筋肉が疲れて動かなくなる本当の理由とは？

by FlamingoImages

筋肉が疲労する原因として「乳酸がたまる」「エネルギーが枯渇する」という点がよく挙げられますが、実は、この2点以外にも原因があります。本当のところ、筋肉はなぜ疲れてしまうのか？という仕組みを教育系チャンネルのTED-Edがわかりやすくアニメーションで公開しています。

The surprising reason our muscles get tired - Christian Moro - YouTube

筋トレをしていると、最初は重いリフトもらくらく持てますが……

回数を重ねると、いつか持ち上げることができなくなります。

これは物を持ち上げるための筋肉が収縮できなくなるためです。

なぜ筋肉は疲労するのか？という問いに対しては、「乳酸がたまる」「エネルギーが枯渇する」といった答えが一般的ですが、実は、筋肉が疲労する原因はこれだけではありません。

筋肉が疲労する主要な原因の1つは、筋肉が脳から送られてくる信号に反応する能力にあります。筋肉が疲労する原因を知るには、まず筋肉が神経からの信号にどのように反応して筋収縮を起こすか理解する必要があるとのこと。

脳からの信号は運動ニューロンと呼ばれる細胞を通って一瞬で筋肉に送られます。

運動ニューロンと筋細胞の間にはわずかな隙間が空いており、この隙間を通して行われる粒子の交換が筋収縮を可能にします。

運動ニューロンはアセチルコリンを放出しており……

筋肉側では筋細胞膜の外側にナトリウムイオン、内側にカリウムイオンが存在します。

脳が信号を送ると……

放出されたアセチルコリンを受けて筋細胞膜の細孔が開きます。

そして、ナトリウムか細胞膜中に流入し、カリウムが放出されます。このように荷電粒子が動くことで荷電量が変化し、活動電位呼ばれる電位差が筋細胞全体で発生し、筋細胞内に蓄えられているカルシウムの放出を促すとのこと。

このカルシウムの放出により、筋繊維内のタンパク質が互いに結び付き、収縮が起こるわけです。

筋収縮に必要なエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)という分子によってもたらされます。

ATPのエネルギーでナトリウムイオンやカリウムイオンが収縮時とは逆方向に移動可能となり、これによって両者のバランスが元に戻ります。

このようなプロセスが筋収縮の都度、繰り返されるわけですが、ATPによるエネルギーが使い尽くされると乳酸のような老廃物が生み出され、イオンの中には筋細胞膜から流れ出してしまうものもあります。

筋細胞は収縮を繰り返すたびにATPを使い切りますが、常にATPを作り続けているため、ひどい筋肉疲労でもエネルギーを使い尽くすことはありません。

また筋細胞の組織は効果的に乳酸といった老廃物を除去するため、疲労した筋肉であってもpH値はたいてい、正常範囲内に保たれます。

しかし、筋収縮が繰り返されるうちにいずれはカリウムやナトリウム、カルシウムといったイオン濃度が低下し、即座に得られるイオン量が不足して、システムを適切に機能させることができなくなります。

なので脳が信号を送っても……

筋細胞は収縮に必要な活動電位を生み出すことができません。

しかし、ナトリウムイオンやカリウムイオン、カルシウムイオンが筋細胞の中や周りで使い尽くされても、これらのイオンは体の他の場所にはたくさんあるので時間がたてば必要とされるところに戻っていきます。

言い換えれば、動きを止めて休憩するとイオンが筋肉に補充され筋肉疲労が和らぐのです。

定期的に運動すればするほど、毎回、筋肉が疲れるまでにかかる時間が長くなります。筋肉が強化されるほど、重い物を持ち上げる時でも、筋肉を収縮させるために脳が繰返し神経信号を送る回数が減るためです。

神経信号を送る回数が少なくなるほど、イオンの枯渇が起こりにくくなるので、鍛えれば鍛えるほど長く運動できるようになるわけです。

筋肉が大きくなるほどより多くのATPを蓄えることができ、老廃物を取り除く能力を高め、疲労が起きるのを遅らせることができます。