ゲノム編集技術「CRISPR」によって滅びゆくサンゴを救うことができるかもしれないという研究結果

by USFWS - Pacific Region

地球温暖化による海温の上昇などによって、サンゴ礁が自然による回復も追いつかないスピードで死滅・白化し、絶滅の危機にあると指摘されています。スタンフォード大学の研究チームは、このサンゴ礁崩壊の連鎖を遺伝子編集技術であるCRISPRで食い止めることができるのではないかと予測しています。

CRISPR used to genetically edit coral, researchers report
https://phys.org/news/2018-04-crispr-genetically-coral.html


CRISPR/Cas9-mediated genome editing in a reef-building coral | PNAS
http://www.pnas.org/content/early/2018/04/19/1722151115


「海のオアシス」と呼ばれるサンゴは、さまざまな生き物のすみかになるだけでなく、海中の二酸化炭素濃度調節に不可欠な存在で、非常に貴重な種です。しかし近年、地球温暖化による海水温上昇ごみの影響によって世界的に死滅・白化が進んでいて、サンゴの生態系は27%が既に失われていると言われています。


滅びゆくサンゴ礁を守るべく、ストレスに対するサンゴの反応やサンゴの生物学的側面の研究が行われ、特定の遺伝子や分子経路が関係しているのではないかという仮説が示されてきました。しかし、サンゴの遺伝子を改変する手段がなかったため、これらの仮説を実験によって厳密に検証することができませんでした。そこで、スタンフォード大学の博士研究員であるフィリップ・クリーブスさんは、これまでの研究で示唆されてきた仮説を実証するためには、遺伝子編集技術「CRISPR/Cas9」が利用できるのではないかと考えました。

CRISPR/Cas9は、Cas9と呼ばれる酵素とガイドRNAと呼ばれるリボ核タンパク質(RNP)を用いた遺伝子編集技術です。ガイドRNAの配列を設計することで、狙った場所をピンポイントに編集することが可能となる技術です。

by NIH Image Gallery

クリーブスさんの研究チームは、線維芽細胞増殖因子(FGF1a)・緑色蛍光タンパク質(GFP)・赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するような遺伝子配列を標的としたCRISPR/Cas9のRNPをサンゴの受精卵に注入したとのこと。FGF1aは幼生の変態・着生に関わるタンパク質で、GFP・RFPは蛍光性を持つタンパク質であるため、これらの遺伝子に変異が起こると目に見える形で変化が現れるというわけです。

その結果、RNPを注入したサンゴ受精卵のおよそ50%に遺伝子の変異が見られ、さらに変異した遺伝子の発現が数回の細胞周期にわたって継続することが示されました。クリーブスさんは今回の研究から、CRISPR/Cas9がサンゴにも応用できる技術であり、これまで仮説どまりでしかなかったサンゴの遺伝学的研究を進めるための重要なツールとなり得ると主張しています。

by Angélica Portales

クリーブスさんは「もちろん今回の実験は、遺伝的に強力な『スーパーサンゴ』で海を埋め尽くすことが目標ではありません。今私たちが本当にやりたいことは、サンゴの基本的な仕組みを理解し、将来の保全活動に役立たせることです。今回の実験は、私たちが総力をあげてサンゴを絶滅から守るための第一歩です」と語っています。

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