毎年アルプス山脈の全氷雪の3倍に相当する氷河が失われている

by Denis Linine

1961年から2016年までの55年間に地球上から失われた氷河は合計で9兆トンにも及ぶとの研究結果が、2019年4月8日に科学誌Natureに掲載されました。数字が大きすぎて9兆トンといわれてもピンと来ませんが、ジャンボジェットとも呼ばれるボーイング747型旅客機に換算すると270億機分にも相当すると、海外メディアMashableは伝えています。

Global glacier mass changes and their contributions to sea-level rise from 1961 to 2016 | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1071-0

The ice lost by Earth's glaciers weighs as much as 27 billion 747s
https://mashable.com/article/glaciers-melting-climate-change/

55年間で9兆トンもの氷が地球上から失われたとの研究結果を発表したのは、チューリッヒ大学で地理学を研究するミヒャエル・ゼンプ博士らの国際研究チームです。研究結果によると、毎年平均して3350億トンの氷が融解しており、これはアルプス全体の氷の3倍にも相当するとのことです。

以下の画像はゼンプ博士の論文を元に欧州宇宙機関が作成したもので、1961年～2016年の間に失われた氷の分布を地図上に表したものです。

アラスカでの氷の減少が特に著しく、他の地域の2～3倍の速度で融解しているとのこと。NASAの研究によると、もしこのまま地球温暖化が進めば2100年ごろには海面は2～3フィート(約60～90㎝)も上昇する見込みだとのこと。もっとも、これは比較的穏やかなシミュレーションによるもので、最悪の場合は6フィート(約1.8m)以上も海面が上昇するとの見方もあります。

by therapysessions

氷が溶けると、単に海面が上昇するだけではありません。海は地球上で発せられた膨大な熱を吸収する働きをもっており、人類が温室効果ガスを発生させて上昇させた気温の90％を海が吸収しています。海が熱を吸収し海温が上昇すればさらに氷が溶けやすくなるのは想像に難くありませんが、海は熱だけでなく二酸化炭素も吸収しており、温度が上昇すると吸収できる二酸化炭素が減少します。つまり、地球温暖化により海の氷が溶ければ溶けるほど地球温暖化は加速度的に進行していくというわけです。

地球温暖化の影響は深刻な領域に達しようとしています。アメリカの非営利団体Berkeley Earthで主任研究員を務めるロバート・ローデ氏はTwitterで1850年から2018年までの地表温度の推移をアニメーション化したムービーを公開しています。

ムービーは1850年からスタートします。横軸が地表の温度を、縦軸がその温度が占める地表の面積の割合を表しています。

それから約100年ほど地表の温度は一進一退を続けますが、1940年代に入るとだんだん温度が上昇を続けるようになり、棒グラフが右に動き始めます。

2000年代に入ると目に見えて温度が高くなります。

そして2018年には棒グラフが一番右に寄りました。平均気温を表す左上の折れ線グラフを見ると、ほぼ右肩上がりに気温が上昇しているのが分かります。

NASAの海洋学者ジョシュ・ウィリス氏はMashableの取材に対し、これらの劇的な変化が決して自然の気まぐれではないとの考えを示し、「地球温暖化は明らかに人類による温室効果ガスの排出が原因です」と語っています。