サイエンス

人工知能で光学顕微鏡の映像からリアルタイムでガンを検出する技術をGoogleが開発


患者の体がガンに冒されているのかどうかを診断する病理医は、患者から採取した体組織を光学顕微鏡でじっくりと観察し、ガン組織が存在するのかどうかを判定します。この作業には光学顕微鏡で見えるガンのパターンを熟知し、効率的に点検していく熟練の技術が必要ですが、Googleは人工知能にディープラーニングでガンのパターンを学習させ、リアルタイムでガン組織と思われる箇所を検出する技術を開発しました。

An Augmented Reality Microscope for Real-time Automated Detection of Cancer.pdf - Google ドライブ
https://drive.google.com/file/d/1WRBCqJItaGly-9PDSMlwQ5Ldhc8lB0lf/view

Research Blog: An Augmented Reality Microscope for Cancer Detection
https://research.googleblog.com/2018/04/an-augmented-reality-microscope.html

Googleが開発したリアルタイムでガンを検出する技術がどのようなものかは、以下のムービーから確認できます。

Detecting cancer in real-time with machine learning


ガンの治療には、病理医による診断が必要です。


病理学者は光学顕微鏡をのぞき込み、採取した組織をほんの少しずつスライドさせてガン組織を探します。


Googleのエンジニアであるマーティン・スタンプさんは、「ガンの診断には膨大な量の情報を病理医が処理する必要があります」と話します。


ガンの診断にはとても時間がかかり、作業が終わるころになると病理医はかなりの疲労を覚えるとのこと。


「ガンを探す作業では採取した全ての細胞を調べていく必要があり、時にはガンの検出が非常に困難なケースも存在します」と病理医のトリシア・ブラウンさんがガン探査の苦労を語ります。


スタンプさんのチームは光学顕微鏡と人工知能の技術を組み合わせることで、より効率的にガンの探査ができないかと考えたそうです。


病理医のジョンソン・ヒップさんは、「全ての病理学者が機械学習にアクセスできるようになるでしょう」と今後の展望を語ります。


光学顕微鏡が映し出す映像を人間と同じように人工知能も感知し、映像の中からディープラーニングで学習した大量のガンのパターンに類似した組織を探すそうです。


ガンと思われる組織を見つけると人工知能は画面上に枠を表示して、映像を見ている病理医に注目するべき箇所を教えます。


膨大なガンのパターンの学習モデルは、これまでガンの検出に貢献してきた数多くの病理医によってもたらされたものです。


「私たち病理医のグループは、何千もの画像サンプルを通して人工知能にガンのパターンを学習させました」とヒップさんは話します。


ブラウンさんは「人工知能による画像診断の手助けは、セカンド・オピニオンをリアルタイムで受けているようなものです」と述べました。


人工知能が病理医の診断をリアルタイムで補助することにより、より患者に対するアプローチが迅速に行えるようになるとのこと。


「現在のミッションは、ガン診断の正確性をさらに向上させることです」


「人の命を救うのです。これ以上に私たちの意欲を高めてくれるものは考えられません」と、スタンプさんは述べました。


Googleが開発した技術では、従来の画像診断と同じように病理医は光学顕微鏡の映像を通してサンプルの組織を観察し、人工知能は病理医が見る映像にリアルタイムでガンと思われる組織を示す枠を投影します。病理医が見ている映像と枠の投影に誤差が生じないよう、人工知能は常に1秒当たり10フレームでフィードバックを実行し、枠の位置を映像と同期させます。


記事作成時点ではリンパ節のサンプルから乳ガンの転移を検出するアルゴリズムと、前立腺サンプルから前立腺ガンを検出するアルゴリズムを利用可能とのこと。これらのアルゴリズムは4~40倍の倍率で動作するとのことで、今後も他の部位におけるガン探査に応用されるほか、画像診断を必要とする他の医療分野にも応用できるとGoogleは見込んでいます。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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