレイヤーマット左側にあるデッキから5枚のカードを引いて手札にしますが、デッキが尽きてしまった場合は……


捨て山をシャッフルせずにそのまま裏返してデッキにします。「シャッフルしない」ということは、捨て山にカードを捨てた順番がそのままデッキの順番になるということを意味します。つまり、「どういう順番で捨てるのかを考える」ことが、ゲームを有利に進めるための戦略に直結するというのが、イーオンズ・エンドの大きなポイント。


ターン順カードで「ネメシス」が出ると、プレイヤーではなくネメシスが行動を開始します。


ネメシスの行動はネメシスデッキからカードを1枚めくり、決定されます。引いてきた「殺戮」のカードは、グレイヴホールドが3ダメージを受けてしまうというもの。


レイジボーンがグレイヴホールドを守る人間に襲いかかり、大きな被害を受けてしまいました。


また、カードによっては「ミニオン」と呼ばれる手下の魔物が召喚されてしまうことも。ミニオンには個別の体力が設定されており、呪文で攻撃しないとやっつけることができません。たとえば以下の場面で召喚された「憤怒の化身」はネメシスのターンごとに「レイジボーンはストライクを行う」という効果を発動します。


レイジボーンはネメシスデッキとは別に「ストライクカード」が用意されており、ストライクを行う時はこのストライクカードを引き、そこに書かれている効果を実行します。憤怒の化身によって引かれたストライクカード「崩す」は、グレイヴホールドに3ダメージ、プレイヤー1人に1ダメージ与えるというもの。ストライクカードは非常に凶悪な効果を持つものが多く、戦況をひっくり返して人類が一気に不利に追い込まれることもあります。


ゲームを進めて中盤になってくると、強力な呪文を唱えることができるようになります。開始時デッキから所有している呪文カードの「スパーク」(左)は1枚で1ダメージしか与えられませんが、6エーテルで購入可能な空間洞察は2ダメージ+開放している破孔タイルの枚数×1ダメージを相手に与えることができます。破孔タイル4枚全てを開放している場合は1発で6ダメージも相手に与えることができます。


また、「熾火の鞭」は1発で4ダメージを与えられるほか、2エーテルを支払うことで破孔タイルにセットされている呪文をその場で発動できるという強力な効果をもっています。イーオンズ・エンドは協力型のカードゲームなので、他プレイヤーと話し合いながら、こうした呪文カードを組み合わせて敵に大ダメージを与えるような戦略を考えることが重要です。


また、キャラクターごとに定められている特殊能力も、協力プレイを行う上で重要。特殊能力を使うためには、2エーテルを支払うことで1ゲージたまる「チャージ」を満タンにする必要があります。「私は勇敢ではない。グレイヴホールドのためではなく自分のために戦ってきたのだ」と語るキャラクター・ミストの特殊能力は、仲間1人が追加でカードを4枚引くことができるという「神占」です。


ネメシスによる攻撃の効果で手札を3枚に減らされたプレイヤーに「神占」を使うことで、不利だった状況が一転して有利なものに。


続くターン順はネメシスの番。


しかし、4人のうち1人の体力が残り2。ここでダメージを受けてしまうとプレイヤーはダウンしてしまいます。プレイヤーは体力が0になってもプレイを続行することは可能ですが、4枚ある破孔タイルのうち1枚が使えなくなるだけではなく、ネメシスがパワーアップするなど非常に不利な状況になってしまうため、体力を0にすることは極力避けるべき。


そこで、「そのターン中にグレイヴホールドとプレイヤーに与えられるダメージをすべて無効にする」という特殊能力「予兆のルーン」を発動して時間稼ぎをする作戦に。


これで、ネメシスカードを引いて大ダメージを受けても、痛くもかゆくもない……


と思いきや、続くターン順カードは再びネメシス。4人プレイの場合、ターン順カード6枚の中にはネメシスのカードが2枚入っているため、シャッフルによってはネメシスが2回連続で攻撃を繰り出してくることもあります。


引いてきたカードはグレイヴホールドに4ダメージを与える「倒壊」でした。中盤以降にどんどん召喚されるミリオンを倒すことに必死になり、レイジボーン本体の体力を削りきることができないまま、結局拠点が破壊されてしまったことでゲームオーバーとなってしまいました。


「あっさり拠点が滅ぼされてあまりにも悔しい、別のネメシスならばクリアできるだろうか」と、次はまるでクモのような見た目をした「甲殻の女王」を相手にプレイ開始。


甲殻の女王は「殻の子」を生むため、殻の子トークンがどんどんトークンの上に増えていきます。殻の子は体力1のモンスターで、攻撃はしてこないものの、「群舞」というカード効果によってプレイヤーに不利な状況をもたらします。


ゲーム中に召喚された、甲殻の女王専用のミニオン「母体虫」は殻の子トークンをネメシスのターンごとに1個ずつ増やしていくというもの。さらにこのミニオンは殻の子トークンをすべて倒さないと排除できないという効果がかなり凶悪。


母体虫の効果で、あっという間に殻の子が最大の15体にまで増えてしまいました。この状態で「群舞」が発動し、速攻で人類の敗北が決定してしまいました。


また、「歪んだ仮面」というネメシスは……


「堕落カード」というカードをプレイヤーデッキに追加してシャッフルさせるという、嫌がらせのような効果を発揮します。カードの効果は、プレイヤーにダメージを与える一方で、プレイヤーに有利な効果も発揮するため、一概に有害とはいえません。ただし、「デッキはシャッフルしない」ことで、カードの順番を調整して戦略に組み込む必要があるにもかかわらず、シャッフルされてしまうとプレイヤー側の作戦がすべて崩れてしまうため、かなりやっかいな存在です。


堕落カードによって混乱している人類に、歪んだ仮面が次々とミニオンを召喚して襲いかかります。


歪んだ仮面が大暴れして堕落カードがデッキにまぎれこみまくったプレイヤーが、手札に3枚も引いてきたところ。堕落カードはメインフェイズ終了時にすべて実行処理する必要があるのですが、複数枚を引いてしまうとどうしてもダメージを受けてしまうため、とにかくゴリゴリと体力が削られ、あっという間に体力が0になってしまいました。なお、プレイヤー全員が体力0になると人類側の敗北となってしまいます。


◆感想
1プレイは4人でおよそ1時間30分から2時間といったところ。また、1人でもプレイしたところ、1プレイはおよそ1時間でした。難度はかなり高く、4人プレイは4回チャレンジしましたが、人類が勝利を収めたのはそのうち1回のみ。その唯一の勝利も「ネメシスカードをすべて使い切る」という条件によるもので、結局ネメシスを完全撃破することは叶いませんでした。ただし、1人プレイや2人プレイだとギリギリの状況ながらネメシスの体力を削りきって勝利することに成功したので、ゲームとしては1~2人でプレイする方が難度はやや低めといえますが、ある程度ボードゲームのプレイに慣れた人向けのゲームだと感じました。

デッキ構築型のカードゲームというと「ドミニオン」が有名ですが、「どれだけ点数を稼ぐか」を競って対戦するドミニオンに対して、イーオンズ・エンドは「どれだけ他プレイヤーと協力して話し合いながら敵を倒すことができるか」が目的となります。最初はどうしてもデッキ構築を個人で進めてしまい、プレイヤー同士の協力があまりできていなかったのが反省点でした。

難度は非常に高いものの、「あそこでああすればよかった」「もっとこのように動けばよかった」などと、プレイ後の感想戦が非常に盛り上がりました。「じゃあ今度はもっと呪文カードの購入を意識しよう」と戦略を練ったり、「このサプライの組み合わせでプレイしてみよう」「このキャラクターでプレイしたい」というように、条件を変えることで常に新鮮な気持ちでプレイ可能。また、ネメシスに対してどのカードが有効なのか、どの戦略が効果的なのかを探る楽しみもありました。


イーオンズ・エンドの完全日本語版はAmazon.co.jpで購入可能。価格は記事作成時点で税込9500円です。

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in レビュー,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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