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「カンフー映画」とは一体どういうジャンルの映画なのか?


中国拳法を主体としたアクション映画は「カンフー映画」と呼ばれ、世界的人気を誇るジャンルです。しかし、一口に「カンフー映画」といってもそのスタイルは多種多様で、厳密な定義は難しいもの。「カンフー映画」とは一体どういうものなのかについて、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターであるラ=フランセス・フイ氏が具体例を示しながらムービーで解説しています。

The Grandmaster of Kung Fu Films: Lau Kar-leung | HOW TO SEE Martial Arts Films - YouTube


33歳という若さで亡くなるも今なお世界的人気を誇るブルース・リーや……


60歳を超えてなおアクション映画に出演するジャッキー・チェンなど、「カンフー映画」で活躍するアクションスターは多くいます。しかし中国アクション映画を一口に「カンフー映画」と定義するのは難しいものがあります。


中国の武道映画は大まかに二つに分けられます。一つは「武侠映画」と呼ばれるジャンルです。「武侠」とは「武道」と「騎士道」を組み合わせた意味を持つ言葉です。


侠女 第一部:チンルー砦の戦い/第二部:最後の法力」「大酔侠」など武侠映画でよく知られる作品は、どれも古代中国を描いた時代劇の要素を含み、剣を用いた大立ち回りがアクションの中心となります。


劇中で繰り広げられる戦いは現実的ではなく、ファンタジー要素にあふれていて、「リアルであるか」というよりも「いかに美しく、見栄えがする戦いを行うか」が重要視されます。


そのため、やたらとハイキックが多用されたり……


超人的な能力でジャンプしたり、飛びかかったりします。ジャンプは人間離れした高さで、重力を感じさせないような飛び方を見せます。


2000年に公開された「グリーン・デスティニー」では、「侠女 第一部:チンルー砦の戦い/第二部:最後の法力」に出てきた竹林のバトルシーンがオマージュされ、竹の上にフワッと飛び乗り、そのままバトルを行うシーンが描かれます。


中国武道映画のもう一つのジャンルが「カンフー映画」です。カンフーとは「功夫」と書き、中国南部で使われる広東語で「訓練・技術」を意味します。


武侠映画と異なり、リアルな中国武術を取り入れたアクションが特徴で、超人的な能力が登場するのではなく、登場人物の肉体を駆使して繰り広げられる格闘アクションがメインになります。


そもそも「カンフー映画」というジャンルが急成長したのは、ブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」「死亡遊戯」が世界的に大ヒットしたことが背景にあります。中国の武道を使ったリアルな格闘を主軸に据え置いたアクション映画は欧米でも斬新な存在で、これらの映画を分類するために「カンフー映画」というジャンルが生まれたとさえいわれています。


しかし、ブルースリーが映画で使っていたのは中国武術ではありません。あくまでも「詠春拳」をベースに、柔道・空手・ボクシング・テコンドーを組み合わせたオリジナルの武術です。例えば「ドラゴンへの道」でチャック・ノリスとの死闘で見せるステップは完全に近代ボクシングのものです。


ジャッキー・チェンはもともと京劇の役者として幼い頃から修行を積んでおり、その一環で中国武術を会得していました。京劇役者の修業で得た俊敏さと柔軟さを生かし、70年代は多くの中国武道映画に出演しました。


やがて、彼のアクションは中国武術よりも、スタントマンも使ってコミカルで派手なものとなっていきます。


そうした中で、実在の中国武術を題材にした映画を求める声も大きくなりました。そのため、1970年代後半のカンフー映画では、「洪家拳」の達人だった「黄飛鴻」という実在の武術家をモデルにした映画が数多く作られました。


例えば、1979年に公開された「マッドクンフー・猿拳」での戦いを見るとわかるとおり、腰を落として地面をはうような低い姿勢で攻撃を繰り出すため、見栄えのする武侠映画のアクションとは全く違います。


また、1976年に公開された以下の映画「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳」は黄飛鴻を主人公に描いたカンフー映画です。この映画を監督したラウ・カーリャン氏は、黄飛鴻の直弟子を父に持ち、自身も洪家拳の使い手でした。


ラウ氏は監督だけではなく、武術アドバイザーとしても活躍していて、初期カンフー映画の立役者として高い評価を受けています。


ラウ氏は「体と心の規律として用いられる中国武術」の全体的な美しさを映画で表現したいと考えていました。


ラウ氏が監督した作品の中でその最たる作品が1978年に公開された「少林寺三十六房」です。


「少林寺三十六房」はただ中国武術を使って戦う映画ではなく、その上映時間の大半を武術を習得するための訓練に費やしています。


主役を演じるリュー・チャーフィーは、少林拳の技術を習得するためにさまざまな仕掛け部屋で訓練を行います。


こうした訓練シーンはドキュメンタリーを見ているような感覚を生みます。


さらにラウ氏はこの映画の中で、儒教に基づいた師弟関係を描いています。師匠は拳法の技術を伝えるだけではなく、弟子の道徳心の育成も行います


また、中国武術の動きそのものをしっかりと見せるために、中距離から遠距離のショットでしっかりとアクションを映します。また、カメラを後ろに引っ張って動きを出し、観客にわかりやすい映像を作ろうと心がけています。


「カンフー映画」というジャンルは、リアルなアクションを追求し生まれた中国独特の映画ジャンルの一つです。現代でこそブルース・リ-やジャッキー・チェンが代表的なスターとして扱われています。しかしフイ氏は、実在する中国武術をメインにしながら、見やすさや精神的テーマにも重きを置いて「カンフー映画」を支えたラウ・カーリャン氏こそカンフー映画の重鎮であると、高く評価しています。

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