サイエンス

遺伝子配列を学習したAIが自然界で確認されていないウイルスを設計、細菌に感染する16種類が実際に機能


スタンフォード大学などの研究チームがDNA配列を学習したAIモデルを使い、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ」の全ゲノムを生成しました。実験ではAIが設計した候補のうち16種類が実際に機能し、複数を混ぜたカクテルによって、天然のファージに耐性を持つ大腸菌を抑えられることも確認されています。

Generative design of bacteriophages with genome language models | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aec2657

Large genome models used to design new viruses - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2026/08/large-genome-models-used-to-design-new-viruses/

これまでAIを利用した生物設計は主に個々の遺伝子やタンパク質を対象としてきました。しかし、生物の性質は多数の遺伝子や制御配列の相互作用によって生じるため、ゲノム全体を機能する形で設計することははるかに困難で、塩基が1つ変わるだけでもゲノム全体が機能しなくなる場合があります。


研究チームは2025年時点ですでに言語モデルを応用してバクテリオファージのゲノムを設計することに成功していました。

世界で初めてAIでウイルスのゲノムを設計することに成功 - GIGAZINE


今回研究チームが利用したのは、「Evo 1」と「Evo 2」と呼ばれるゲノム言語モデルです。文章を扱う大規模言語モデルが大量のテキストから単語の並び方を学ぶのに対し、ゲノム言語モデルは大量のDNA配列から、遺伝子や制御配列が成立する規則を学習します。DNAを構成する文字はA、T、C、Gの4種類だけですが、配列中にはわずかな違いが機能を左右する部分と、変化しても影響が小さい部分が混在しています。

そして、今回の設計対象には、大腸菌に感染するバクテリオファージ「ΦX174」が選ばれました。ΦX174は約5400塩基からなる比較的小さなゲノムに11個の遺伝子を持ち、それぞれの機能や感染の仕組みが詳しく研究されているため、AIが出力した配列を評価しやすいという利点があります。

研究チームはEvo 1とEvo 2にバクテリオファージのDNA配列を追加学習させ、ΦX174の先頭部分に当たる短い配列を入力して、全ゲノムの続きを生成させました。その後、ゲノムの長さや塩基の偏り、細菌への感染に欠かせないスパイクタンパク質の類似度などを基準に、明らかに機能しそうにない候補を除外しました。


コンピューター上での選別を通過した候補は302種類で、このうち285種類のDNA配列を化学的に合成して大腸菌に導入しました。大半は何も起こしませんでしたが、16種類は大腸菌の増殖を阻害し、バクテリオファージとして機能していることが確認されました。成功率は約5.6%で、16種類のうち9種類はAIが最初に出力した配列のまま、残る7種類は大腸菌内で追加の変異を獲得していました。

機能したファージの多くはΦX174とよく似ていましたが、単純なコピーではありませんでした。タンパク質を1つ失いながら別の変化で機能を補ったものや、新しい遺伝子を追加したもの、遺伝子の長さが変わったものなどがあり、進化的に遠く離れたファージの遺伝子を取り込んだ例も確認されています。


また、研究チームの計算によると、無作為な変異ではアミノ酸の変更が25カ所を超えたウイルスが機能する確率はほぼゼロになると予想されます。ところがAIが設計した候補では、25カ所を超える変更を含むものの約4分の1が機能し、50カ所を超える変更を持つ例も2種類ありました。この結果は、AIが単に無作為な変異を加えたのではなく、ウイルスが機能するための制約をある程度学習していたことを示しています。

研究チームはさらに、AIが設計した16種類のファージを混ぜたカクテルと、天然のΦX174近縁ファージを混ぜたカクテルを比較しました。天然ファージの組み合わせでは耐性を持つ大腸菌を抑えられなかった一方、AI設計ファージの組み合わせは耐性菌への感染能力を素早く獲得しました。研究チームは、ファージ同士のDNA交換や追加の変異が、耐性を乗り越える過程に関与した可能性があるとみています。

バクテリオファージは、抗生物質が効かない薬剤耐性菌に対する治療法として研究されています。今回の成果は、標的となる細菌や必要な性質を指定し、多様なファージをAIで設計する手法につながる可能性がありますが、ファージ療法自体は長年研究されながら広く普及するには至っておらず、今回の結果も実験室内で得られたものです。

一方で、研究チームはゲノム生成AIがもたらす危険性にも言及しています。Evo 1とEvo 2の学習データからは脊椎動物に感染するウイルスの配列が除外されていましたが、十分な計算資源とデータがあれば、別の開発者が同様の手法を応用する可能性は否定できません。そのため研究チームは、AIモデルの管理だけでなく、人工DNAの注文や合成を含む仕組みについても、より適切なガバナンスが必要だと指摘しています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article An AI that learned gene sequences design….