AIがベテラン医師よりも高精度に脳スキャン画像から脳腫瘍を診断することに成功
by Institut Douglas
近年のAI技術の発達には目を見張るものがあり、「人間はAIに仕事を奪われてしまうのではないか?」という危機感を持つ人も少なくありません。そんな中、「中国で行われた病気の画像診断コンテストで、AIがベテランの医師たちよりも高い精度で正しく病気を診断した」ということが話題になっています。
China Focus: AI beats human doctors in neuroimaging recognition contest - Xinhua | English.news.cn
http://www.xinhuanet.com/english/2018-06/30/c_137292451.htm
2018年6月30日、北京で「脳腫瘍と脳内の血腫拡大を患者の画像から予測する」というコンテストが行われました。その結果、北京天壇病院の神経障害AI研究センターと中国首都医科大学の研究チームが合同で開発した、「BioMind」と呼ばれるAIの画像診断システムがベテラン医師たちに勝利してしまいました。
第1ラウンドで行われた脳腫瘍の画像診断において、225例の画像から15人のベテラン医師は66%の精度で脳腫瘍を診断したとのこと。ところが、BioMindはわずか15分の間に、ベテラン医師らの精度をはるかに上回る87%もの精度で脳腫瘍を診断することができました。また、脳内の血腫拡大の予測についても、中国の有名病院から集められたベテラン医師らの63%という診断精度を上回る、83%の精度をBioMindはマークしたそうです。
北京天壇病院の放射線科主任のGao Peiyi医師は、AIの画像認識精度は優秀なベテラン医師を上回るものであり、通常の病院の診断精度よりはるかに正確だとしています。BioMindの開発にあたっては、北京天壇病院が過去10年にわたって収集した数万もの症例画像を教育データに利用しており、髄膜腫や神経膠腫といった症例についても90%の割合で診断することが可能とのこと。
by Nathanael Burton
北京天壇病院の副院長であるWang Yongjun氏は、「今回のコンテストは、医師らがAIなどの最新技術を医療に役立てて、医療技術を改善することができると周知するために開催しました。そのため、AIに負けたからといって、コンテストに参加した医師らが自信を失う必要はまったくありません」と述べました。
また、脳内の血腫拡大を診断する第2ラウンドに参加したLin Yi博士は、「AIは私たちの脅威ではなく、『友人』です。AIは医師の仕事の負荷を軽減するだけでなく、医師の技術向上にも役立つものです」と語り、医療におけるAIの有用性が認識できたとしています。
コンテストの審査員として参加した中国科学院のBian Xiuwu氏は、進行中の疾患を診断するに際しての絶対的な答えは存在せず、AIは診断結果を与える医師の「助手」としてのみ機能すると語ります。同じくコンテストの審査員として招待された欧州放射線学会のPaul Parizel博士も、「AIは医師に替わるものではなく、たとえばカーナビのGPSシステムが車のドライバーにとってもたらす機能のように、診断の際に医師を導くツールです」と主張しました。
by Yuya Tamai
世界保健機関(WHO)の中国代表であるGauden Galea博士は、「AIは医療界にとって非常にエキサイティングなツールですが、依然として初期段階にあります」と述べました。一方でGalea博士は、中国の人口の多さとアクセス可能な医療データ数の豊富さは、中国の医療AI開発にとって大きな強みになるとも考えています。
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