サイエンス

観葉植物で室内の汚染物質を除去するにはどの程度の数を置けばいいのか?


建物内の空気の質を表す「空気質(室内空気質)」が低いと、人間の健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。この室内空気質に関する調査結果をドレクセル大学の研究者であるBryan Cummings氏とMichael Waring氏が公開しており、室内に置かれる観葉植物では室内空気質を清浄化するのは難しいことが明らかになっています。

Potted plants do not improve indoor air quality: a review and analysis of reported VOC removal efficiencies | Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology
https://www.nature.com/articles/s41370-019-0175-9

Sorry, your houseplants aren't actually purifying your apartment's air
https://massivesci.com/articles/houseplants-air-pollution-quality-vocs-indoors-nasa-study/

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)の調査報告によると、アメリカ人は平均して約90%の時間を屋内で過ごしています。室内空気質が悪い場合に最も影響を受けるのは、低年齢の子どもや高齢者、心血管疾患患者や呼吸器疾患の患者で、こういった人々は他よりも屋内で多くの時間を過ごすケースが多いため、より室内空気質が重要になります。

また、換気設備が不足している建物の増加や、合成建築材料、パーソナルケア製品、農薬、家庭用洗剤などの使用が増加していることにより、「過去数十年間で屋内での一部の汚染物質濃度が高まっている」とも指摘されています。


特に、屋内で増加している汚染物質は以下の通り。

・一酸化炭素、粒子状物質、たばこの煙などの燃焼副産物
ラドン、ペットのふけ、カビなどの自然発生する物質
・カビなどの生物系の汚染物質
・農薬、鉛、アスベスト
・一部の空気清浄機から発生するオゾン
・さまざまな製品および材料から出るさまざまな揮発性有機化合物

さらに、室内空気質の悪化が及ぼす影響としてEPAは以下の3つを挙げています。

・目、鼻、喉の刺激
・頭痛、めまい、疲労
・呼吸器疾患、心臓病、がん

また、室内の汚染物質として挙げられているラドンや粒子状物質、一酸化炭素、レジオネラ属菌などは、人体にどのように悪影響を及ぼすかが実証されています。例えば、ラドンは発がん性物質であり、肺がんの2番目に主要な原因として知られています。また、空調や暖房システムのメンテナンスが不十分な場合に出るレジオネラ属菌は、肺炎の一種であるレジオネラ症を引き起こすことがあります。


このような室内空気質の悪化を防ぐために、部屋の中に観葉植物を配置しているという人も多くいます。室内空気質を改善するために観葉植物を配置することは、1989年にNASAのClean Air Studyの一環として、研究者のBill Wolverton氏が公開したレポートの中でも推奨されました。この研究は宇宙ステーション内の空気を清浄にするための方法を見つけるためのもので、研究者は12種類の植物を密閉された空間に配置することで、揮発性有機化合物(VOC)濃度がどの程度変化するか調べています。この調査によると、ホルムアルデヒド・ベンゼン・トリクロロエチレンといったVOCが、10~70%減少したとのことです。

しかし、ドレクセル大学の研究者であるBryan Cummings氏とMichael Waring氏が行った最新の調査によると、「室内に置かれた観葉植物が室内空気を汚染するVOCの量に影響を与えるほど室内空気質を改善することはない」とのことです。研究チームは「Clean Air Studyの調査結果は密閉された空間内での数値であり、現実的なものではない」と指摘しています。

研究チームは屋内に配置された観葉植物の空気清浄化効果をより正確に測定するために、過去12件の研究から196件分の実験データを集めて分析しています。研究チームは植物の空気清浄化能力「クリーンエアデリバリーレート(CADR)」を、1立方メートルあたりの空気から1時間に除去できる汚染物質量から算出したところ、植物から得られるCADR値は高くても1%未満であることが明らかになりました。つまり、観葉植物でVOCを除去しようとすると、単純計算で1平方メートルあたり10~1000個もの植物を詰め込む必要があるというわけで、観葉植物で室内のVOCを除去するのは現実的ではないことが示されています。


なお、VOCは塗料やクリーナー、消毒剤、芳香剤といった家庭用品に含まれているだけでなく、プリンターや接着剤などのオフィス用品にも含まれています。他にも、一部の木材や建材用の樹脂に使用されるホルムアルデヒドや、塗料剥離剤や接着剤除去剤の成分である塩化メチレン、タバコの煙に含まれるベンゼンも、VOCの一種です。生活のあらゆる場所に存在するVOCは、特に屋内で頻繁に検出される汚染物質であり、屋外よりも2~5倍も濃度が高いことが明らかになっています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
屋内の空気汚染は時に屋外よりも深刻、料理や掃除が汚染の原因に - GIGAZINE

大気汚染は知能を低下させるという研究発表 - GIGAZINE

ジェットエンジンで大気に穴を開ける「バーチャル煙突」で大気汚染を解消することはできるのか? - GIGAZINE

世界人口の95%は汚れた空気を吸って生きている - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.