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南極圏の海で泳いだ人が語る「マイナス3℃の海で泳ぐと体と心がどうなるのか」


ルイス・ピューさんは気候変動による極地の氷の融解や、生態系の変化などの問題を訴えるために世界の海で泳ぐという活動を行っており、国連から初の「海洋保護者」として認定を受けた人物です。そんなピューさんが、南極圏のマイナス3℃の海で泳いだときの体験について報告しています。

What it feels like to swim in sub-zero waters | 1843
https://www.1843magazine.com/travel/taste-the-fear/what-it-feels-like-to-swim-in-subzero-waters

ピューさんが2017年11月に挑戦したのは、南太平洋に位置するイギリス領サウスジョージア島近郊での1kmの遠泳です。

サウスジョージア島の位置は以下。ゾウアザラシやオットセイ、オウサマペンギンの生息地で、4月から11月にかけては、平均気温が0℃を下回るという寒帯です。



ピューさんはサウスジョージア島での水泳に挑戦するため、まずは肉体改造から始めました。脂肪と筋肉は断熱材として優れるため、ヘビー級のレスラーのようなボディになるまで鍛えたとのこと。そして、挑戦の前の週にはフォークランド諸島近郊の水温約6℃の海水で「慣らし」を行い、冷たい水に体を慣れさせたそうです。

そうして迎えた本番当日、ピューさんはまずはカヤックで周囲の状況を確認して、泳ぐルートと野生動物の位置を確認しました。ピューさんがこの寒中水泳のために装着したのは、Speedoの水着とキャップにゴーグルのみ。寒中水泳では体の熱を保持するためにワセリンなどの油を体に塗布するという手法がありますが、油の匂いがシャチなどの大型肉食獣やアザラシをおびき寄せる危険性があるため、ピューさんは肌になにも付けませんでした。

氷点下の海に飛び込んだピューさんが感じたという水の冷たさを、ピューさんは「火の上で燃やされているよう」と表現しています。しかし、マイナス3℃での水中における本当の危険とは、凍死ではなく溺れることとのこと。水に入ってから5秒以内に体はショック状態になり、呼吸が困難になり始めます。ピューさんは「泳ぎだしてから考えられた唯一のことは、『1、2、息継ぎ、3、4、息継ぎ』という風に、ストロークの回数と数えることだった」と語っています。氷点下の水の冷たさは、筋肉を硬直させて、体全体を震わせ、「水をかいて腕を前に出すことがどんどん難しくなる」とのこと。


泳ぎ切るまでの最後の150m、ピューさんの視界には海岸で日光浴しているゾウアザラシの群れを見つけたとのこと。ゾウアザラシは全長6.5m、体重は5トンにまで達するという大型肉食獣で、陸上では鈍重ですが水中はパワフルかつなめらかに泳ぐことができます。

安全のためにカヤックでスタンバイしていた随伴者がピューさんの下方にゾウアザラシを1匹発見していたそうですが、「泳いでいるピューさんに恐怖が伝染する」という理由で、随伴者は努力して平静を保っていたとのこと。

by Casey Youngflesh

見事1kmを泳ぎ切ったピューさんの体は「明るい紫色」をしており、血管が脈打っているのが見え、舌は凍り付いて話せなかったそうです。冷たい水の中に長時間身を置いた後では、水から出た後でも全身の体温が下がり続けてしまいます。その理由は生命活動を維持するため、血液が重要な臓器に流れ込んだ後、冷えた手足を通ってから心臓に戻るためです。

ピューさんは低温の水から脱した後、体がショックを受けないようにぬるいシャワーを浴びたとのこと。ピューさんの体温は、危険な温度を脱するまでに約30分、通常の体温に戻るまでに約50分かかったそうです。


ピューさんはこれまでも水産資源の保護などを訴えるため、北極海や標高5300mの氷河湖で水泳を行っています。ピューさんがこの活動を始めたときには、生態系を破壊するほどの乱獲から保護されていた島はフォークランド諸島やサウスジョージア島などのわずか2%だったとのこと。ピューさんによると、現在では23%が乱獲から保護されるようになったそうですが、ピューさんは「逆にいえば77%が保護されていないんだ」と語っています。

ピューさんが北極海や標高5600mのエベレストの氷河湖で泳いだときの体験記は、TEDで視聴することが可能です。

ルイス・ピュー:北極海での水泳



ルイス・ピュー:意識を変えるためのエベレスト水泳

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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