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「Amazonによる市場独占は何が問題なのか&どう行われているのか?」を専門家が解説

by Steve Jurvetson

Amazonは世界最大規模のオンライン通販プラットフォームを展開しており、世界中のユーザーが利用しています。家にいながらさまざまな買い物ができるAmazonのプラットフォームは非常に便利ですが、「Amazonは反トラスト法(独占禁止法)に違反している可能性がある」との指摘がされており、アメリカ司法省の反トラスト局が調査に乗り出しているとのこと。そんな中、独占禁止法の専門家であり、アメリカ・ニューヨーク州の司法省反トラスト局で局長を務めた経験を持つサリー・ハバード氏が、Amazonの独占についてのインタビューに答えています。

Amazon Is a Monopoly, an Interview With Sally Hubbard - Marketplace Pulse
https://www.marketplacepulse.com/articles/amazon-is-a-monopoly-an-interview-with-sally-hubbard

「Amazonは独占企業なのでしょうか?」というインタビュアーの問いに、ハバード氏は「はい」と回答。企業の独占力は価格を制御したり市場の自然な競争を排除したりする力として定義され、Amazonはそのどちらも有しているとのこと。しかし、ハバード氏は「独占していることそのものは、独占禁止法違反にはなりません」と述べ、「独占力を持った企業が、排他的な行動で独占力を強化・維持・獲得すること」が独占禁止法に当たると説明しました。


企業が行う排他的行為としては、「他の企業を排斥するために製造コストを下回るレベルまで価格を下げること(略奪的価格設定)」「取引先との独占的な契約」「他の企業との取引を拒絶すること」「契約企業のうち片方が取引上最も有利な条件を相手に確約させること(MFN条項)」「市場競争を排除する方法での製品・サービス設計」などが含まれます。これらの行為も独占力のない企業が実行する分には問題ありませんが、Amazonのように独占力を持つ企業が実行すれば、それは独占禁止法違反となるとのこと。

また、一部の人々は「Amazonが競争する市場は小売市場全体であり、小売市場全体から見ればAmazonはせいぜい数%を独占しているに過ぎない」と主張していますが、ハバード氏はAmazonの関連市場が「全ての小売」と認定されることはないだろうと指摘。市場は特定の製品およびその代替品によって定義されるため、「小売業界全体」を市場と見なすことはできないそうです。よって、特定の製品分野にとってAmazonが独占的なプラットフォームであると認められれば、Amazonが独占力を有するといえます。


「実際にAmazonはどのような反競争的な行動を取っているのか?」という質問に対して、ハバード氏はAmazonの反競争的行動の1つに「プラットフォーム特権」と呼ぶカテゴリーが存在すると指摘。テクノロジー企業が他社の製品より自社製品を優先するのと同様に、Amazonは自社で開発した製品をAmazonプラットフォーム上で販売し、アルゴリズムのランキングや広告、マーケティング、顧客レビューなどの面で優遇しています。「Amazonはゲームを制御し、プレイしています」とハバード氏はコメントしています。

また、Amazonは特定のブランドと独占的な契約を結ぶことで、プラットフォーム上からサードパーティの売り手をはじき出すことも行っています。たとえばAmazonはApple製品の再販業者をマーケットプレイス上から締め出していますが、この独占的な契約は反トラスト法の中心的な法律・シャーマン法の「取引を制限する全ての契約、結合、共謀を禁じる」という項目に違反する可能性があるとのこと。

AmazonはAppleだけでなく、Nikeなどの大手ブランドとも独占的な契約を結び、Amazonマーケットプレイス上での再販業者などを締め出しています。この動きについてAmazonは「偽ブランドの製品を減らすため」としていますが、ハバード氏は偽ブランド品の問題は口実に過ぎず、ブランドがAmazon上で直接製品を販売することに同意させることが目的だったと見ています。こうしてブランドとの独占契約を行い、Amazonは価格の制御も可能となるとハバード氏は指摘。

by www.quotecatalog.com

さらにAmazonは略奪的価格設定を行っている疑いがかけられているほか、多くの業者に対してMFN条項を押し付けていた事実もあります。現実的な問題として、多くの業者にとってAmazonは独占的な通販プラットフォームであり、業者側がAmazonと取引内容についての交渉をすることは非常に難しいため、Amazonは反競争的な契約を交わすことが容易だとハバード氏は主張しました。

また、Amazonが持つ最も強力なフィードバックループとして、有料制会員プログラムのAmazon Primeが挙げられます。Prime会員を増やしてPrimeサービスに対応した製品の販売を伸ばすことで、多くの業者は自社製品をPrimeサービスに対応させるため、フルフィルメント by Amazon(FBA)に加入します。FBAでは業者がAmazonの物流拠点に商品を預けることで迅速な発送・在庫管理を可能にしていますが、ハバード氏は多くの業者がFBAに参加しないという選択肢をほぼ奪われている点が問題だと指摘。これは排他的行為の一種と見なされる危険があるとのこと。

この姿勢に対し、「Amazonは他の業者が何も行動しなかった時期に、倉庫を含むインフラストラクチャーへの莫大な設備投資を行い、その結果として他の通販業者が抱えきれない在庫を保管・管理できる現状があるのではないか?」と、Amazonの優位は大局的な投資の正当な成果だという主張もあります。しかしハバード氏は「先にも説明したように、市場を支配するだけでは独占禁止法違反とはならず、倉庫に投資してもAmazonが独占禁止法違反になりません。ですが、反競争的な行為により独占力を強化・維持・獲得することが問題です」と述べ、Amazonが設備投資によって競争的優位を築いた点は認めつつ、競争を排除して独占を強化する行動は認められないと反論しました。

by Scott Lewis

Amazonが市場を独占してしまうことは、企業間の競争や開かれた市場、集中化されていない経済といったものが失われることを意味します。これらの要素は資本主義とアメリカ経済の基礎をなす原則であり、消費者は激しい自由競争によって大きな恩恵を受けることができるとハバード氏は主張。単一の巨大企業がどの製品・どのブランドを有位に立たせるのか、あるいは消費者の行動をコントロールすることは好ましくなく、独占禁止法は消費者にメリットをもたらすとのこと。

既にアメリカでは反トラスト局などがAmazonの調査に乗り出していますが、ハバード氏によれば独占禁止法の捜査には1~2年以上の期間が必要となるそうです。また、Amazonと司法当局が和解に達すれば数年で商慣行が改善される見込みもありますが、訴訟に発展した場合は5年、10年という期間がかかるかもしれません。しかし、より迅速な改善をもたらす可能性として「政府による規制」があるとハバード氏は指摘。2020年の大統領選挙に立候補しているエリザベス・ウォーレン氏はAmazonへの介入を提案しており、政治がAmazonの独占体制をいち早く改善することもあり得るそうです。

今すぐAmazonの独占体制が崩れることはないとハバード氏は認めていますが、司法当局や政府などのアクションの積み重ねにより、Amazonの独占は永久には続かないだろうとのこと。どれほどの時間がかかるのかを見極めるのは難しいとのことですが、Amazonの市場独占は「最終的に崩壊する運命にあります」とハバード氏は述べました。

by MIKI Yoshihito

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in メモ,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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