「宗教上の理由」によるワクチン忌避を禁止する法案が可決される、反対派は議会で大騒ぎして抗議
by niekverlaan
アメリカ・ニュージャージー州議会で、「宗教上の理由による子どもへのワクチン接種免除」を禁止する法案が可決されました。この法案について審議した2019年12月16日のニュージャージー州議会では、ワクチン反対派が議事堂に押し寄せて、激しい抗議活動を展開したと報じられています。
NJ Assembly passes bill to bar religious exemption for shots
https://apnews.com/dbdd6fde5a8db397c092438670241ccd
Strict Vaccine Law Stumbles in N.J. Legislature - The New York Times
https://www.nytimes.com/2019/12/16/nyregion/vaccines-measles-nj-religious-exemptions.html
Frenzied anti-vaxxers deter NJ lawmakers from voting on religious exemptions | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/12/frenzied-anti-vaxxers-deter-nj-lawmakers-from-voting-on-religious-exemptions/
Senate cancels vote on controversial vaccination bill after hours of protests
https://www.politico.com/states/new-jersey/story/2019/12/16/after-hours-of-protests-senators-dodge-vote-on-controversial-vaccination-bill-1232962
アメリカは近年の麻疹(はしか)の大流行により、2019年8月には「麻疹の根絶国」としての地位から転落しかける事態に陥りました。一度根絶したはずの麻疹が再流行したのは、ワクチン忌避の台頭が原因となっていることから、特に麻疹の流行が激しかったニューヨーク州をはじめとする5つの州で、「宗教上の理由によるワクチン接種免除」が禁止されています。
ニュージャージー州もこうした動きに追随するため、ニュージャージー州の上院議員であるロレッタ・ウェインバーグ氏を中心とした議員らが、原則として全ての子どもに義務化されている予防接種の免除事由から「宗教上の理由」を除外することを骨子とした(PDFファイル)法案S2173を発議。法案は2019年12月16日に開かれた議会で賛成45票・反対25票・棄権6票で可決されたため、州の下院を通過しました。しかし、同日に州の上院で行われる予定だった最終投票は見送られました。
法案S2173が審議されたニュージャージー州議会議事堂には、20人以上の反対派の人々が詰めかけて建物の外から大声を上げ、数時間にわたり抗議活動を行いました。反対派の人々は、「私たちは従わない」「私たちは神を信じる」といったスローガンや、浮動票を握ると見られている議員の名前を叫んでいたとのことです。その際の様子を収めたが以下のムービーで、再生すると抗議の声で議会を進行するアナウンスがかき消されているのが分かります。
Protesters in the state house chant, “We will not comply!” as the assembly votes to eliminate the religious exemptions for vaccinations pic.twitter.com/gvRleQCnGv
— Danielle Parhizkaran (@DanielleParhiz) 2019年12月16日
議事堂の外の様子はこんな感じ。
“Kill the bill,” protesters chant outside the Senate chamber, opposing a bill that would remove exemptions from vaccination requirements based on religion. Still waiting on Senate to begin its voting session. pic.twitter.com/GUHB6SEDQQ
— Stacey Barchenger (@sbarchenger) 2019年12月16日
法案S2173についての審議が20時までもつれ込んだことから、ニュージャージー州議会の上院は最終的な投票の延期を発表しました。法案を推進していたスティーブン・スウィーニー上院議長は記者団に対し、投票が延期された理由を「終日にわたり議論が堂々巡りしたため」と説明し、抗議活動の影響を否定しました。その一方で、スウィーニー氏は記者たちの前で「人々がこれほどまでに科学を信用していないというのは、驚くべきことです。彼らはインターネットを信頼しています」と漏らしていたとのことです。
また、法案を起草したウェインバーグ氏はAP通信の取材に対し、「飲酒運転の禁止や、シートベルト着用義務には免除事由がないのと同じことです。もしワクチン接種をしなければ、子どもたちの健康と幸せはリスクにさらされてしまいます」と話しました。WHOによると、麻疹の流行を食い止めるための集団免疫を形成するには、予防接種率が95%に達している必要がありますが、ニュージャージー州の調べによると、同州の子どもの予防接種率は94.2%しかなく、基準を満たしていないとのことです。
集団免疫の仕組みについては、以下の記事を読むとよく分かります。
なぜ30%しか効果がなくてもインフルエンザワクチンは打つべきなのか? - GIGAZINE
by Fort George G. Meade Public Affairs Office
一方、ニュージャージー州でワクチン反対派を率いているスー・コリンズ氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し「今日、ニュージャージーの両親たちは勝利を収めました。議会は私たちの側に立っています」と述べて、勝利を宣言しました。
法案の成立を目指すスウィーニー氏らは今後、2020年1月14日の会期終了までに再度投票を実施する予定だとのこと。最終投票により改めて法案が可決された場合、法案はニュージャージー州の知事であるフィル・マーフィー氏の元に送られますが、マーフィー氏の事務所は法案に署名するかどうかのコメントを拒否しているとのことです。
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