ネット上にも情報が少ない希少なファミコンソフトを捜索＆解析してエミュレーターでプレイ可能な状態に

1980年代にコナミがファミリーコンピュータ(ファミコン)用の学習用ソフトとしてリリースした「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズは、小学生の学習用に設計された希少なゲームソフトシリーズです。その中の算数を勉強するためのソフト「小学校の算数5年生(上)」を、ロシア人のゲームマニアが入手しています。

Collector unearths long-lost 8-bit Konami games, dumps them for emulation | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2019/08/collector-unearths-long-lost-8-bit-konami-games-dumps-them-for-emulation/

「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズは、日本の公共放送局であるNHKとコナミがパートナーシップを結んだことで開発されたゲームで、一般販売はされておらず、学校がコナミに直接オーダーしなければ入手できない希少なソフトだったそうです。

「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのゲームソフトは通常のファミコン用のカートリッジとは異なる特別設計の40ピンカートリッジが採用されています。以下の写真の場合、上に載ったスーパーマリオブラザーズは通常のファミコンカートリッジ(60ピン)で、下にあるのが「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズの40ピンカートリッジ。

コナミ製の40ピンカートリッジはそのままではファミコンに挿してプレイすることはできません。プレイするには「Q太」という専用の変換用カートリッジを使用する必要があります。

実際にAV仕様のファミリーコンピュータにQ太を挿し、そこに「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのソフトを挿した様子。

入手方法が非常に限られており、専用の変換カートリッジも必要であったため、「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのソフトはコレクター市場においては最も希少かつ高価なゲームソフトのひとつとなっています。また、インターネット上に詳細な情報が非常に少なく、独自のメモリマッパー構成を採用していたという特異性も合わさり、既存のエミュレーターではほとんどプレイすることができなかったそうです。

そんなプレイするのも一苦労な「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのソフトを入手したのが、ロシア人YouTuberのRussian Geek。Russian Geekは複数の日本のオークションサイト上で同ソフトを探し、数万円かけて「小学校の算数5年生(上)」とQ太を入手しており、入手の経緯やゲームをプレイできる状態にするまでの経緯などをロシア語で語っています。

Konami QTa Adapter и Space School для Nintendo Famicom // Extra Life - YouTube

Russian Geekはファミコンソフトの解析などで有名なハッカーのCaH4e3さんと協力して、「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのソフトで採用されている独自のメモリマッパーを解読。

左が「NHK学園 SPACE SCHOOL」シリーズのソフトの内部基板で、右がQ太の内部基板。Q太の基板にはコナミ製のVRC5マイクロチップが搭載されています。このVRC5マイクロチップは「悪魔城伝説」などにも採用されていたそうです。VRC5マイクロチップは背景上にオーバーレイして表示されるグラフィックが含まれるとのこと。

解読の手順は16進数コードを解読し、複数の応答信号をテストし、カスタムスクリプトを記述するというもの。これにより64KBのマッパーテーブルをダンプすることに成功しています。さらに、Q太のROMファイルを解読することで64KBのデータを32バイトにまで減らしたそうです。これによりマッパーデータをNESのエミュレーターである「FCEUX」で再生することに成功しています。

そんなわけでプレイできるようになった「小学校の算数5年生(上)」のタイトル画面がコレ。

オープニング映像は以下の通り。

Famicom Space School Vol. 5 Opening Movie (4K FCEUX) - YouTube

ゲームの中で計算方法などが学べるようです。