ハードウェア

機械学習を用いてレタスの成長具合を的確に見分けて適切な時期に収穫するロボットが開発される


ロボットや機械学習技術の発達に伴い、近年ではロボットを農作業の現場に投入して効率化を図る動きが進行するなど、農業の現場においても着々と最新テクノロジーの導入が進んでいます。ケンブリッジ大学の工学部准教授である飯田史也氏らの研究チームは、「機械学習を用いて収穫に適した時期のレタスを見分け、傷つけずに収穫する」ロボットを開発しました。

A field‐tested robotic harvesting system for iceberg lettuce - Birrell - - Journal of Field Robotics - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/rob.21888

Robot uses machine learning to harvest lettuce | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/robot-uses-machine-learning-to-harvest-lettuce

農作業の機械化は数十年前から進んでおり、ジャガイモや小麦といった作物の農耕作業においては大型の機械を導入されてきましたが、作業の自動化が進んでいない作物も多く存在します。イギリスで最も一般的に栽培されているレタスの種類である「アイスバーグレタス」も、農耕作業の自動化が進んでいない作物の一つです。アイスバーグレタスは乱暴に扱うと傷つきやすく、地面に対して平らに生長するため、ロボットを用いた収穫が困難となっているとのこと。


そこで飯田氏らの研究チームでは、アイスバーグレタスの収穫を行う機械学習ロボット「Vegebot」を開発しました。研究チームのサイモン・ビレル氏は、「全ての畑と全てのレタスが違います」「もしもロボットを使ってアイスバーグレタスの収穫が可能となれば、私たちは他の作物にもロボットを応用できます」と述べています。また、Vegebotのプロジェクトにおいてコンピュータービジョンコンポーネントの開発を行ったジュリア・ツァイ氏は、「現時点ではレタスの収穫は手作業で行われており、体へのダメージが非常に大きいです」とコメントしました。

Vegebotはレタスを本体に取り付けられたカメラが撮影した画像から認識し、レタスが収穫に適しているかどうかを判別。続いてレタス本体を傷つけることなく根元からカットし、いつでもスーパーマーケットに出荷できる状態で収穫できるそうです。

実際にVegebotがどのようなロボットになっているのかは、以下のムービーを見るとわかります。

Robot uses machine learning to harvest lettuce - YouTube


畑の地面いっぱいに広がるレタスを収穫することは……


単純でありながらも体への負担が大きな作業です。


収穫の際には腰を屈めなければなりません。


一方でレタスは傷つきやすいためロボットによる自動化も困難でしたが、研究チームはそんなレタスを収穫するロボットの開発に、機械学習を用いて乗り出します。


Vegebotの開発には、まず実験室内で「画像からアイスバーグレタスを認識し、収穫の適しているかどうかを見分ける」ように訓練されました。続いて、地元の農業組合などとも連携を取り、実際の畑でのテストも行ったとのこと。


研究チームによって開発されたVegebotはまず最初に視野内のレタスを認識し、レタスが収穫に適しているかどうかを見分けます。


続いてロボットアームをレタスに近づけ……


本体を傷つけないように収穫。「レタスの判別から収穫までは、人間にとってはほんの数秒で終わるプロセスですが、これはロボットにとって非常に困難なチャレンジでした」研究の共著者であるジョシー・ヒューズ氏は述べています。


Vegebotには2台のカメラがロボットアームの付近に取り付けられており、レタスをスムーズにカットできるようになっています。また、レタスを傷つけないように研究チームはロボットアームの圧力を調整したそうで、グリップの圧力を調節して他の作物に応用することも可能だとのこと。飯田氏は、「私たちはVegebotのアプローチをアイスバーグレタスに必ずしも固有ではないものとして開発し、他の地上作物にも応用できるようにしたかったのです」と述べました。

記事作成時点ではVegebotの収穫スピードは人間に及びませんが、将来的にロボットを用いた収穫は農業における人手不足を解消する可能性があります。また、通常の収穫プロセスでは人々が各畑を収穫して回るのは一度きりであり、その一回の収穫時点で未成熟だった作物は収穫されないまま放置されてしまうことが多いとのこと。しかし、ロボットを用いれば同じ畑を何度も往復させることが可能であり、前日には未成熟だった作物を翌日になって収穫することが可能。

「私たちは収穫対象であるレタスについても多くのデータを収集しており、どの畑が最も効率的にレタスを栽培できているのかといった効率性の向上にも役立てることができます」「Vegebotの収穫スピードを人間に近づけて競争可能なレベルに高める必要がありますが、ロボットには大きな可能性が秘められていると考えています」と、ヒューズ氏は述べました。

by StateofIsrael

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1h_ik

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