突然原因不明の病気で手が不自由になったプログラマーが働くための方法とは?
by Mary Cullen
エディンバラ大学の博士課程で神経言語プログラミングと機械学習を学ぶナオミ・サフラさんは、2015年8月から原因不明の病気によって手が不自由になってしまい、タイピングによるコーディングが難しくなってしまったそうです。そんなサフラさんが、自身がコンピューター科学の研究と仕事を続けていくために採用した「手が使えなくてもプログラミングを行う方法」について、自身のブログで語っています。
What Does a Coder Do If They Can't Type? | Objective Funk
http://nsaphra.github.io/post/hands/
サフラさんは、2015年8月から手を動かすたびに焼かれるような痛みにたびたび襲われるようになったとのこと。リウマチの専門医からは、アメリカ人として初めて「線維筋痛症」と診断されてしまったそうです。また、別の医者からは突発性のニューロパチーとも診断されてしまったとのこと。サフラさんはたくさんの医者を回って治療法を模索しましたが、どの医師もお手上げだったとのことで、ある医師は「突然のニューロパチー発症は原因不明で、おそらく心因性によるものだろう」と述べ、何も解決できなかったことに悪態をついたサフラさんは診察室を追い出されてしまったそうです。
by I am R.
突然発症した謎の病気のせいで、サフラさんは手書きで何かを入力したり、書いたりすることが非常に難しくなりました。また、キーボードの使用もかなり難しくなってしまったため、仕事にも大きく支障をきたすこととなりました。サフラさんによると、手自体はこれまで通り動かすことはできるそうですが、病状が悪化すると手を動かす度に激しい痛みを感じるため、ひどい時には手が一切使えなくなってしまうとのこと。そこでサフラさんは、Talonという音声コーディング用のプラットフォームを使い、音声でプログラミングを行っているそうです。
サフラさんが日常的に行っている音声コーディングでは、一文字一文字を声で入力していくわけはなく、カーソル制御コマンドを使用して特定のフレーズを選択した後、コピー&ペーストと変名指定を音声で行っていくとのこと。ただし、すべての変数には「テキストでの名前」と「音声認識で呼び出すための名前」の2種類を設定しなければならず、非常に手間がかかるそうです。
プログラムを口述するためにはマイクとフットペダルを使っているとのこと。マイクはオフィス用と外出用の2つを使い分けているそうです。また、フットペダルにショートカットや簡単な操作を連携させることで、手への負担を極力少なくすることができます。さらに、あえて大きな手のギプスを装着することで、手の動きを制限して習慣的な使用を避けるようにしているほか、誰かと会ったときに「病気のために握手をすることができない」と説明する手間がはぶけるとサフラさんは説明しています。
日常的にサフラさんは音声コーディングを行っていますが、音声認識技術は完全なものではありません。異常なアクセントがあるとエラー率は高くなり、風邪やのどの痛みが出るたびにプログラミングを一時的に中止せざるを得なくなることもあるそうで、体調管理には非常に気をつけているとのこと。また、コーディングに発声が不可欠であるため、「会社で共用のオフィスの中で仕事をする」ことは不可能であり、口述コーディングのためのプライベートスペースを持たないと作業ができないのは仕事をする上で大きな制限だとサフラさんは語りました。
by K2 Space
「障害のある生活は簡単ではないものの、快楽適応と仕事と趣味が充実することで、私は本当にとても幸せです」とサフラさん。「もしあなたが今健康な体を持っているのであれば、障害を持つ同僚や先輩・後輩が価値のある充実した仕事をするための探求を支援してください。私は障害を持つ他の科学者やプログラマーにどんな質問でも尋ねてくるよう奨励しています」と述べました。
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