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巨大ハイテク企業は独占禁止法で規制されるべきなのか?

by Tumisu

近年ではGoogleやFacebook、Amazon、Appleといった巨大ハイテク企業が大きな力を持ち、「市場を独占している」といった非難を集めることが増えています。クイーンズランド工科大学のメディア学教授であるアマンダ・ロッツ氏は、そんな巨大ハイテク企業を独占禁止法で規制するべき理由について述べています。

Amazon, Google and Facebook warrant antitrust scrutiny for many reasons – not just because they're large
https://theconversation.com/amazon-google-and-facebook-warrant-antitrust-scrutiny-for-many-reasons-not-just-because-theyre-large-118370

近年では巨大なハイテク企業に対する監視の目が強まっており、Googleが独占禁止法に違反したとしてEUが巨額の制裁金を科したり、AppleがApp Storeを通じて独占状態を生み出しているとしてカスペルスキーが訴えたりと、独占禁止法による制裁が科されることが増えています。伝統的に「企業が巨大である」ことが市場の独占につながるとして、長らく独占禁止法の大きな焦点は企業の規模だったとロッツ氏は指摘。一方で、企業の規模が大きいことによる市場価格の調整だけに目を向けることは、GoogleやFacebookをはじめとする企業の害を覆い隠すことにつながるとのこと。

近年のハイテク企業は多くのサービスを無料で消費者に提供しています。たとえばFacebookを利用して友だちとやり取りしたり、Googleマップを使ってルート検索をしたり、Google検索を使用したりすることは無料で行うことができます。そのため、市場独占による価格の統制といった従来の独占禁止法が重視してきた側面から、Facebookなどを規制することは困難です。

しかし、消費者が何をしているのか、どんなものに興味があるのかといった情報は、GoogleやFacebookといった巨大ハイテク企業にとって大きな価値を生み出すとロッツ氏は述べています。消費者に関するデータは広告サービスなどに利用されるほか、需要があるものの未開拓の市場を発見したり、潜在的な競合他社に先んじて働きかけたりと、巨大ハイテク企業に市場優位性をもたらします。消費者は便利なサービスを無料で利用する引き換えとして、これらの個人情報を巨大ハイテク企業に明け渡しているのが現状だとのこと。

by fancycrave1

また、独占禁止法に関する問題の一つとして、「自然独占」というものがあります。初期投資などの固定費用が大きく、複数の企業で需要を分割することが非効率的となってしまう一部の業界においては、価格管理や監督委員会の設置などを条件に少数の企業による独占が許可されている状態を自然独占といいます。

近年の独占禁止法に関する議論では、Facebookなどの巨大なソーシャルメディアが「ネットワーク外部性(ネットワーク効果)」を理由にして、自然独占を正当化されるべきかどうかという問題に直面しているとロッツ氏は指摘。ネットワーク外部性は製品やサービスの価値が利用者数に依存していることを指し、SNSなどでは既存の利用者数が多ければ多いほど、新規にサービスへ加入する価値が高まるという状態です。

新しいソーシャルメディアを構築することに大きな設備投資コストは必要とされませんが、既に確保しているユーザー数は他の新規参入企業のハードルを上げることにつながります。たとえ競合する新しいSNSが便利な機能を備えていても、圧倒的なユーザー数を誇るFacebookに太刀打ちすることは容易ではありません。この点をどう扱うのかは今後の課題だとのこと。

by LoboStudioHamburg

ロッツ氏によると、巨大ハイテク企業が独占禁止法違反の疑いに関する一般的な反論として、「巨大ハイテク企業同士で競合している状態であり、独占禁止法にはならない」というものがあるとのこと。しかし、「巨大ハイテク企業」という言葉によってそれらが一つの業界に存在するように感じられても、実体はそれぞれ全く別の業界に属しているとロッツ氏は指摘。

たとえばFacebookは広告に支えられたソーシャルメディア企業であるだけでなく、WhatsAppとInstagramといった人気サービスを所有しています。これによってFacebookは並外れたデータ収集能力を有しており、コミュニケーションユーティリティとしての存在感を発揮しています。一方でGoogleも収入の85%を広告から得ていますが、広告が表示されるのは主に検索エンジンです。Google検索の圧倒的なシェアは、検索における競争の欠如をもたらしているとのこと。これらに対してAmazonは収益の大部分をオンライン小売事業から得ており、FacebookやGoogleと競合しているとは言い難い状態です。

by geralt

このような議論が行われている中で、アメリカの司法当局はGoogleに対して独占禁止法の調査を進めているとのこと。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、ニュースサイトや旅行予約サイト、オンラインショッピングサイトといった多くのオンライン企業が、Googleの独占禁止法に対する証拠集めに協力している模様。その中には長年にわたってGoogleと訴訟を繰り広げてきたOracleや、ウォール・ストリート・ジャーナルをはじめとする出版・メディア企業のニューズ・コーポレーションも含まれており、巨大ハイテク企業に対する独占禁止法の監視はより強まっていくとみられています。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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