サイエンス

DeepMindのAIは人間の医師と同等の精度で目の病気を診断できる

by Dan Foy

2014年にGoogleが買収したAI開発のスタートアップ「DeepMind」は、プロ棋士をも打ち破る囲碁AI「AlghaGo」を開発したほか、ガンの治療に利用可能なAIを開発するなどさまざまな分野にAI技術を導入しています。そんなDeepMindは「人間の医師と同等の診断能力を持つ眼疾患診断AI」を開発し、数年以内に病院へ導入可能だとしています。

DeepMind’s AI can detect over 50 eye diseases as accurately as a doctor - The Verge
https://www.theverge.com/2018/8/13/17670156/deepmind-ai-eye-disease-doctor-moorfields

目の病気を診断するにあたって多く用いられているのが、OCTと呼ばれる近赤外線を用いて患者の眼底や血管の3Dスキャンデータを作成する手法です。約10分ほどで3Dデータは作成され、眼科医がデータから眼病の兆候を発見することで早期に眼病を診断し、患者が失明段階にまで達するのを防いでくれます。

DeepMindはヨーロッパと北アメリカで最大の眼科医療機関であるMoorfieldsと協力し、Moorfieldsで治療された7500人の患者から得られた1万5000回分のOCTデータをAIに学習させたとのこと。人間の眼科医による診断と並行して訓練することで、DeepMindはAIの診断精度を向上させていきました。そうして訓練されたAIは、訓練終了後のテストにおいて8人の医師と比較した結果、AIの診断結果は眼科医の診断結果と94%以上もの一致率を記録したそうです。

近年では医療界へのAI導入が盛んになっており、AIは人間の医師をサポートする役割を果たす時期を経て、やがて人間の医師に代わり診断を下すツールになるかもしれないとされています。すでにアメリカ食品医薬品局(FDA)は糖尿病網膜症の診断に、人間の医師の介入を必要としないAI診断システムを認可しています。認可されたシステムは糖尿病網膜症のみを診断するものですが、50以上の眼疾患を診断可能なDeepMindの診断システムが「人間の医師を必要としない」システムとして認可を受けることも、将来的にはあり得るとのこと。

by Airman Magazine

一方で、「AIがどのように入力データから結果を導き出しているのか、はっきりとした道筋を説明できない」という点が問題視されていることも事実で、人間がAIから完全に手を離してしまうと、判断において致命的な誤りを犯す可能性があります。そこで、DeepMindの研究者らは、AIが人間の手を離れた時に致命的な誤りを犯さないように、さまざまな対策を取っているそうです。

まず1つ目に、ソフトウェアは複数の独立したデータをもとに訓練された、いくつかのアルゴリズムにもとづいて運用されています。1つのアルゴリズムに依拠しない診断プロセスを持つことで、どこかのアルゴリズムにエラーが発生しても、他のアルゴリズムがエラーをカバーしてくれるようになっているとのこと。


2つ目に、AIは1つの結果だけを出力するのではなく、可能性が高いと診断された複数の結果を同時に出力します。加えて、患者の3Dスキャンデータのうち、どこが診断の理由となった箇所かをラベル付きで表示することで、後から人間の医師が出力結果を見て誤りを正す機会を提供しています。

最後に、DeepMindの眼疾患診断AIシステムは「患者が病気を持っているのかどうか」を診断するシステムではなく、「患者の病気がどの程度進行しており、どの患者を優先的に治療していくべきか」を決定するトリアージに用いられるとのこと。これらの制約によりAIに対して人間の医師が介入する機会を与えて、AIが誤った診断を下しても医師が誤りを正せるようになっています。

by Brett

世界中では2億8500万人もの人々が、眼疾患によって視力を喪失した状態で生きていかなければならないとのこと。OCTスキャンは眼疾患を発見するための有用なツールであり、2014年には535万件ものOCTスキャンが行われました。ところがこのプロセスには非常に長い時間がかかるため、早急な治療が必要な患者に対して優先的に医師を割り当てることができれば、より多くの人々を失明といった最悪の事態から救い出すことができます。

研究に携わったMoorfieldsのピアーズ・キーン医師は、「実施されるOCTスキャンは人間の医師が診断可能な量を上回るペースで行われており、このままでは早急な治療が必要な患者に対するケアが遅れてしまう可能性があります。そこで、AIを用いた眼疾患診断が導入されて診断スピードが向上すれば、人の視力を今まで以上に保護することができるでしょう」と語り、DeepMindのAI診断システムに期待を寄せています。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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