ソフトウェア

Appleは盲目や弱視など視覚障害を持つ人々がイノベーションを加速させる重要な要素だと考えている


iPhone・iPad・Mac・Apple Watchなど革新的なデバイスを生み出すIT企業のAppleには、目が見えないながらもエンジニアとして同社の製品開発に携わる女性がいます。

This blind Apple engineer is transforming the tech world at only 22
http://mashable.com/2016/07/10/apple-innovation-blind-engineer/

Appleのエンジニアであるジョーディン・カストールさんは、出産予定日よりも15週も早く生まれました。生まれた時の体重はなんとわずか2ポンド(約900グラム)未満だったそうです。生まれたばかりのジョーディンさんはとても小さく、なんと祖父の手のひらにのることができ、彼の指輪を腕に通すこともできるくらいで、医者は命の危険があるくらいにジョーディンさんが小さいと言ったそうです。


ジョーディンさんは現在22歳になっていますが、あまりに早産過ぎたため、彼女は生まれたときから目が見えません。しかし、幼少期に両親が障害に負けないようジョーディンさんを育てた影響で、彼女はとても冒険的で実践的で好奇心旺盛な女性に育ちました。そして、好奇心旺盛な性格からか、ジョーディンさんはテクノロジーに興味を持つようになります。

ジョーディンさんは自身がテクノロジー関連に興味を抱くきっかけとなったのは、「自身の周りの大人がガジェットの形や仕組みを把握するために手にとり使ってみるように勧めてきたから」と語ります。そんなジョーディンさんは現在、Appleで盲目や弱視などの視覚障害を持つユーザー向けのVoiceOver機能などの開発に取り組んでおり、これはテクノロジー界隈では「アクセシビリティ」と呼ばれている機能。ジョーディンさんは「私のコンピューターに関する知識と技術は、身障者の世界を変えることに役立てることができると気づいたんです」と自身の仕事について語っています。

VoiceOver機能を駆使するとどうなるかというと、例えば以下のムービーのように爆速で現在時刻を読み上げさせたり、天気を通知させたり、さらには自在にキーボード入力することが可能となります。

ホームボタンを押すと、iPhoneが超高速で14時59分と言う動画 - YouTube


ロックを解除し、いつもの速度/ゆっくりの2パターンで天気をみてもらう動画 - YouTube


檜山さんが『檜山晃』と入力する様子の動画 - YouTube


Appleでエンジニアとして働くジョーディン・カストールさん


仕事においてしばしば見落とされがちな要素として、「身障者目線の意見」があります。しかし、Appleは盲目や弱視などの視覚障害を持つ人々のコミュニティが、同社のイノベーションを加速させるための重要な要素であると考えています。そして、Appleがアクセシビリティ関連に力を入れている証拠とも言える存在がジョーディンさんです。

そんなジョーディンさんとAppleの最初の出会いは2015年にミネアポリスで行われた就職説明会でした。当時、ジョーディンさんはミシガン州立大学の学生で、就職説明会の中では「17歳の誕生日プレゼントにiPadをもらい、視覚障害者でもこれらのデバイスが利用可能になるVoiceOver機能に感動し、この時の感動が自分のテクノロジーに対する情熱を一層かき立てた」というエピソードを話したそうです。

By Tatsuo Yamashita

Appleの上級マネージャーのひとりであるサラ・ヘルリンガーさんは、Appleのアクセシビリティー関連での重要なステップは、専門化ではなく標準化にこそあるとしています。サラさんは、「VoiceOverのような視覚障害者向けの機能がApple製品では標準搭載なので、無料で使用できます。しかし、これまでのテクノロジー業界では視覚障害者が何かしらのデバイスを使おうとすれば、追加で専用機器などを購入しなければいけませんでした」と、アクセシビリティ関連を強化してきた経緯について語っています。

就職説明会の時点でジョーディンさんには他の参加者にないほどのVoiceOver機能に対する情熱が見られたそうです。この情熱と彼女のエンジニアとしてのスキルが買われる形で、ジョーディンさんはすぐさまAppleのインターンシップに参加することとなります。さらにその後、ジョーディンさんはアクセシビリティ関連の開発を行うためのエンジニアとしてAppleで働くこととなりました。


「多様性を受け入れることはイノベーションを刺激することにつながる」という考えのもと、Appleでは全てのユーザーが同社の端末を扱えるようにアクセシビリティ機能の開発に取り組んでいます。サラさんは、Appleは自社製品を愛し、自社製品が全ての人々が使えるものであることを望んでいる、と言います。なお、Appleは7月4日に同社のアクセシビリティ面の開発に助力した視覚障害者をたたえるRobert S. Bray Awardをアメリカ盲人協会と共に開催しています。

VoiceOver機能は盲人でもタッチスクリーンデバイスが使用できるようになる画期的な機能だったわけですが、今秋リリース予定となっている新型MacではついにノートブックもSiriに対応すると見られています。MacがSiriに対応すれば、視覚障害者にとってMacはより使いやすいものになります。

By Atsushi Boulder

また、ジョーディンさんのような盲目のエンジニアによるアクセシビリティ面への直接的なフィードバックは、Apple製品の操作系に大きなイノベーションをもたらすことにもつながったそうです。最も新しい事例としてはApple Watchが挙げられています。時計を見る場合、健常者は自身の腕時計をじっと見ますが、盲目の人の場合、VoiceOver機能などを使用して時間を音声で知る必要があります。しかし、会議中などの音が出せない場面だと、盲目の人は時間を知ることができません。これを解決するため、Appleは振動でユーザーに時刻を知らせるという機能を開発しました。なお、サラさんによれば、この機能は今秋登場予定となっているwatchOS 3で実装されるとのことです。

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in ソフトウェア,   動画, Posted by logu_ii

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