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YouTubeの規制基準があいまいすぎて教育目的のチャンネルが一部撤退を表明

by pxhere

YouTubeにセキュリティ対策講座やSTEM教育用のムービーを投稿していたセキュリティ研究者のコーディ・キンジー氏が、「YouTubeのポリシーの変更により、教育的なムービーが投稿できなくなった」として、YouTubeでの活動方法を見直すとの考えを表明しました。

Ethical hacking channel Null Byte outlines changes in response to YouTube’s ambiguous anti-infosec rules
https://reclaimthenet.org/null-byte-limited-content-youtube/

コーディ・キンジー氏は、コンピュータサイエンスに関する講座などのムービーを公開しているYouTubeチャンネル「Null Byte」のオーナーです。キンジー氏は2019年7月にも、ハッキングの手法について取り上げているムービーが「『有害で危険なコンテンツ』にあたる」との理由でアカウントが凍結される自体に直面しています。この時は、「教育が主な目的なものは例外なはずだ」との指摘により、YouTubeが誤りを認めたことでアカウントの凍結が解除され、Null Byteは活動の再開にこぎつけていました。

キンジー氏のYouTubeチャンネルが一時閉鎖される瀬戸際となった経緯は以下の記事を読むと一発で分かります。

YouTubeの「ハッキング講座禁止令」の余波で良質なセキュリティ対策ムービーが軒並み削除されかける事態に - GIGAZINE

by nd3000

凍結が解除されて以降、月に3~4本ペースでの精力的なムービー投稿を再開していたNull Byteですが、8月24日にQRコードを介したハッキング手法を解説したムービーを投稿したのを最後に、投稿が途絶えていました。

その後、キンジー氏は10月13日に入り約1カ月半ぶりに「YouTubeの新しいポリシーと新作について」と題したムービーを投稿。

Update: New YouTube Policy & Exciting Episodes to Come! - YouTube


1分半程度の短いムービーでキンジー氏は「視聴者の中には、我々が1カ月以上もムービーを投稿せず、また過去に投稿したムービーがいくつか削除されていることに気がついた方もいることでしょう」と切り出し、アカウントの凍結が解除された以降も厳しい規制が続いていることを明らかにしました。


また、キンジー氏は「2019年のYouTubeのポリシー変更がその理由です」と述べて、もはや教育を目的としたものであっても、ハッキングやフィッシング詐欺の手法について取り扱ったムービーは投稿することができなくなっていると指摘しました。


こうした状況を踏まえ、キンジー氏は「慎重に対応を検討した結果、YouTubeには短縮版をアップロードし、詳細な内容は我々のウェブサイトで公開することにしました」と述べて、YouTubeには核心部分に触れるムービーを投稿しないとの方針を打ち出しました。

事実、10月15日に投稿された最新のムービーには、説明欄に「詳細については、こちらの記事を参照してください」とのリンクが張られており……


リンクにアクセスすると、ムービーではなく画像で講座の内容を説明したNull Byteのページが表示されました。


IT情報メディアReclaim The Netは、「キンジー氏の発表は、ここ数カ月の間に多くのクリエイターが、同様の形でビジネスモデルを変更するか、YouTube以外に活躍の場を見いだすことを余儀なくされた事例の後に続くものです」と指摘しました。

例えば、第一次世界大戦の歴史について取り扱うYouTubeチャンネル「The Great War」も10月に入り「大量のムービーの収益化が解除されてしまったので、今後はファンからの直接の寄付に頼らなければなりません」と発表しています。


また、歴史学の教師であるスコット・オルソップ氏も、ナチスの台頭や歴史的背景などについて論じたムービーが「ヘイトスピーチ」として削除されてしまったことを明かし、「15年間積み上げてきた資料が突然消えてしまいショックです」とツイートしました。


さらに、教育者ではありませんが、「世界初のプロYouTuber」として知られるコーリー・ウィリアムズ氏も8月に「ここ最近のアルゴリズムの変更により視聴者が96%も減少してしまい、生計が立てられなくなった」と述べて、10月いっぱいで14年間にわたる活動の歴史に幕を下ろすと表明しています。

I'm Saying Goodbye To YouTube After 14 Years | The World's First Professional YouTuber - YouTube


Reclaim The Netは「ルールはあいまいなまま放置されており、多くのクリエイターは、一体どんなタイプのコンテンツなら容認されるのか確信が持てないでいます」と指摘し、曖昧なルールを運用し続けるYouTubeの姿勢を非難しました。

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