500年以上前に「実現不可能」といわれたダ・ヴィンチ設計の当時世界最長の橋を3Dプリンターで再現
500年以上前に「実現不可能」として建造されることなく終わった、レオナルド・ダ・ヴィンチ設計の当時としては世界最長の橋を、3Dプリンターで再現するという研究が行われました。現代の技術でダ・ヴィンチの橋を詳細に分析したところ、橋は留め具やモルタルなどを一切使用していないにもかかわらず、問題なく機能したことが明らかになっています。
Engineers put Leonardo da Vinci’s bridge design to the test | MIT News
https://news.mit.edu/2019/leonardo-da-vinci-bridge-test-1010
Da Vinci bridge design holds up even after 500 years, MIT proves - CNET
https://www.cnet.com/news/da-vinci-bridge-design-holds-up-even-after-500-years-mit-proves/
1502年、オスマン帝国の第8代皇帝であるバヤズィト2世は、トルコ・イスタンブールの中心地とガラタ地区の間を流れる川にかけるための橋の設計を望んでいたとのこと。この時代、鉄筋やアスファルトといった現代の橋を建造するのに欠かせない建築材料は存在しませんでしたが、当時の有名な芸術家であり優れた発明家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチは、さらに木板やモルタルすらも使わずにバヤズィト2世が求めていた橋を設計したそうです。
ダ・ヴィンチは当時としては世界最長となる790フィート(約241メートル)の橋を設計しましたが、この橋の建造は「実現不可能」ということでバヤズィト2世から却下されたため、実現することはなかったそうです。しかし、設計から500年以上が経った2019年になって、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院生であるKarly Bastさんが、橋の1/500サイズのスケールモデルを作成して「ダ・ヴィンチの橋は実現可能なものであったこと」を証明しています。
ダ・ヴィンチが設計した橋の図面が左上の写真で、右下にあるのがBastさんらがスケールモデルを作るために引いた図面。
Bastさんは建築および土木関連の環境工学を教えるJohn Ochsendorf教授や、MITの大学生であるMichelle Xieさんと協力し、利用可能な文献や材料、建設方法を分析して、ダ・ヴィンチの設計した橋が実現可能なものかを分析しました。
さらに、研究チームはダ・ヴィンチの設計した橋の1/500サイズのスケールモデルを作成しており、最終的に橋は126個の個別のブロックを組み合わせることで完成したそうです。研究チームはスケールモデルを用い、長年疑問となってきた「実現可能な構造なのか?」をテストしており、特別な機構なしで「ブロックを組み合わせるだけ」で橋を組み立てることに成功しています。
橋は半円状のアーチ状になっています。当時、200メートルもの長い橋を作る場合、橋本体を支えるために10本以上の柱が必要でした。しかし、ダ・ヴィンチの橋には支柱は一切存在しなかったため、当時としては「信じられないほど野心的な構造でした。また、ダ・ヴィンチの橋は当時のスタンダードな橋の約10倍の長さがありました」とBastさんは語っています。
橋を構成する各ブロックはそれぞれのブロックが持つ自重と、放物線上に組み合わされることによって各ブロックにかかる圧力のみで保持されるそうです。初めは各ブロックにかかる圧力がすべてにまんべんなく伝達されているわけではなかったそうですが、最後にキーストーンを入れることで橋が構造として成り立つことに気づいたとBastさんは語っています。このダ・ヴィンチの橋について、Bastさんは「(橋の鍵となるのは)幾何学の力です」と述べました。
ダ・ヴィンチの設計した橋の1/500サイズのスケールモデルを作成したBastさん。スケールモデルは3Dプリンターで出力した126個のブロックを用いて作られており、作成にかかった時間は約6時間とのこと。
なお、Bastさんは「時間がかかりましたが、3Dプリンティングにより非常に複雑な形状を正確に再現することができました」と語り、3Dプリンターを用いてダ・ヴィンチの橋のスケールモデルを作成したことを明かしています。さらに、「最高のアイデアを思いつくために必要なのは、必ずしも派手なテクノロジーではありません」と語り、ダ・ヴィンチの橋がローマ時代の石橋のように留め具やモルタルなしで作れる橋であった点に、ダ・ヴィンチの発明者としての才能の一端が現れていると強調しています。
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