取材

福島県富岡町の避難指示解除から復興へ向かう今をチャリダーマンが見てきた


自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンは、2018年のお盆休みを利用して、JR全線の普通・快速列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」で福島まで行ってきました。

北の浪江町と比べると南の富岡町の方が復興が進んでいるようでした。復興を象徴するような災害公営住宅やショッピングモールが建てられています。浪江町と同じように富岡町の今も見てきました。


浪江町の様子は以下の記事でレポートしています。

福島県浪江町の避難指示解除から復興へ向かう今をチャリダーマンが見てきた - GIGAZINE


◆巻き戻せない時計の針
JR常磐線は浪江駅から南の富岡駅まで不通となっています。この区間は国道6号線を走る代行バスによる移動。バスですが、18きっぷが使えました。10時30分に浪江駅を発車するバスに乗車。座席は高速バスのような4列シート。ほぼ満席でした。双葉町、大熊町という避難指示が継続されている地域を通過します。窓を開けることはできません。窓から外をのぞくと人々が利用しなくなったロードサイドの店舗が次々現れては消えていきます。帰還困難区域を通過するバス。車内もどことなく重苦しい空気でした。

バスが富岡駅に到着したら、そのままいいタイミングで次の電車に乗れます。しかし、それでは何も見られないので、パス。次の電車の時間まで富岡町を歩き回りました。富岡町も浪江町同様に全町が帰還困難区域でした。こちらも2017年4月1日、空間放射線量が低い区域の避難指示が解除されています。自由に街を歩けるようになりました。でも、時計の針は巻き戻せません。人々がいなかった時間の分だけ街は色あせていました。

小高い丘の上にある公園から見た富岡町


公園の遊具は使用禁止とありますが、実物が見当たらず。


通行止めとなっている歩道橋


消火栓の標識は錆びついて土色となっていました


閉鎖された福島銀行の支店


大震災から時間が止まったままのような建物


荒れ果てたままとなっている小さな神社


人の手入れがないと、木々や雑草はすべてを覆い尽くすかのように成長していきます。


「マイプラザ」というホームセンター


駐車場には仮設トイレを積んだ何十台もの軽トラが止まっていました


こちらは「サンデンキ」という家電量販店


店名が隠されてしまったロードサイド店舗


鮮やかさが失われていた中央児童館の遊具


閉鎖されている小学校の校舎


福島県の浜通りつなぐ国道6号線、自動車(四輪)の通行制限は解除されていますが、バイク、自転車、歩行者は立ち入り禁止となっています。原発に近い双葉町、大熊町は帰還困難区域ですので、自動車でもあっても途中停車できません。


除染作業を行っているという告知。富岡町北部の夜ノ森(よのもり)という地区は未だに避難指示が解除されていません。


◆JR富岡駅
海に近いJR富岡駅は東日本大震災の津波によって駅舎が流失しています。鉄道復旧にあたり新築の駅舎となりました。富岡駅から南のいわき方面へは電車が動いていますが、本数がかなり少ないので計画的に利用しましょう。

駅前のロータリー


新築の駅舎


ホーム


富岡と浪江の間が途切れている路線図


駅舎内にあった放射線量の表示


◆復興へ向けて
そして、駅に隣接する曲田地区が富岡町の復興拠点として整備されていました。駅周辺の建物も津波で大きな被害を受けたため、多くの建物が解体され更地に。その後に災害公営住宅となる団地や戸建てが造られていました。町民の方々の生活の場が再建されつつあります。

曲田第2団地。デザイナーズマンションのような建物でした。


栄町団地


こちらも公営住宅ですが、一戸建てです。


団地の集会所


公営住宅だけでなく新築のアパートも目立っていました


こちらも新しいアパート。浪江町にはない動きでした。


中学校の校舎を改築して、小中学校の授業が再開されています。現状は小学生、中学生が一つの校舎を使っている様子。


駅前には「富岡ホテル」という真新しいホテルも営業していました


富岡町には生鮮スーパー「ヨークベニマル」、ホームセンター「ダイユーエイト」、ドラッグストア「ツルハドラッグ」という店舗が営業する「さくらモールとみおか」というショッピングモールも営業しています。モールの中にはフードコートもありました。フードコートは生鮮スーパーのイートインとしても使用できます。ドラッグストアには衣料品や100均商品も置いてありました。これだけ揃っていたら、生活もそこまで不便することないでしょう。地元の人たちのオアシス的な場所となっていました。また、復興関係のお仕事をされている方の姿も目立ちました。

さくらモールとみおか


「ヨークベニマル」は福島県を代表するスーパー。セブンイレブン、イトーヨーカドーと同じセブン&アイ・ホールディングスのグループ企業です。


さくらモールのすぐそばで移転再開となった福島銀行の支店


街中にほとんど人がいなかった浪江町の後に行ったので、富岡町の賑わいは意外でした。

「富岡は負けん!」というスローガン


さくらモールで見た「復興は百歳まで生きる道」という言葉。この街で少しでも長く生きることが、復興につながるというニュアンスでしょうか。


富岡町のゆるキャラは町の鳥、セキレイがモチーフの「とみっぴー」だっぴ。フェイスブックページもあるっぴ。


浪江町と同様に富岡町でも、少しずつですが復興が進んでいるようでした

今回、浪江町と富岡町で見た光景はほんの一部です。記事で紹介した以上に、たくさんの人たちの生活の場があったことでしょう。加えて未だに大熊町、双葉町は全域が帰還困難区域となっています。天災である地震には無力でも、原発事故さえ起きなければ、もっと違った今があったはずでした。もし、再び原発事故が起きたら、このような地域が更に増えることになります。

これからも原発を使っていくのか、未だに賛成反対と論争が続いています。しかしどちらの立場にしても、いずれ廃止させるという未来は諦めていはいけません。原子力に変わるエネルギー源が確保できれば原発なんて必要なくなります。

原発即時廃止をうたっても、電気の安定供給はできるのでしょうか。原発再稼働容認をうたっても次の事故が起きたらどうなるのでしょう。現実を無視した理想論でも、理想を掲げない現実主義でもなく、バランスを取った視点が大切だと思っています。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
Facebookページ https://www.facebook.com/chariderman/
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)

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in 取材, Posted by logc_nt

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