Amazonの棚をまるごと背負って運ぶ自律走行ロボットを巨大物流システム「Amazon Robotics」の現場で見てきました
2018年10月30日に開業したAmazonの物流拠点であるアマゾン茨木フルフィルメントセンター(FC)は、自律走行ロボットを利用した物流システム「Amazon Robotics」を国内で2番目に導入しています。多くの物流倉庫では「棚の間を人が移動して荷物を運ぶ」という形ですが、茨木FCでは「棚が自律的に動いて人のもとにやってくる」という革新的なシステムを採用しており、また2016年から稼働しているアマゾン川崎FCに導入されているロボットよりも新しい国内最新鋭のシステムになっているとのこと。倉庫の中を動きまくる自律走行ロボットがどんな感じなのか、アマゾン茨木FCで実際に見てきました。
Amazon Robotics | Amazon.jobs
https://www.amazon.jobs/jp/teams/amazon-robotics
Amazon茨木FCは4階建てで、3階と4階にはめちゃくちゃ広い倉庫が広がっています。倉庫には黄色い棚が無数に存在していますが、これらの棚の間を職員が行ったり来たりするわけではありません。
倉庫で活躍するのが、「ドライブ」と呼ばれる以下の自律走行ロボット。
ドライブの重量は約136kg、積載可能重量は約567kgとのこと。国内では神奈川県の川崎FCにもAmazon Roboticsが導入されていますが、そこで稼働しているドライブよりも軽量化され、積載可能重量もおよそ66%増えるなど、スペックはかなり強化されているそうです。平べったい車のような形をしていますが、このドライブが棚の下に潜り込み、天面の黒い円盤部分がせり上がることで棚をまるごと持ち運ぶというわけ。
円盤の中央に空いた穴からは内部のコンピューターが見えます。AmazonがAmazon Roboticsという形で物流システムにロボットを導入した理由の1つに、「ロボットにすることによって熱の問題が解決される」というものがあるそうです。同じ仕事をこなすだけの人間がいると、二酸化炭素や体温によって倉庫内に熱と湿気がこもってしまい、労働環境が劣悪になりがちですが、ロボットであればそれが抑えられるとのこと。
車体前方の中央にはセンサーがついていました。このセンサーで棚に描かれているQRコードを読み取り、認識するというわけです。
その右側にはAmazon RoboticsのロゴとロボットのIDと思われる番号
反対側には電源など各種操作ボタンが配置されていました。
外から見える2輪のタイヤはゴム製であるようで……
開業して半年で既にこれだけのタイヤの跡が床にくっきり。ドライブが動き回る棚エリアには人間は足を踏み込まないということで、ドライブによる一切の乱れがない痕跡のみが残っているのが印象的でした。
タイヤ跡をよく見ると、ドライブがターンを決めて丸い跡が残る部分には小さなQRコードが張られていました。ドライブはこのQRコードを参考に自身の座標を把握しているようです。
実際にドライブが棚を動かす様子は以下のムービーで見ることができます。動作音は「シュイーン」という駆動音はあるものの全体的にとても静かで、周りで取材している記者たちのシャッター音が響くほど。
アマゾン茨木FCの最新鋭物流システム「Amazon Robotics」でドライブが棚を運ぶ様子 - YouTube
手前に向かって動いている棚の下にはドライブが見えます。
ドライブがくるっと時計回りに90度回転しますが、回るのはドライブだけで棚はそのまま。
そして棚は左に向かって進んでいきました。ドライブの速度は秒速およそ1.7mとのこと。
たとえば落下したペットボトルがドライブの行く手を阻んでも、ドライブはあらかじめ前方についたセンサーで障害物を認識し、障害物にぶつからないようなルートを再検索して進みます。そのため、避けるためにドライブが一旦停止をすることもありませんでした。
ドライブがこなしているのは在庫棚の管理であり、在庫棚から商品を取り出したり、在庫棚に商品を収納したりするのは人間の仕事。ここは商品を在庫棚に入れる「棚入れ」を行っている場所。
作業場所の横には折り畳みコンテナが置かれていて……
大量の商品が入っています。この茨木FCで扱われているのはミカン箱より小さい程度のもので、日用品や書籍、CD、小型家電が多いとのこと。大型家電については茨木FCで取り扱わないそうです。
折り畳みコンテナから取り出した商品は、モニター上にあるカメラによって画像認識で判別します。そのスピードはかなり速く、折り畳みコンテナから商品を出してさっとかざして1秒もしないうちに「ピッ」という電子音が鳴って認識が終了していました。
作業員の隣にあるディスプレイには、「商品を棚のどのあたりに入れればよいのか」という候補が示されており、作業員はその候補を参考にしつつ空いている場所に商品を入れていくというスタイル。従来の「決まった商品は決まった棚の決まった場所に」というものではなく、大きさや空き状況に合わせて入れて管理していきます。収納する場所を決めずに在庫を管理するのは非常に困難ですが、Amazon Roboticsによってそれが可能になっているというわけです。
そしてここは、在庫棚から商品を取り出す「棚だし」を行う場所。
次から次にドライブが棚を運んでくるので、その棚から折り畳みコンテナに商品を入れていきます。
実際に職員が棚だしを行う様子を以下のムービーで見ることができます。Amazon Roboticsの導入によって、ロボットが棚ごと在庫を運んできてくれるため、「人間が棚に行く」のではなく「棚が人間のもとに来る」ことによって大幅な効率化が可能になっています。
アマゾン茨木FCの「Amazon Robotics」で自律走行ロボットが棚を載せて棚だしエリアに運んでくる様子 - YouTube
棚だしした商品も、画像認識によって管理しています。
空の折り畳みコンテナを手元に呼び寄せるボタン
折り畳みコンテナはエレベーターによって3階と4階を行き来していて、金属製のベルトコンベアに載って運ばれていました。
・つづき
「Amazon倉庫の食堂」では何を食べることができるのか?カレー1皿200円のアマゾン茨木フルフィルメントセンター食堂に行ってみた - GIGAZINE
・関連記事
日本の物流を支配するAmazonの最先端ロボット「Amazon Robotics」が導入されたAmazon茨木フルフィルメントセンター潜入レポート - GIGAZINE
Amazonのスピード配送を支えるロボットの生みの親「Amazon Robotics」 - GIGAZINE
作業ロボットが導入されるAmazonのフルフィルメントセンターでは人間の新しい仕事が生まれている - GIGAZINE
ロボット化が進む最新のAmazonの出荷倉庫「フルフィルメントセンター」で商品が出荷される様子 - GIGAZINE
Amazonはどのようにして倉庫ロボットの火付け役になったのか - GIGAZINE
ロボットが人間に替わって商品の仕分け作業を行うコンテスト「Amazon Picking Challenge」は吸盤と2本指を持つロボットが制する - GIGAZINE
日本初開催のAmazonのロボットコンテスト「Amazon Robotics Challenge」ファイナルを完全レポ、白熱の戦いを制したロボットは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ