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意味のある「良いアドバイス」をするために必要なこととは?


他人に助言を求められたので自分の考えを丁寧に伝えたのに、相手がまったくアドバイスに従わない、という経験があるかもしれません。しかし、「あんなに真剣にアドバイスしてやったのに……」と怒り狂う前に、そもそもアドバイスが頓珍漢なものだった、という可能性を考慮すべきことをハーバードビジネススクールの教授が指摘しています。相手にとって意味のあるアドバイスができる良い助言者になる方法について、Scientific Americanでアドバイスがされています。

How to Give Better Advice - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/how-to-give-better-advice/

2000年代はじめ、イギリスのBBC(英国放送協会)の会長にグレッグ・ダイク氏が就任しました。多くの役員はダイク氏に対して「BBCのビジョンを明確に示して指揮すべき」と会長としての使命を説きましたが、ダイク氏はこの助言には従わなかったとのこと。ダイク氏は最初の5カ月間、BBCのオフィスにやってきてはスタッフに対して「視聴者にとって良いものを作るために何をするべきだろうか?」と問い続けました。ダイク氏のアプローチは成功し、BBC1とBBC2のテレビ視聴率は上昇し、BBCラジオは記録的なリスナーを獲得したそうです。


ハーバードビジネススクールのフランセスカ・ジーノ教授は、ダイク氏の行動は「どのようにアドバイスするのが効果的か?」という観点から理にかなっているものだと話します。ジーノ教授によると、アドバイスする人(アドバイザー)とアドバイスを必要とする人(アドバイジー)との間には「考え方の不一致」があり、それゆえにアドバイスが効果的にならないことが多いそうですが、ダイク氏のアドバイス法は、研究からわかった理想的なアドバイスの対応になっていたそうです。

ジーノ教授によると、一般的にアドバイスを求めるアドバイジーは「何をするべきか?」という情報を求めているわけではなく、「より多くの選択肢を提示して、異なる考え方を気づかせてくれる情報」を求めているものだとのこと。これに対して、アドバイスをするアドバイザーは、自分の知識と経験から「選択肢を絞って、正しい方法へ導くこと」を目的としてアドバイスをするものだそうです。つまり、情報を広げるよう望むアドバイジーに対して、情報を狭めようとするアドバイザーという根本的な不一致があり、そのためアドバイジーは「このアドバイスは役に立つどころか有害だ」と感じることが多々あるそうです。

この種のアドバイスに関する不一致はいたるところにあり、コンサルタント、カウンセラー、両親、教師、医師、財務アナリストなどが、適切な助言を与えられないという事態につながっているとジーノ教授は述べています。


さらに、アドバイスをする場合に、人は自分が求めるようなアドバイスを行わない傾向にあることもジーノ教授は指摘しています。例えば組織のリーダーが部下のマネージャーに対して、他の従業員のお手本となるようにアドバイスするとき、「ソーシャルメディアに時間を浪費しないこと」「テレビを見て過ごすよりも、ジムに通うこと」など、それらしい行動を求めるものですが、リーダー自身は必ずしもそのような行動をとらないものです。これは、アドバイザーとアドバイジーとの間で「何が価値あるものなのか?」という考え方に不一致があるせいだとのこと。アドバイザーは社会的に容認できる要素に焦点をあてるに対して、アドバイジーはより実践的な要素に焦点をあてるという不一致だとジーノ教授は考えています。

以上のことから、アドバイザーとして良いアドバイスをするために大切なことは、「アドバイスを受ける人の視点で物事を見ること」だとジーノ教授は述べています。ハーバードビジネススクールのティン・チャン氏は、ギタリストを募集してギターの演奏について初心者にアドバイスをしてもらう実験を行いました。この実験では、半数のギタリストには通常通り演奏してもらい、残る半数のギタリストには自らの利き手とは反対の手での演奏を要求しました。その後、ギター歴が1年未満の初級者を集めて、ギタリストのアドバイスが有益かどうかを判定させると、利き手ではない手で演奏したギタリストのアドバイスをより有益だと判断することが多かったそうです。つまり、慣れない手でギターを演奏したことで、初心者の視点に立つことができたギタリストは、アドバイジーが求めるアドバイスを提供する良いアドバイザーになれたというわけです。


良い助言者になるために、助言を受ける人の立場で考えることが重要ですが、相手の行動、思考、感情などをあまりにも多く推測することはかえって有害だともジーノ教授は述べています。そこで、アドバイスをする場合には、自分が良いと思うことを提示する前に、「なぜ、相手は相談が必要だと感じたのだろうか?」という事情を理解することが大切だとのこと。その上で、「自分が何をすることが最も役に立つか?」という相手が求めることを理解することが効果的だとジーノ教授は述べています。

「視聴者にとって良いものを作るために何をするべきだろうか?」と問い続けたダイク氏は、質問することでBBCのスタッフが抱いている不満を理解して、それを解決する方法についてのアイデア自体をスタッフから得ることができました。互いに議論する中でアドバイジーだけでなくアドバイザーも問題を深く理解でき、それによって目的を共通化できたことでアドバイスが効果的なものとなり、さらにはスタッフの士気を高めることにも成功したのが勝因だろうとジーノ教授は分析しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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