ここ20年でグリーンランドの氷は予想を超える勢いで解けていることが明らかに

北極海と北大西洋の間にある世界最大の島「グリーンランド」はおよそ220万平方キロメートルの面積を持ち、その陸地の8割以上は氷床と万年雪に覆われています。そんなグリーンランドの氷床が少なくともここ350年では前例がないほどの速度で溶けていると報告されています。

Nonlinear rise in Greenland runoff in response to post-industrial Arctic warming | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0752-4

Greenland is melting much faster than we thought | Popular Science
https://www.popsci.com/greenland-ice-sheet-melting-fast

2012年にはグリーンランドの氷床表面のおよそ97％が融解して泥と化している上に、地球の海面水位が1mm以上上昇したことも明らかになっていて、グリーンランドの氷河融解は世界的にも大きな問題となっています。また、アメリカ航空宇宙局(NASA)は2015年にグリーンランドの氷床が減少傾向にあり、2004年から2015年までの11年間でおよそ2500ギガトンの氷が融解したことを明らかにしていました。

世界中で海面が上昇しまくり＆氷の島グリーンランドは溶けまくりであることがNASAの調査で明らかに - GIGAZINE

ローワン大学で氷河を研究しているLuke Trusel氏率いる研究チームは、グリーンランドの氷床や氷河で海抜6000フィート(およそ1800メートル)に当たる地点で氷の掘削を行いました。そして、掘削して得られた氷のコアを構成する層の物理的・化学的特性を測定し、過去350年間にわたるグリーンランドの氷の溶けやすさを調査しました。

研究チームによると、グリーンランドで調査した全ての氷のコアで溶けやすさが増加していたとのこと。特に過去20年間における氷の溶けやすさは、19世紀中頃に起こった産業革命以前と比べて250～575％増加していたそうです。また、産業革命以後に氷床の流出量は50％増加し、20世紀だけで見ると33％も増えていることが判明しました。この調査結果から、グリーンランドの氷が溶けやすくなったのは「人間の活動による急激な地球温暖化」が大きな原因の1つだという説がより強化されることとなります。

もちろん、グリーンランドの氷河の融解が加速している原因は地球温暖化だけではなく、研究チームは「グリーンランドの氷の溶けやすさが加速しているのは、複数の要因が合わさったことによるもの」としています。その要因の1つに「氷河のアルベド(太陽光の反射率)のフィードバック」があると主張しています。氷河の表面が溶けてしまうとアルベドが下がってしまいますが、アルベドが下がることで太陽熱の吸収率が上がり、余計に氷河の融解が促進されてしまいます。この「アルベドのフォードバック」が起こると、氷河の融解は歯止めがきかないといわれています。一度溶けた氷河が冬に再凍結したとしても、氷の純度や透明度も下がってしまい、翌夏に再び溶けた時に氷床のヒビや割れ目にしみこみ、氷河を根元から融解してしまうとのこと。

by Markus Trienke

Trusel氏は「グリーンランドには地球全体の海面を23フィート(約7メートル)上昇させるだけの氷を抱えています。その氷すべてが今すぐ溶けてしまうというわけではありませんが、氷が溶けていくことでどういう変化が起こるのかを考えることは、沿岸地域の生活リスクを評価する上で重要です」と語っています。アメリカ人の40～50％は海岸沿いに居住しているため、グリーンランド由来の海面上昇の影響は大きいとTrusel氏は見ています。

ウッズホール海洋研究所の氷河学者であるSarah Das氏は「今以上に温暖化が進むと、今までの倍以上の氷を失うことになるでしょう。そして、より大量の氷の融解は、より早い海面上昇率につながります」と語っています。

Trusel氏とDas氏は、グリーンランド以外に南極などの地域で氷のコアを掘削することで、今回の調査結果をさらにフォローアップしたいと述べています。また、Das氏は「未来は私たちの手にあります。温室効果ガスの排出を減らすために措置を講じることで、将来の温暖化を抑制し、氷河や氷床の融解による海面上昇のリスクを大幅に減らすことができます」と語っています。