良質な物語は折れ線グラフに起こすことができる
by rossyyume
映画や小説などで描かれるストーリーがどのような構成をとって、どのような流れで展開していくかについて、作品を通してのキャラクターの感情の変化「エモーショナルアーク」を分析してパターン化する研究や、大ヒット映画に共通するストーリーラインの研究などが発表されています。そのような物語の「形」について分析する起点のひとつとなったムービーがYouTubeで公開されています。
Kurt Vonnegut on the Shapes of Stories - YouTube
» A Novel Method for Detecting Plot Matthew L. Jockers
http://www.matthewjockers.net/2014/06/05/a-novel-method-for-detecting-plot/
このムービーは、「猫のゆりかご」「スローターハウス5」などの著書で知られるアメリカの小説家、カート・ヴォネガット氏による講演が参加者によって撮影されたものです。ヴォネガット氏はシカゴ大学で人類学を研究している時に「物語の形」について着目し、「基本的なアイデアはグラフ用紙に描くことができる物語です」と述べています。
ムービーでは、ヴォネガット氏はまず、上に行くほど良い状況で、下に行くほど悪い状況を示す縦軸を描きます。病気や貧困だとグラフは下がり、反対に裕福だったり元気いっぱいだったりするとグラフは上に向かいます。
横軸には始まりから終わりまでの時間経過が示されます。
後に「大ヒット映画に共通するストーリーライン」として発見されることになる「穴の中の男」パターンについて、ヴォネガット氏がここで触れています。なんらかのトラブルで下に向いたグラフが、その問題を克服することで上へ向いて終結する単純なパターンがわかります。ヴォネガット氏も「この物語は愛される傾向にあり、うんざりとされることもない」と主張しています。
このようなヴォネガット氏の研究の先見性について、ワシントン州立大学で文学のデータ分析を行うマシュー・L・ジョッカーズ教授が指摘しています。ジョッカーズ教授は感情分析のツールとテクニックをフィクション作品に適用するプロジェクトに携わっており、その分析結果を物語のプロットの動きに重ね合わせて考える事が可能だと、ヴォネガット氏のムービーで気づいたとのことです。
ジョッカーズ教授は研究の中で、「ユリシーズ」で知られるアイルランドの小説家、ジェイムズ・ジョイス氏の作品「若き芸術家の肖像」をコンピュータで分析し、感情の動きをグラフにしました。
以下は、グラフのポイントとなっている部分でどのような展開があったのか注釈をつけたものです。作品の流れを知っている人なら一目見てわかるくらいに正確なグラフとなっているとジョッカーズ教授は主張します。
「よくできた物語はグラフに起こすことができる」というヴォネガット氏の主張は、裏を返せば「よい物語をつくりたいならばプロットをグラフにしてみるべき」と考えられるかもしれません。また、ジョッカーズ教授の研究から、グラフに起こせるような物語には感情の基点が必要なことがよく分かります。物語を作成していてどのような展開にすべきか行き詰まってしまったとき、作り上げた物語がどこか退屈に感じられてしまうときなど、この「プロットのグラフ化」を試してみると何かブレイクスルーが見出せるはずです。
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