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企業が「税金逃れ」で使うタックスヘイブン、世界で最も人気な土地はアメリカ合衆国

By Pictures of Money

外国資本や外貨を獲得する為、意図的に法人税をゼロにしたり極めて低い税率設定したりして、企業や富裕層の資産を誘致している国や地域を「タックスヘイブン」と呼びます。タックスヘイブンはモナコ・スイス・ドバイ・ケイマン諸島など世界中に存在し、特にケイマン島は映画でも扱われるほど有名です。しかし、実は今タックスヘイブンとして人気の国第1位はそのいずれでもないことが分かっています。

The World’s Favorite New Tax Haven Is the United States - Bloomberg Business
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-01-27/the-world-s-favorite-new-tax-haven-is-the-united-states

日本の大企業・富裕層がタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れを行っていることが大きな話題にもなっていますが、アメリカでも、数年前から大企業や一部の富裕層が税金逃れにタックスヘイブンを利用していることが問題視されてきました。世界的にもタックスヘイブンが注目されるようになり、経済協力開発機構(OECD)が多国間での自動的情報交換の基準を定める動きを見せていますが、アメリカではこれに抵抗して外資を隠しておくための新しい銀行が登場している模様。

世界有数の投資銀行である「ロスチャイルド」は、ネバダ州のリノに信託銀行を開き、バミューダなどのタックスヘブンに資金を隠し持っていた海外顧客の資金を、同銀行に移動させています。これは、OECDによる新しい情報交換基準に対抗するための施策なわけですが、なぜリノの信託銀行に資金を移せば安全なのかというと、ネバダもといアメリカはOECDの新しい情報交換基準が適用外となる地域なためです。

ロスチャイルドのアンドリュー・ペニー代表は「顧客の資金をアメリカに移動させれば良いのさ。そうすれば無課税となり、政府からも隠すことができる」とアメリカが現在世界的に見てもとても有用なタックスヘブンになっていることを語っています。ロスチャイルドと同様に、世界最大級の国際投資信託であるTrident Trustなども、多くの口座をスイスやケイマン諸島からアメリカに移動させているとのこと。サウスダコタ州にあるTridentの支部で代表を務めるアリス・ロカー氏は、「スイスにあった銀行口座の多くから資金がなくなってしまったことにはとても驚きました」と、OECDの新基準に備えて多くの人々が資金を移動させていることについて語っています。アメリカやスイス、その他の地域でも、資金を隠しておくための秘密口座は、本国からの差し止めを防ぐことが期待されるわけですが、現在多くの富裕層がアメリカの口座が最も安全と感じているというわけです。


もちろん、誰も全てのタックスヘイブンがなくなるとは考えていません。それを示すように、スイス銀行はスイス国内の隠し口座に1兆9000億ドル(約230兆円)もの資金を残したままである、とカリフォルニア大学バークレー校で経済学の教授を務めるガブリエル・ザックマン氏は推測しています。また、OECDが進める自動的情報交換の基準に賛同しない国や地域は、アメリカ以外にも複数あります。

By thetaxhaven

過去、アメリカではタックスヘイブンを使った大規模な税金逃れが問題視されてきました。2007年にはUBSグループAGの銀行家であるブラッドリー・ビルケンフェルト氏が、UBSグループAGがアメリカ人顧客の脱税を手助けしていたことを密告し、同社を含む80を超えるスイスの銀行がアメリカ政府に対して約50億ドル(約5900億円)の賠償金を支払うことになりました。

こういった事態を防ぐため、アメリカでは2010年に雇用関連法の一部として「FATCA」が施行されました。これは、アメリカ人による外国金融機関を利用した租税回避行為を防止するための法で、米国外金融機関に顧客口座の報告義務を課す、という税制です。このFATCAにインスパイアされて、OECDが立案したのが他の国々も租税回避行為を行っている人物を特定しやすくなる、という新しい情報交換基準です。これは、2014年に97の加盟地域が賛同する形で合意に至りましが、OECD加盟国の内、バーレーン・ナウル共和国・バヌアツ共和国、そしてアメリカだけは同意していません。

アメリカ財務省はOECDの新基準に賛同しないことについて「アメリカはオフショア口座を使った国際的な脱税対策でリードしている」とコメントし、OECDの新基準はFATCAをベースに作られたものである(ので同意する必要はない)としています。しかし、金融アドバイザーであるBolton Global Capital(顧客の租税回避を支援する企業)のレイ・グルニエCEOは、自社の顧客に対して「アメリカがOECDの新基準に同意しなかったことは、我々のビジネスを強く支持することにつながるのは明らかだ」とメールしています。なお、Bolton Global Capitalは海外に保有していた口座をアメリカに移動させており、グルニエCEOはOECDの新基準は「スイスの銀行から外資が流出する始まりだった」とインタビューの中で答えています。

By West Midlands Police

アメリカ財務省はOECDの情報交換基準とよく似た基準を提案したこともあるのですが、これらは銀行業に深い関わりを持つ共和党員の反対で却下されています。問題は、アメリカ国外の民間人が租税回避できてしまうという点だけではありません。アメリカ財務省は、アメリカ国内に作られた秘密口座に、犯罪組織から大規模な資金が流入してくることを懸念している模様。国連推計によると、毎年少なくとも1兆6000億ドル(約190兆円)もの違法な資金がマネーロンダリングされており、これらが一気にアメリカに流れ込んでくることを財務省は恐れているというわけです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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