「ワクチンを接種していない人がいる家は赤い旗を立てるように」とサモア政府が勧告
by Kevin Jarrett
世界的な麻疹(はしか)の流行を背景に、サモア政府が「ワクチンを接種していない人がいる家庭は赤い旗を掲げるようにしてください」と勧告しました。その狙いは、ワクチンの接種を促進する国家を挙げたプロジェクトを円滑に進めることにあります。
Mass door-to-door vaccination campaign in Samoa as death toll jumps | Newshub
https://www.newshub.co.nz/home/world/2019/12/mass-door-to-door-vaccination-campaign-in-samoa-as-death-toll-jumps.html
Unvaccinated Samoans should identify themselves with red flags, officials say | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/12/unvaccinated-samoans-must-identify-themselves-with-red-flags-officials-say/
麻疹ウイルスを原因とする感染症の麻疹(はしか)は、近年に入り世界的な流行を見せており、2019年8月にはイギリスが麻疹根絶国の地位から転落。10月にはアメリカも麻疹根絶国から転落しかける事態に陥ったほか、2019年のヨーロッパにおける感染者数の増加率は前年比の2倍超、アフリカに至っては10倍近い増加を記録しています。
麻疹の世界的な流行やその原因については、以下の記事を読むとよく分かります。
「アメリカが麻疹(はしか)根絶国としての地位から転落するのは自分たちのせい」と感染症の専門家が悔やむ - GIGAZINE
by Gerd Altmann
麻疹の流行は南太平洋に位置するサモアも例外ではなく、2019年11月には「サモアにおける麻疹の死者は39人に達しており、サモア政府の対応は非常に不十分である」として、世界保健機関(WHO)が非難声明を発表していました。サモアでの麻疹の感染者数はその後も増加の一途をたどっており、12月5日時点では63人もの死者を出していることが明らかになっています。
Latest update: 4,357 measles cases have been reported since the outbreak with 140 recorded in the last 24 hours. To date, 63 measles related deaths have been recorded.
— Government of Samoa (@samoagovt) December 5, 2019
VACCINATION UPDATE: Graphic uploaded below - as of 5 December 2019. pic.twitter.com/STS9VV4WkU
WHOがサモアを名指しで非難した背景には、同国における麻疹ワクチン接種率が2017年からたった1年で半分近くにまで激減しているという実態があります。
サモア政府はもともと、子どもに対する三種混合ワクチンの予防接種プログラムを実施しており、2017年の時点では国民の74%がワクチン接種を受けていました。しかし、2018年7月に看護師がワクチンを希釈する水と誤って期限切れの筋弛緩剤を子どもに投与し、生後12カ月の赤ちゃん2人が死亡するという事件が発生。この事件では、筋弛緩剤の空瓶を自宅に持ち帰るなどして隠ぺいを図った2人の看護師が過失致死罪により有罪判決を受けましたが、サモアの医療体制に対する国民の不信感は収まらず、サモア政府は予防接種プログラムを停止。これにより、2018年のサモア国民のワクチン接種率は34%に落ち込んでおり、麻疹の流行に対して非常にぜい弱な状態に陥っていました。
こうした状況を重く見たサモア政府は、2019年11月18日に無期限の学校閉鎖を実施するとともに、未成年の公共施設への立ち入り禁止と、全サモア国民のワクチン接種義務化を発表。さらに12月2日には非常事態宣言を発令し、同時に「12月5日と6日に、生活の維持に必須となる公共事業を除くすべての政府系機関を閉鎖する」と発表しました。また、これに加えて「大規模戸別ワクチン接種キャンペーン」を打ち出し、国民に自宅待機して医療関係者らにより組織された予防接種班が戸別訪問するのを待つよう勧告しました。このキャンペーンでは、予防接種班が円滑にワクチン未接種の家庭を見分けることができるように、ワクチンを接種していない人がいる家庭は、戸外に赤い旗を立てることが推奨されています。
サモアのトゥイラエパ・サイレレ・マリエレガオイ首相は発表に際して、「子どもたちを守るために、全国民に協力をお願いします。予防接種率を100%にすることが重要です」と述べました。
一方、サモアの反ワクチン派の人々は、「ワクチン接種キャンペーンはまるで、ナチス・ドイツによるユダヤ人の強制収容だ」として、Twitterで「#NaziSamoa」というハッシュタグを使って抗議しているとのことです。
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