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大人たちが「最近の若者はダメだ」と思ってしまう理由が研究によって判明

by Renato Abati

上の世代が若い世代について「最近の若者は……」と批判することは珍しくありませんが、実際には「若者は親世代よりも模範的である」というデータも示されているなど、客観的に若者世代が上の世代に劣っていることを客観的に示す証拠はありません。一体なぜ、大人たちが「最近の若者はダメだ」と思い込んでしまうのかについて、カリフォルニア大学の研究チームが実験を行ったところ、「大人たちには下の世代が劣っていると考えやすい心理的効果が存在する」ことが明らかになりました。

Kids these days: Why the youth of today seem lacking | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/10/eaav5916

Society's tendency to denigrate kids these days is a 'memory tic,' says cognitive scientist
https://phys.org/news/2019-10-society-tendency-denigrate-kids-days.html

New Review Questions Why 'Kids These Days' Seem So Bad, Finds They're Not The Issue
https://www.sciencealert.com/major-study-reviews-why-kids-these-days-are-so-difficult-turns-out-they-aren-t-the-problem


人々は古くから若者批判を行ってきたといわれており、カリフォルニア大学の心理学者であるJohn Protzko氏は、「人間は少なくとも2600年間にわたり、『最近の若者たち』に対する苦情を言ってきました」と述べています。Protzko氏は上の世代が若者世代を批判しがちな現象について調べるため、まずは3つの実験を行いました。

まず1つ目の実験では、1824人のアメリカ人を対象にして、「最近の若者が上の世代に対して礼儀正しいと思うか、それとも無礼だと思うか」を調査しました。そして、2つ目の実験では「最近の若者が上の世代より賢いか、賢くないか」が尋ねられ、3つ目の実験では「最近の若者は読書を好んでいるか、読書を嫌っているか」が尋ねられたとのこと。


その結果、3つの実験全てにおいて、「参加者が自身の特性を高く評価すればするほど、若者のことを低く評価する」という傾向が明らかになりました。つまり、「自分が年長者を尊重している」と考えている人は若者を無礼だと思い、「自分が賢い」と思う人は若者を愚かだと思い、「自分は本をよく読む」と信じる人は若者が読書嫌いだと思いがちだったことが、実験の結果から判明したそうです。

実際には「若者が上の世代よりも読書離れしているという事実はない」という研究結果があるほか、世代が新しくなるにつれてIQが上昇していく「フリン効果」の存在も指摘されています。そのため、実験において参加者が若者世代を低く評価したことについて、「参加者が客観的な真実を取り上げているわけではありません」とProtzko氏は述べました。

by Pixabay

さらに上の世代が若者世代に持つバイアスについて調べるため、Protzko氏は新たに2つの実験を行いました。4つ目の実験では、基本的に3つ目の「最近の若者は読書を好んでいるか、読書を嫌っているか」を尋ねる実験を再現し、加えて「今現在の自分はどれほど読書を楽しんでいるか」「子ども時代はどれほど読書を楽しんでいたか」「子ども時代、周囲の子どもたちのうち何人ほどが読書を楽しんでいたか」を尋ねました。

すると、自分自身が本をたくさん読んでいて、子ども時代に読書を楽しんでいたと考えている人々は、他の参加者よりも「子ども時代には多くの子どもたちが読書を楽しんでいた」と答える傾向がみられました。この結果についてProtzko氏らは、人々が子ども時代を「誤って記憶している」ことに起因すると主張します。子どものころから読書が好きだった参加者は、周囲の子どもたちが読書をしていたことを記憶している可能性が高く、当時の読書の楽しさについてバイアスがかかっている可能性があるそうです。

研究チームは5つ目の実験で、1500人の新しい参加者に対して読解力テストを実施し、参加者にフィードバックを与えました。しかし、テスト結果のフィードバックは研究チームが操作したもので、実際のテスト結果とは関係なく、ランダムに「あなたは全体の上位15%でした」もしくは「あなたは全体の下位15%でした」という結果が伝えられました。その後、4つ目の研究と同様の質問を行ったところ、読解力が低いと告げられた参加者は、「若者世代は読書嫌いである」という偏見が少なく、子ども時代に読書好きだった友人を思い出しにくい傾向がみられたそうです。つまり、現在の自分自身に対する評価が、若者世代への評価や過去の記憶に影響することが確認されたというわけです。

by Pixabay

5つの実験の結果から、Protzko氏は「心理的・精神的トリックがあるため、各世代は次の世代が劣っているように感じられます」と主張。研究チームはこの心理的効果を、「the kids these days effect(最近の若者たち効果)」と名付けています。「あなたは現在の自分の状態を、自身の記憶に反映してしまいます。そのため、若者世代の『衰退』が私たちにとって客観的なものに思えてしまうのです」と、Protzko氏は述べました。

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in メモ,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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