うそをつけばつくほど「うそつき」になってしまうということが判明
by Lindsey Martin
うそをついてしまう人はうそをつきたくてついているのではなく、どうしてもうそをつくしかないような場面に直面した時だけ、「今回だけは仕方ない」と考えてやむを得ずうそをつくパターンが多いはず。しかし、「人はうそをつけばつくほどうそつきになってしまう」ということが判明しました。
Why liars lie: What science tells us about deception - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2018/08/24/why-liars-lie-what-science-tells-us-about-false-statements/
人がうそをつくことは決しておかしなことではなく、早い子どもは2歳ごろからうそをつくようになります。幼い子どもがうそをつくと、子どもの親は「こんなに早くからうそをつくなんて、悪い子に育ってしまうのではないか」と不安に思うこともあるかもしれません。しかし、うそをつくためには計画性や影響、ほかの人の状況などを見極める必要があるため、「子どもがうそをつくことは成長に必要なマイルストーンと考えられる」という心理学者もいます。
ほとんどの子どもは成長するに従って道徳観念や自己を律する能力を身につけ、「うそをつくのはいけないことだ」と学習するため、次第にうそをつく頻度が減っていきます。アメリカに住む1000人の成人を対象に行われた2010年の研究(PDF)では、約60%の成人は24時間以内に1度もうそをつかず、研究中に報告されたうその半分がわずか5%の成人によるものだったとのこと。うそをついた成人のうち、ほとんどは「真実を伝えるとトラブルを招く」と考えた時にだけうそをつき、自分の利益のためにうそをつくことはありませんでした。
by M.J.Ambriola
ハーバード大学の認知神経学者であるジョシュア・グリーン氏は、被験者の脳に流れる血流をMRIでマッピングしながら、「うそをつけば金銭的報酬が得られる」と被験者に教えてうそをつかせようとする実験を行いました。
何人かの被験者は金銭的報酬を提供されてもうそをつかず、瞬時に本当のことを言いましたが、当然ながらうそをついた人もいました。うそをついた被験者の脳内では、一時的に難しい問題や複雑な思考を行う前頭葉の一部分が活性化し、本当のことを言うべきかうそをつくべきか迷ったとのことですが、結果的にうそをついたのです。
その後の追跡調査によりグリーン氏は、金銭的報酬を得るためにうそをついた人はうそつきのグループに属することを発見しました。グリーン氏によれば、うそをつくことは自分の欲求を抑えられるかどうかと関連しており、うそつきの人は自らの欲求に抵抗する能力が低い可能性があるとのこと。
by David Goehring
科学者の中には、「人々は自らの内在的な規範とうそをつくことによって得られる報酬、もしくはうそをつかないことによって受ける損害について脳内で争い、その結果うそをつくかつかないかを決める」と考える人々もいる模様。デューク大学の心理学教授であるダン・アリエリー氏は、「私たち自身が、自分を正直者にするかうそつきにするか決める裁判官です」と述べており、内在的な規範がうそをつくかどうかを決定すると考えています。
また、外部的な要因は私たちがいつ、どの程度の頻度でうそをつくのかに関係しているとのこと。人々がうそをつきやすいのは「うそを合理化できる場合」「ストレスを感じている場合」「周りの人もうそつきである場合」であり、「道徳的モラルを教えられた時」「ほかの人に見られていると感じている時」にはうそをつきにくくなるようです。
by Brynn Tweeddale
アリエリー氏が2016年に行った研究では、「うそをつくこと」がどのように人々の脳に影響を与えるのかについて調査しました。研究チームは人々がうその言葉を口にする時、恐怖や不安といった感情に関連する扁桃体の活動が活発になることを発見しました。つまり、人々はうそをついた時に罪悪感などのネガティブな感情を抱いていたことになります。
ところが、同じ被験者らに「パートナーにうそをついて、より多くのお金を稼ぐ」というゲームをプレイさせたところ、被験者らがうそをついた時の扁桃体の反応が次第に鈍くなったとのこと。また、うそをついても何の悪影響も受けなかった被験者は、より多くのうそをつくようになりました。
アリエリー氏は「うその恐ろしい点は、うそをつけばつくほどその人自身の行動に変化を及ぼすという点です」と述べており、うそつきがよりうそをつく傾向にあるとしています。最初は小さなうそであっても、次第にうそをつくことに慣れてしまってうそをつくことに対する罪悪感が薄れていくと、やがて罪悪感を感じずに大きなうそをつくようになってしまう可能性があるのです。
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