Googleの人工知能で失明を防げるようにする研究がスタート
Googleが買収した人工知能開発スタートアップ「DeepMind(ディープマインド)」は2016年3月に囲碁界のトップ棋士イ・セドル九段を倒した人工知能「AlphaGo」を開発したことで知られています。このDeepMindが、今度は医療の世界で、失明を防ぐために役立てられることがわかりました。
Health | Google DeepMind
https://deepmind.com/health/research
Moorfields announces research partnership | Moorfields Eye Hospital NHS Foundation Trust
http://www.moorfields.nhs.uk/news/moorfields-announces-research-partnership
Google DeepMind pairs with NHS to use machine learning to fight blindness | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2016/jul/05/google-deepmind-nhs-machine-learning-blindness
DeepMindが、「DeepMind Health」として医療業界に特化した取り組みを開始したのは2016年2月。これまでに、イギリスのロイヤルフリー病院といった医療機関と協力して、患者の急性腎障害の状態を医師や看護師が早急に判断できるようにするモバイルアプリ「Streams」の開発などを行っています。Streamsを使うと、患者の血液検査の結果から緊急性を要する事態なのかどうかを即座に判断できるなど、効率的な処理が可能になります。
そして、2016年7月5日、新たにイギリスのムーアフィールズ眼科病院がDeepMind Healthとパートナーシップを結んだことを発表。目の検査方法に革命を起こし、病気を早期に発見できるよう研究が進められるとのことです。
2016年の時点でイギリスでは36万人もの人が盲目もしくは部分的に視力を失っている、として登録されています。目の病気を突き止めて治療方針を決める方法としては「目のスキャンを取る」という手法が一般的に用いられていますが、スキャン結果の分析が非常に複雑で、時間がかかるのがネックでした。
DeepMind Healthが役立てられるのはこの分野で、ムーアフィールズ眼科病院が保有する匿名のアイスキャンのデータと目の症状・処置などを人工知能に学ばせることで、臨床医が患者の疾患を理解するのに役立てられるとのこと。機械学習を用いることで病気を早期に発見することができれば、病気の進行を止められる可能性もある、とムーアフィールズ眼科病院は説明しています。
ムーアフィールズ眼科病院のPeng Tee Khaw医師は「DeepMindと我々との研究は専門家らが行う検査方法に革命を起こし、失明の原因になる加齢黄斑変性といった病気の徴候を早期に発見し、治療を行えるようにする可能性があります。2050年には失明する人の数は2倍になると考えられるため、最新技術を用いて目の疾患を防ぐ手法を探ることは非常に重要です」と語りました。
特に、日本における成人の失明原因の第1位となっている糖尿病網膜症は進行のスピードが速く、しかも病気が進行するまで気づかない人が多いという点が問題となっています。現在、糖尿病網膜症にかかっている人は全世界で3億5000万人と言われていますが、ニューラルネットワークにアイスキャンの分析を行うための学習をさせれば、診断の速度と正確性が増し、98%の失明が防げる可能性も示唆されています。
DeepMindの共同設立者であるムスタファ・シュレイマン氏はムーアフィールズ眼科病院との提携について「ムーアフィールズ眼科病院との提携には非常に興奮しており、早期に病気を発見することで、患者は正しい治療を受けられる可能性があります。私はいつかこの研究が国民保健サービスに大きな利益をもたらすものと信じており、医師や看護師が世界標準の医療サービスを提供する助けとなるはずです」と語っています。
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