数学が得意でも自信がなければ収入には結び付かないという研究結果

by diego_cervo

多くの識者が「自分の頭で数学が解けなくなることには多くの弊害がある」と警告していますが、数学の成績とそのことへの自信に関する2つの研究から「数学のスキルと自信の両方を備えていないと、収入や健康には結び付かない」ことが判明しました。

Despite high objective numeracy, lower numeric confidence relates to worse financial and medical outcomes | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/09/05/1903126116

Good at math? It means little if you’re not confident
https://news.osu.edu/good-at-math-it-means-little-if-youre-not-confident/

People that are good at these two things earn $94,000 more a year
https://www.theladders.com/career-advice/people-that-are-good-at-these-two-things-earn-94000-more-a-year

数学の能力に対する自己効力感に関する2つの実験により、数学の能力だけでなく、そのことに自信を持っていることが重要だということを突き止めたのは、オハイオ州立大学の心理学教授であるエレン・ピーターズ氏らの研究グループです。

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◆数学のスキルがあっても自信がないと経済的に不利
研究グループはまず、南カリフォルニア大学がオンラインで実施した社会調査「Understanding America」の参加者から4572人を選出し、数学のテストを受けてもらいました。また同時に、数学スキルに自信を持っているかのアンケートを実施し、テストやアンケートの結果が、参加者の経済状況とどう結び付いているかを分析しました。

その結果、「数学のスキルが高くて自信もある人」は「数学のスキルは高いが自信がない人」に比べて、年収に換算すると9万4000ドル(約1015万円)相当の経済的な優位性を持っていたとこのこと。この結果は、実際に年収が9万4000ドル高かったという意味ではなく、クレジットカードの使用状況やローンの有無、投資の運用状況などから総合的に算出したものですが、かなりの差がついていることうかがえます。

ピーターズ氏はこの結果について「数学に自信がない人は、根気強く問題に取り組まない傾向があります。その結果、数学のスキルが発揮されず、大きな差となって表れたのではないでしょうか」と推測しています。

◆自信があっても、実力を伴わなければ無意味
研究グループは次に、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターで全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を受けている91人の患者に対して、同様に数学のテストと自信に関するアンケートを行いました。

SLEとは、なんらかの原因により全身性の炎症性臓器障害を起こす自己免疫疾患のことで、根本的な治療法がない一方、少量のステロイド薬を安定して服用し続けることである程度症状をコントロールすることが可能な病気です。

研究グループがSLE患者らの症状の勢いである疾患活動性と、数学テストやアンケートの結果とを照らし合わせて分析したところ、「数学のスキルが高くて自信もある人」の疾患活動性が高い割合は7％しかありませんでした。一方で、「数学のスキルはないが自信だけはある人」では、疾患活動性が高い割合が44％もありました。

ピーターズ氏は「薬の効果とリスクを正しく理解して用法と用量を守ったり、健康保険などの制度を活用して適切な治療を受けたりして難しい病気と付き合うには、優れた数学スキルが求められます」と話しました。

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2つの研究に参加した人の内、約20％の人が高い数学スキルを持っているにもかかわらず、そのことに自信を持っていませんでした。反対に、自信はある一方で実際の数学スキルが伴っていない人は、全体の約13％いました。

このことからピーターズ氏は「全体の約3割の人が不幸な『不一致』を抱えています。優れたスキルがあっても自信がなければそれを活用できませんし、スキルがないのに自信だけがあると、人の助けやアドバイスを受け入れることができません」と述べて、自分の能力を正しく理解することの重要性を強調しました。