Amazonはどのようにして倉庫ロボットの火付け役になったのか
Amazonは2012年に倉庫を自動化する企業「Kiva Systems」を買収し、広大な自社の物流倉庫にKivaの倉庫ロボットを導入しました。Amazonは2016年現在ですでに3万台を超える倉庫ロボットを使用して物流倉庫のオートメーション化を進めているのですが、それに伴って物流業界のロボット開発競争が勃発しています。
How Amazon Triggered a Robot Arms Race - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-29/how-amazon-triggered-a-robot-arms-race
AmazonはKiva Systems(Kiva)を7億7500万ドル(約795億5000万円)で買収したのち、Kivaの製品販売を終了させ、Amazon独占でKivaのロボットを使い始めました。Kivaのロボットを導入していた他の企業は別の方法を模索せざるを得なくなったのですが、当時Kivaの倉庫ロボットほど優秀な性能を持つ類似製品は存在しないという問題がありました。そこから4年がたった2016年になり、ようやく世界の倉庫に導入できる水準を持つ倉庫ロボットがいくつかのスタートアップから登場し始めています。
Amazonのグローバル運用および顧客サービス部門でVPを務めるデイブ・クラーク氏によると、Amazonは世界中の倉庫で3万台のKivaロボットを稼働させており、倉庫運用コストの20%をカットすることに成功しているとのこと。ドイツ銀行の分析では、Amazonのオートメーション倉庫は商品の受注から入金管理に至るまでにかかる費用を2200万ドル(約22億6000万円)も節約することに成功しているそうです。もしAmazonがKivaを導入していない100カ所以上の流通センターをオートメーション化すれば、25億ドル(約2571億4000円)以上のコストをカットできると試算されています。
AmazonのKivaロボットは、倉庫のオートメーション化が人間よりも効率的であることを証明しているわけですが、一体どんな風にロボットがAmazonの倉庫で稼働しているかは、以下の記事から見ることができます。
Amazonでポチった商品が発送されるまでを追ったAmazon巨大倉庫ツアームービー - GIGAZINE
一方で小売業界全体で見れば、ウォルマートやターゲットのような大手スーパーマーケットチェーンですらオートメーション倉庫を持ち合わせていません。人間がベルトコンベアに荷物を運ぶという従来の方法に依存しているため、ロボットメーカーにとっては潜在的な巨大市場が存在することを意味しています。Amazonが倉庫ロボットの導入を進めるとともに、他社の倉庫ロボット開発も進んでおり、すでに多くの物流会社が倉庫のオートメーション化を推進し始めています。倉庫ロボットのスタートアップも次々と登場しており、Kivaの元従業員によるスタートアップも倉庫ロボットの開発を行っています。
「倉庫は非常にハイテクノロジーな場所です」と話すのはLocus Roboticsのチェアマンであるブルース・ウェルティ氏。Locus Roboticsは以前にKivaのロボットのためのソフトウェア・システムを構築して運用していた企業で、Zaraなどのファッション業界向けの荷物を運搬していました。ウェルティ氏は冗談で「AmazonがKivaを買収したら大変だ」と言っていたそうですが、本当にAmazonがKivaの販売をストップしたことで、システム自体が使えなくなってしまったとのこと。
ウェルティ氏は同じ失敗を繰り返さないよう、他社の技術に依存するのではなく自社で物流を自動化する技術を開発することにしました。2014年にロボット系のエンジニアを雇用して開発チームを結成した結果、1年でプロトタイプが完成。さらに1年未満で自社の倉庫で運用も開始しています。2016年5月にはベンチャーキャピタルから800万ドル(約8億2000万円)の出資も受けており、ウェルティ氏は2017年までに1ダース以上の倉庫に自社のロボットが配備する予定です。
AmazonはKivaを「Amazon Robotics」と改名し、さらなる自動化の拡大に挑んでいるところですが、Locus RoboticsのようなAmazonとは異なる倉庫ロボットの実用化も始まっています。Fetch Roboticsという企業も倉庫で働く従業員を手助けする倉庫ロボット「fetchcore」を開発済みで、Harvest Automationという企業も「HV-100」という屋外作業が可能な運搬ロボットを販売しています。
いくつかの企業は「ピッキング」のプロセスを自動化しようと試みており、ドイツのMagazinoという企業はロボットアームで個別に物を運び出すことができる倉庫ロボット「TORU Cube」を販売しています。Kivaの元幹部によるスタートアップの6 River Systemsは、詳細は明かされていないものの、倉庫ロボットの試験運用プログラムを実行中と言われています。
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