機密厳守で有名なスイスの金融機関も「顧客情報を外国と交換する」方針にシフトしている

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刑事告訴などを例外として、銀行が所持している顧客情報を政府機関に提供することを禁じるスイス銀行法によって、スイス銀行は匿名性が高く秘密厳守な金融機関として有名です。しかし近年では脱税を防ぐ国際的な取り組みが強化され、スイスの金融機関も外国人が保有する銀行口座のデータを他国に引き渡す方針にシフトしています。

Switzerland in the age of automatic exchange of banking information - SWI swissinfo.ch
https://www.swissinfo.ch/eng/financial-transparency_switzerland-in-the-age-of-automatic-exchange-of-banking-information/45234706

世界経済のグローバル化とサービスのデジタル化に伴い、他国の銀行に口座を開設して資産を預けることが容易になってきています。これにより、資産を海外に移すことで課税を逃れようと試みる人々が増えており、国際的な脱税は大企業の多い富裕国だけでなく、もともと税収の少ない国々にとっても深刻な問題です。

この問題を解決するため、経済協力開発機構(OECD)は2014年にEUやG20の支援を受け、各国の金融機関にある外国人の金融資産データを政府同士で交換する海外口座情報交換制度を策定しました。制度に参加する国は他の参加国に対し、他国の納税者が持つ自国内の金融資産について、定期的に情報を提供することが義務づけられ、各国内の金融機関も政府に対して情報を提供するように定められています。

この制度に遵守しない国々はOECDおよびEUのブラックリストに追加され、制裁措置がとられるとのことで、タックス・ヘイヴンに終止符を打ち、全ての金融機関に公平な競争をもたらすとされています。これまでに100を超える国々が口座情報交換制度に加盟しており、一部の国々では2017年から情報の交換を開始していました。

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各国が送信し合う情報には、口座番号や納税者番号、名前、住所、納税者の生年月日、収入の種類、口座残高といったものが含まれます。参加国は受け取ったデータについて、税務の取り立て以外の目的で使うことを禁じられているとのこと。

スイスは長年にわたって各国からの圧力に屈せず、金融機関の顧客の機密を守る方針をとってきました。しかし、議会はスイスの金融センターとしての評判と競争力を維持する必要があるとして、海外口座情報交換制度への加盟を決断しました。また、海外口座情報交換制度に参加しなければG20およびEU加盟国からの制裁が科されるおそれがあり、この点も加盟の後押しとなったと考えられています。

2018年には初めて海外口座情報交換制度に基づいた情報交換が行われ、スイスの金融機関から収集された外国人の金融資産データが、36カ国に送信されました。データの送信対象となる国々は今後も拡大していき、2021年には100カ国を超えるとみられています。

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スイスが海外口座情報交換制度に参加することに対する懸念として大きかったのは、「透明性を向上させることにより、外国人の顧客が持つ金融資産が流出するのではないか？」という点でした。しかし、海外口座情報交換制度への参加が表明される以前の2013年から、海外口座情報交換制度への参加が発表され、実際に情報交換が始まった2018年までの期間中に、金融資産の大規模な流出はありませんでした。むしろ海外の人や企業がスイスに所有する資産の総額は、2013年の1兆9700億スイスフラン(約214兆7000億円)から、2018年の2兆2700億スイスフラン(約247兆4000億円)へ増加しているとのこと。

さらに、海外口座情報交換制度はスイスの財源を増加させる役にも立っています。海外口座情報交換制度がスタートして以降、スイスの納税者らが自発的に海外の金融資産について申告してきたそうで、合計で440億スイスフラン(約4兆8000億円)もの金融資産が外国に存在すると発覚。政府や自治体は約40億スイスフラン(約4300億円)もの税収をさかのぼって徴収できたそうです。

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