サイエンス

固体なのに液体のように流れる不思議な状態「超固体」を「二次元化」することに成功


我々が認識する世界では、物質には「固体」「液体」「気体」の3種の状態が存在するというのが常識ですが、極低温かつ高圧という特殊な環境下では固体でありながら液体のようにも振る舞う「超固体」という状態が存在することが確認されていました。この超固体状態について、オーストリア科学アカデミー量子光学・量子情報研究所の研究チームが新たに「超固体状態を二次元化することに成功した」と報告しました。

Supersolids go two-dimensional
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02191-5

Supersolid in a new dimension - Institute for Quantum Optics and Quantum Information - Austrian Academy of Sciences
https://iqoqi.at/en/current/news/795-supersolid-in-a-new-dimension

Physicists give weird new phase of matter an extra dimension | Live Science
https://www.livescience.com/first-2d-supersolid.html

物質は温度や圧力によって相転移を生じ、例えば液体である水は0度を境に固体から液体に転移し、100度を境に液体から気体に転移します。こうした相転移に関して、ヘリウム4を絶対零度付近まで冷却するとヘリウム原子の集合が波動としての振る舞いを見せるようになり、固体であるにもかかわらず流体のみが示すと考えられていた「超流動」という性質を発現することが確認されています。

超固体については以下の記事で詳しく解説しています。

「固体なのに液体でもある」という不思議な状態「超固体」とは? - GIGAZINE


今回新たにオーストリア科学アカデミー量子光学・量子情報研究所のFrancesca Ferlaino教授らが達成したのは、この超固体の「二次元化」です。2017年にチューリッヒ工科大学の研究チームとマサチューセッツ工科大学の研究チームがそれぞれ「極低温量子気体を用いて超固体を達成した」と報告しましたが、この2チームの実験によって生成された超固体は、各原子によって形成された液滴が一列に並ぶという「一次元的」なものでした。


今回Ferlaino教授らは、光学ピンセットでつり下げたジスプロシウム164の集合をレーザー冷却によって絶対零度付近にまで冷却した後、光学ピンセットをわずかに緩めて最もエネルギーの高い原子が遊動できるだけの隙間を空けるという手法で、複数列の超固体状態を作成。超固体の二次元化を達成しました。


これまで一次元の超固体では「実際に超固体状態になっているかどうかが判定困難である」という問題点が存在しました。しかし、二次元の超固体では、一次元状態では不可能だった「系全体をねじって固体では持ち得ない慣性モーメントを有しているかどうかを調べる」という判定手法を採用できるため、超固体関連の研究を飛躍的に進歩させるものと期待されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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