燻製食品から発がん性物質を取り除き味もよくする方法を研究者らが開発
燻製にした食べ物のほとんどは、微量にですが発がん性物質を含んでいます。そこで、食栄養科学を研究するレイディング大学のJane K. Parker准教授は燻製した食べ物の味を損なうことなく発がん性物質だけを除去する方法について研究を行い、車の排気管に取り付けるゼオライトフィルターを適用するというアイデアを示しました。
Smoked foods are tastier, less harmful with a tip from the auto industry - American Chemical Society
https://www.acs.org/content/acs/en/pressroom/newsreleases/2018/march/smoked-foods-are-tastier-less-harmful-with-a-tip-from-the-auto-industry.html
Smoked foods are tastier, less harmful with a tip from the auto industry -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/03/180320084409.htm
ゼオライト(沸石)フィルターは環境汚染を減らすために車の排気管に取り付けられるもので、エアコンや掃除機にも使われることがありますが、食品に用いられた例はこれまでほとんどありません。
燻製食品を科学するBesmokeのエンジニアたちはParker准教授と協力し、発がん性のある多環芳香族炭化水素(PAH)を煙から除去するという目標を立てました。PAHは燃料を消費したときに発生する物質で、さまざまな種類のがんだけでなく心疾患を引き起こすとして指摘されており、EUでは規制対象となっています。
Parker准教授らが開発したフィルターは、PAHの1種であるベンゾピレンを93%も煙から取り除くもの。煙から発がん性物質を取り除く試みには他の方法もありますが、Parker准教授らが開発したフィルターの除去率にかなうものは存在しないとのこと。また、研究者らはドライトマトのフレークやココナッツオイル、水などをフィルターを通した煙あるいは通さない煙で燻製にし、その後、燻製トマトをクリームチーズと合わせたり、燻製水で鶏肉を調理するなどしました。味の違いを判別する訓練を受けた専門家にそれらを食べてもらったところ、フィルターありの鶏肉は「クリスマスハムのようなアロマが少し感じられ、丸みのあるバランスの取れたフレーバー」だったとのこと。一方で、フィルターなしの燻製食品は「灰皿」「つんと鼻をつく煙」などと表現されたそうです。
研究者らが質量分析法を用いて2種類の煙を分析したところ、フィルターによって発がん性物質だけでなく分子量が大きい成分も取り除かれていたことがわかりました。取り除かれた化学物質は食品に刺激が強いフレーバーやアロマを与えていたため、よりまろかやな仕上がりになったようです。
研究者らは次なるステップとして、フィルターが選択的に化学物質を取り除く仕組みを調査する予定です。分子量が大きい化合物が取り除かれる仕組みが理解できれば、ゼオライトフィルターの機能向上にも役立つとみられています。
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