サイエンス

水中スピーカーで「生きたサンゴ礁の音」を流し死んだサンゴ礁に魚を集める試み

by SGR

海水温の上昇により世界中でサンゴ礁が死にかけており、一部の専門家はサンゴ礁が白化するペースが加速し自然による回復ではもはや追いつかないと指摘しています。消滅が危ぶまれるサンゴ礁を保全しようとさまざまな試みが行われていますが、研究者は新たに、水中スピーカーで「生きているサンゴの音」を流すことにより、問題を解決しようとしています。

Acoustic enrichment can enhance fish community development on degraded coral reef habitat | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-13186-2

Featured news - Sounds of the past give new hope for coral reef restoration - University of Exeter
https://www.exeter.ac.uk/news/featurednews/title_768084_en.html

Scientists use loudspeakers to make dead coral reefs sound healthy | Boston.com
https://www.boston.com/news/science/2019/12/01/scientists-use-loudspeakers-to-make-dead-coral-reefs-sound-healthy-and-fish-flock-to-them

これまで、サンゴ礁の回復を図る研究者によって「地球温暖化に抵抗力を持つサンゴ礁を繁殖させようとする試み」などが行われてきましたが、新たなアプローチはこれまでとは全く違うユニークなもの。研究者は、死にかけているサンゴ礁の周囲で、「生きているサンゴから録音した音」を流すことで、多様な魚をサンゴ礁の回りに呼び戻すという実験を行いました。6週間にわたって実験が行われたところ、生きたサンゴの音を流した死にかけのサンゴ礁の回りには、音を流さなかった死にかけのサンゴ礁の回りに比べて、2倍の魚が群がったとのことです。集まった魚はスカベンジャーや、草食、肉食を含む多様な種で、そのまま音のあるサンゴ礁に居座る傾向がみられました。

by Fezbot2000

研究を率いたエクセター大学の海洋生物学教授であるSteve Simpson氏は「エビが勢いよく動く音や魚のうなり声など、健康なサンゴ礁は意外なほどにうるさいのです。落ち着く場所を探している若い魚は、このような音のある場所に居着きます」と語っています。

2016年にはオーストラリアの政府機関が行った調査により「グレート・バリア・リーフの珊瑚礁の大部分は死滅の危機にさらされている」ことが明らかになりました。これを受けてエクセター大学の研究者たちは2017年10月から12月にかけて、グレート・バリア・リーフで33個の実験区域を設置しました。それぞれの区域の中心には水中スピーカーが置かれ、スピーカーを中心とする全方向に均等に音が響くよう確認されたとのこと。なお、この区域は「生きたサンゴ礁の音を再生する場所」「ダミースピーカーを設置する場所」「何も設置しない場所」で分けられました。

以下の写真は、エクセター大学のTim Gordon氏が水中スピーカーを取り付けようとしているところ。


実際に設置されたスピーカーはこんな感じです。


研究者は、この試みを大規模に行うことで、世界中で死んでしまった、あるいは死につつあるサンゴ礁を復活させることができるとみています。

スピーカーで魚をサンゴ礁に呼び戻しても、サンゴ礁の損傷自体は回復しないと研究者は認めています。しかし、Gordon氏は「健全なエコシステムを機能させるには、サンゴ礁にとって魚は重要です。このような方法で魚の数をブーストさせることは、世界中で見られるサンゴ礁のダメーシを中和し、自然の回復プロセスのよいキックスタートになります」と考えを述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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