メモ

うそ発見器は実際どれくらいうそを見抜けるのか?

by Schwerdhoefer

ドラマや映画の中の犯罪捜査で使われる「うそ発見器」は、実はアメリカの裁判では証拠として認められたことがないもの。心理学者や弁護士から「うそ発見器に信頼性はない」とされながらも、なぜ現代にまでうそ発見器の技術が発展しているのか、「本当はどのくらいのうそを見抜けるのか?」ということで、IEEEスペクトラムがその歴史をひもといています。

A Brief History Of The Lie Detector - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-history/heroic-failures/a-brief-history-of-the-lie-detector

皮膚電気活動、呼吸、心拍などを測定してうそをついているかどうかを判別するポリグラフはうそ発見器として有名ですが、もともとは心臓の異常を発見したり手術中の患者をモニタリングするための医療機器として発明されました。最初のポリグラフは心臓医であるジェームズ・マッケンジーが1906年に発明したといわれています。

一方で、バイタルサインと感情を結び付けようとする試みは、ポリグラフ発明前の1858年に既に存在しました。1890年にはイタリアの犯罪学者であるチェザーレ・ロンブロソが尋問中の犯罪者の血圧を測定するための専用の手袋を使用していたと伝えられています。その後、第一次世界大戦の前には心理学者のヒューゴー・ミュンスターバーグがポリグラフを含むさまざまな機器を使用して主観的な感情を記録および分析したとのこと。

このミュンスターバーグの研究室で働いていたのが、うそ発見器のプロトタイプを作成したウィリアム・モールトン・マーストンです。ミュンスターバーグのビジョンに魅せられたマーストンは法律の学位と心理学の博士号を取得するためにハーバード大学で学び、妻のエリザベス・ホロウェイ・マーストンと共に収縮期血圧を測定する血圧バンドを発明し、感情とバイタルサインの関係を探るデバイスで使用しました。学生を対象としたテストでは、このうそ発見器は96%の成功率でうそを検出することができたそうです。


一方で、心理学者のロバート・ヤーキーズはマーストンの研究をさらに厳密に行うことを求めました。そこでマーストンはボストン市裁判所に拘禁されている20人をうそ発見器にかけ、「成功率は100%だ」と報告。これを受けた研究者たちは「成功率が高すぎる」と逆に懐疑的になり、「たとえポリグラフが心拍や血圧の高さを示しても、それがうそによるものなのか、尋問そのもののストレスなのかが分からない」という見方を示すようになりました。またマーストンは人種差別主義者であり、「アフリカ系アメリカ人は白人よりも精神が原始的であるためテスト結果は確かではない」と残していたことも知られています。

同時期に、カリフォルニア州バークレーの警察は、犯罪捜査に科学的な手法を導入する過渡期にありました。バークレー最初の警察署長であるオーガスト・ボルマーは1916年に部署で初めての科学者を雇い、1919年からは精神医学的な試験や知能テストを用いて大学生をリクルートし始めました。


このような背景の中で雇われたのが生理学の博士号を持つジョン・オーガスタス・ラーソンという人物。ラーソンはマーストンの技術を改良し、「心肺サイコグラム」という独自のデバイスを用いて容疑者のテストを開始したとのこと。313の事件において861人がうそ発見器にかけられた結果、80%の確率で正しい結果になることが示されました。これをうけて上司のボルマーもポリグラフを促進していきました。

ただし、ポリグラフの結果をアメリカの裁判所は証拠として認めていません。

by Bill Oxford

ウォルター・マッコイ判事は「うそ発見器は一般常識ではない」と主張し、合衆国控訴裁判所もこの判断を支持する形で「うそ発見器の科学は科学コミュニティに広く受け入れられていない」と述べました。この判断はその後、フライの標準として、新しい科学的手法を裁判所が受け入れるかどうかの基準となっています。

その後も裁判所はポリグラフの結果を証拠として認めていませんが、依然としてアメリカの犯罪捜査ではポリグラフが使用され続けています。また米軍、連邦政府を始めとするさまざまな機関でも雇用の際にポリグラフを使用しているとのこと。うそ発見器は技術的にも改良され、fMRIを用いたり、人の声や目の動き、ジェスチャーをAIが解析する「AVATAR」というシステムが開発されたりと、多様性をみせています。なお、fMRIを使ったうそ発見器の成功率は78%、AVATARの場合は60~75%とのこと。ただし、いずれの手法も個々の結果をグループのデータセットと比較するため、「データセットの品質が低い」「アルゴリズムに偏りがある」、あるいは「センサーが適切に機能しない」といった場合は、正しい結果が出ない可能性があるのも事実。

Lie detectors with artificial intelligence are future of border security
https://www.cnbc.com/2018/05/15/lie-detectors-with-artificial-intelligence-are-future-of-border-security.html


心理学者や弁護士によって「信頼性が低い」といわれるうそ発見器ですが、一方で長年にわたり有効性を主張し続けている心理学者や警察、政府の存在があります。「うそ発見器が実際に成功するのは、容疑者がそれを機能すると信じている場合のみである」とする見方もありますが、ドラマや映画といったフィクションでうそ発見器が「効果が実証された技術」として扱われ、人々がうそ発見器の力を信じるようになる中で、fMRIとAVATARによるうそ発見器による犯罪捜査が大きく進歩する可能性もありそうです。

なお、うそ発見器の開発者であるウィリアム・モールトン・マーストンは女性上位という考え方を若い男性たちに教え込む手段として、1940年代に「ワンダーウーマン」というキャラクターを考案した人物でもあります。

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驚愕のワンダー・ウーマン誕生秘話

ワンダー・ウーマンの生みの親、ハーバード大学で心理学の研究に従事していたマーストン夫妻と、助手のオリーヴ・バーンの物語。

夫妻の業績として嘘発見器の開発が有名であり、ワンダー・ウーマンの捕獲・尋問用投げ縄(ラッソ・オブ・トゥルース)は、ここからのアイデアだとわかります。
更にワンダー・ウーマンには、マーストンが提唱するDISC理論なる心理学の仮説を、世間に認知させるための要素が含まれており、それは現在会社の部下育成法などで利用されているソフト化したDISC理論(主導・感化・安定・慎重)ではなく、オリジナルの理論(支配・誘導・屈服・服従)で、それがコミックの過激な描写に繋がっていた。
更に更に、マーストン夫妻とオリーヴ・バーンの特殊な関係性(向こうの言葉でポリアモリーというそうな)に至っては、現代の進歩的思考の方でも許容しがたい?、故にこれが実話だとはなかなか信じられないものでした。

完全R指定の日本未公開作品だけどディスク化されて正解、DCマニアなら知っておくべきとても興味深いワンダー・ウーマン誕生秘話でした。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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