男性と飼い犬の生殖能力が共に低下する可能性が指摘される、その原因とは？

by Cristian Iohan Ştefănescu

イギリスの研究者が、「オスの飼い犬とその飼い主である男性の両方で精子の質が低下し、生殖能力の低下が見られた」という研究結果を発表しました。飼い犬と飼い主の生殖能力の低下は、犬と男性が同じ居住環境を共有することで引き起こされている可能性があるとのことです。

Independent and combined effects of diethylhexyl phthalate and polychlorinated biphenyl 153 on sperm quality in the human and dog | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-019-39913-9

Man and man's best friend have both been experiencing declines in sperm quality | CBC Radio
https://www.cbc.ca/radio/quirks/august-3-2019-science-of-awe-blue-whales-and-sonar-chromosomes-and-sleep-and-more-1.5047142/man-and-man-s-best-friend-have-both-been-experiencing-declines-in-sperm-quality-1.5047150

ノッティンガム大学の獣医学者であるリチャード・リー氏は過去数十年にわたって犬の精子の質が顕著に低下していることを発見しました。「犬の場合、精子の運動性が30％低下していました。興味深いのは、この現象は人間の精子でも同様に観察されるということです」とリー氏は述べました。

「私たちの健康に影響を与えるような化学物質が非常に多く生産されています。犬は住む家の環境を人間と共有しているので、人間と同じ化学物質にさらされると考えました。犬に表れる影響は人間にも反映される可能性があります」とリー氏。そこで、リー氏率いる研究チームは、飼い犬から収集された精子サンプルを分析し、いくつかの化学物質が検出されないかを調査しました。

研究チームは、多くの家庭用品に使用されているフタル酸系可塑剤であるDEHP(フタル酸ビス 2-エチルヘキシル)と、発がん性物質のPCB 153という2つの化学物質を検出。リー氏によると、これら2つの汚染物質は、ドッグフードからも検出されていたとのこと。

DEHPはプラスチックを柔らかく、壊れにくくするために使われる物質で、カーペットや子ども用のプラスチックのおもちゃ、そして犬のおもちゃで検出されたそうです。プラスチック容器に保存されて電子レンジで調理された食品を口にすることで、人間もDEHPの影響を受けることがあるとのこと。PCBは電子機器や塗料、プラスチック、ゴム製品に使われているとのこと。1970年代にその危険性が広く世に知られ、多くの国で使用が禁止されました。しかし、禁止されてから40年経ってもなおPCBは身の回りから検出されるそうです。

by Alan Levine

そこで、イギリスに住む男性とその飼い犬から精子サンプルを収集し、家庭環境で検出されるレベルのDEHPとPCBに暴露したところ、どちらの精子も運動性が大幅に低下し、生殖能力の低下に関連するDNA損傷が引き起こされたことがわかりました。つまり、人間と犬は同等レベルの化学物質によって、同程度に生殖能力が低下させられるというわけです。

リー氏は「今回の調査結果は、家庭や職場の環境で多く使われている化学物質が、同じ環境を共有する男性と犬の両方で精子の質の低下を引き起こしている可能性を示しています」と論じました。