サイエンス

「固体なのに液体でもある」という不思議な状態「超固体」とは?


一般的に、物質には「固体」「液体」「気体」の3つの状態が存在するというのが理科の常識です。しかし、-270度以下の極低温かつ高圧の世界では、常識が通用しない状態に転移することも。たとえば「超固体」とは、固体でありながら液体のような性質もあわせ持つという不思議な状態とのことで全くどういう状況か想像がつきませんが、フォンティス応用科学大学の量子物理学者であるクリス・リー氏がArsTechnicaで説明していました。

Super-solid helium state confirmed in beautiful experiment | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/12/researchers-find-super-solid-by-looking-at-a-normal-solid/


物質の状態は温度や圧力の変化で相転移します。例えば、液体である水は0度を下回ると固体である氷に転移し、100度を超えると気体である水蒸気に転移します。また、気体になった状態からさらに温度を上げていくと、分子と電子がばらばらになってしまう「プラズマ」と呼ばれる状態に転移することもあります。


原子番号2番・原子量4のヘリウムは、宇宙で最も奇妙な物質だとリー氏は主張しています。その理由は、ヘリウムを十分冷やすと「超流動液体」という状態に転移するためです。

液体ヘリウム4の沸点は1気圧下で4.2ケルビン(約-269度)と非常に低いのですが、蒸発したヘリウム4を真空ポンプで減圧することで、液体ヘリウム4の温度がさらに下がっていきます。最初はぼこぼこと沸騰してしまうのですが、およそ2.2ケルビン(約-271度)を境に突然沸騰しなくなり、粘性が0となる超流動状態へ相転移します。そのため、容器の壁を伝って外にこぼれ出したり、原子1つほどの隙間をすり抜けてしまうという不思議な現象が見られます。実際に超流動液体となったヘリウム4が容器の外にこぼれ出る様子を、以下のムービーの3分辺りで見ることができます。

Ben Miller experiments with superfluid helium - Horizon: What is One Degree? - BBC Two - YouTube


この超流動への相転移が起こる理由は、ヘリウム4の原子が陽子2つ・中性子2つ・電子2つで構成される「ボース粒子(ボゾン)」だからとのこと。ボース粒子は極低温下では粒子がとりうるエネルギー準位が極端に少なくなり、粒子として振る舞っていた原子が波としての振る舞いをみせるようになります。「原子が波としての振る舞いをみせる」という状況は直感的には非常に理解しづらいものがありますが、要するに「日常的に目にするような物理の常識」が通用しなくなるということを意味します。


ヘリウムが液体からさらに固体に転移するのは非常に難しいものがあります。ヘリウム4は25気圧以上、同位体のヘリウム3は35気圧以上でなければ固体になることはできません。ヘリウムを固体に転移させると原子が互いに固定された配列で保持され、結晶化します。

ヘリウムに限らず、物質が固体になると基本的に原子はぴっちりとそろっているように思われますが、実際は原子が欠けてしまっている隙間(空孔)が結晶中に生まれます。ヘリウムを固体にしてからさらに温度をどんどん下げていくと原子の振る舞いが変わり、固体でありながら粘性0の超流動性を得る「超固体」という状態に転移するといわれています。この状態になると、固体内の空孔が超流動性によって取り除かれ、理想的な結晶モデルに近づくとのこと。


理論的には存在が指摘されている超固体ですが、固体になったヘリウムが超流動性を得ているかどうかを実験で確認するのは非常に難しく、今なお議論されている部分です。ヘリウム4についてはこれまでの研究で何度か超固体の存在を示すデータが得られたものの、ヘリウム4とは粒子としての性質がまったく異なるヘリウム3の場合ではいまだに理論の域を出ないものとのこと。リー氏が紹介した、中国科学院とカナダのアルバータ大学の研究者による最新の論文では、ヘリウム3でも超固体の状態が生まれる可能性があることを示しているそうです。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk